社会福祉士のレポートをいち早く書き始めるコツ

レポートを書く上でのルールを把握する
どの通信制大学(養成校含む)にも、レポートを書く上でのルールがある。ルールは学習ガイド(手引き)に明記されている。学習ガイドを何度も確認し、レポートを書く上での根幹となるルールを把握してから書き始める。

特に重要なのが、

  • レポートの字数
  • 参考文献の書き方
  • 引用のルール

これらを間違うと減点・採点不可の対象となる場合がある。

その他、

  • 他人の書いたを文章を丸写ししない
  • 「である調」で書く
  • 適度な「。、改行」

といった一般的共通ルールもあるので留意する。
上記のルールを守ったレポートであれば、及第点を取れる可能性は高い。

レポートの設題を熟読する
レポート作成は、大学から提示されたレポート設題に答えること。
つまるところ設題文は大学からのレター(手紙)だ。
レターに対して適切な答えを返す必要がある。
まずは設題文を熟読し、レポート設題の趣旨を正確に理解してから作業に取り掛かるべし。

設題には、主に2パターンある。

  • ~~についてあなた(学生)の意見を述べなさい(論じなさい・考察しなさい)
  • ~~についてまとめなさい(説明しなさい)

「論じる」「考察する」「まとめなさい」「述べなさい」など、似たような言葉が出てくるので、辞書で各言葉の意味を再確認しておく。
ちょっとした手間だが、設題文の細かい文言を調べることは重要。
レポートの文章がある程度仕上がってから、設題の要件を満たしていないことに気づくような非効率は避けたい。

レポート設題例
どんな設題が出されるのか?具体例を示そう。
以下は、東北福祉大学通信課程の「社会福祉援助技術演習A」の科目で出され設題である。

社会福祉実践においては、援助者自身の「気づき・自己覚知」が大切です。なぜ、援助者には「気づき」が大切なのでしょうか、あなた自身の体験を踏まえながら述べてください。

東北福祉大学通信教育部レポート課題集2020(科目別PDF)より引用

この設題でレポートを書くとして、何をすべきか考えてみよう。
それは、次の3つ。

  • 自己覚知について定義し、まとめる。
  • 援助者に気づきが大切な理由を考え、述べる。
  • 関連する体験談がないか検討し、述べる。

ということで、すぐにでも書き始めたいところだが、今一度学習ガイドに目を通そう。レポート設題だけでなく、科目履修における要点やアドバイスについても理解しておくことが必要となるからだ。

東北福祉大学の場合、このレポートを書く際のアドバイスとして次の文章が学習ガイドに記載されている。

■アドバイス
社会福祉実践において他者を援助するに当たっては、適切な他者理解が必要です。他者理解を得るためには、適切な自己理解が援助者としてはとても大切になります。利用者と向き合った時に自分自身の考え方や、性格、価値観などについての「気づき・自己覚知」が出てきます。過去の出来事が自分の性格や、癖、行動傾向などによって現在の自分が作り上げられています。ここでの「気づき・自己覚知」についてまとめてみることによって、自己理解に役立てることができます。このような視点からの「気づき・自己覚知」について論じてくださっても結構です。
また、社会福祉実践において援助者は、コミュニケーションを通して効果的な援助を展開していきます。コミュニケーションについては、言語コミュニケーション、非言語コミュニケーションの理解が必要です。ここでは、言語コミュニケーションにおける自分自身についての「気づき・自己覚知」や非言語コミュニケーション(視線、姿勢、表情、音声、距離、位置)などについての「気づき・自己覚知」なども大切です。これらを通しての自分自身のコミュニケーションの特性についての「気づき・自己覚知」について感じたことをまとめてみることも大切です。このような視点からの「気づき・自己覚知」について論じてくださっても結構です。
あるいはこのレポート課題について、あらためて自分自身の日常生活における行動や考え方、癖などについての新たな「気づき・自己覚知」や、これまでの生活を振り返って感じた「気づき・自己覚知」、社会福祉専門職を目指すものとしての「気づき・自己覚知」について論じてくださっても結構です。

東北福祉大学通信教育部レポート課題集2020(科目別PDF)より引用

長い文章だが、頑張って読もう。アドバイスの文章を読むと、

  • 言語コミュニケーション
  • 非言語コミュニケーションの理解

についても触れた方がいいことが読み取れる。太字の部分に注目。

さらに、設題にある「体験談を踏まえる」ことについては、必ずしも社会福祉の実務経験ではなくてもよいことがわかる。これから現場に出る学生が履修することを想定した配慮である。

さあ、ここまできたら作成に取り掛かりたいところだが、その前に一つ準備がある。それは参考文献の用意である。

参考文献を数冊用意する
大学によっては参考文献が指定されている。用意可能ならば、買うなり借りるなりして用意しておく。
しかし、すべての科目で参考文献を用意するのは難しい。絶版だったり、近所の図書館にも蔵書がないということもある。なので参考文献を用意できない場合は他の書籍で代替する。設題の趣旨にあった参考文献であればレポートを書くことは可能。

そもそも参考文献を用意する理由は、教科書だけでレポートを書くと偏った論述になるという考えがあるから。できるだけ他者の意見や著作をあたって書くことで客観的なレポートになるというルールである。

準備は整った。さあ次は教科書と参考文献を読みながら、筆を勧めるのだが、注意点すべきは書籍の読みかたである。教科書の1ページ目から読み進め内容をすべて理解しようなどとしてはいけない。それができれば理想的だが、残念ながら学生にそんな時間はない。まずしなければならないことに限定して読むことをお勧めする。この場合、まずは自己覚知の定義について教科書の記述を読むことが該当する。

用語を定義する
なぜ用語を定義するかというと、レポート添削者に学生が専門用語を理解していることを報告するためである。また、用語を定義することで作成者自身が誤解なくレポート作成を勧められる効果もあり一石二鳥となる。
教科書や参考文献を探して、自己覚知についての記述を探し、まずはワープロにかきだしてみる。
この時、何かある考えが頭に浮かぶかもしれない。


そうか、自己覚知とは、自分の価値観や刺激に対する反応の傾向を客観的に知ることなのか→よく「自分のことは自分が一番よく知っている」というが、この言葉は果たして妥当か?→自分がある事柄にこだわるのはなぜか?その根っこを掘り下げると実は幼少期の経験が関係していたりするのでは?→・・・・・


頭の中で、このような思考がめぐったら、一次メモとして記録しておく。後にレポートの内容に重要なヒントとなる。

「自己覚知とは、○○○のことである。」

こうした文を書くために教科書や文献などにあたって調査し、引用し参考にして定義することでレポートに必要な思考過程が深みを増す。
そのうえで、なぜ気づきが大切なのか?に解答することになる。
自身の経験の中で関連することがらはないか?あれこと思考をめぐらせることになる。

援助者に気づきが大切な理由を考える
自己覚知について思考をめぐらせることで、あなたは「自分のことを知らない人間が利用者のことなど理解できるはずがない」と考えるかもしれない。
それはごく自然なことだ。

では、自己覚知ができている援助者が良い援助者だとして、福祉の利用者とどのようなコミュニケーションをとるのか?というと、外見的には言語的コミュニケーションと、非言語的コミュニケーションであることに思い至るかもしれない。
実際、身に見えるものとしては、これしかないからね。という理由だ。

関連した経験がないか検討する
ここで福祉の現場を見たことのある人ならば福祉職員がどのようなコミュニケーションをとっているか思い出してみるとよい。言葉の抑揚やイントネーションはどんなか? 身振り手振りはどうか? 表情は? 

もし福祉の現場がわからないなら、自身の家族というコミュニティで思い出してもいい。例えば、中学生くらいのころ、親とどういうコミュニケーションがあったか? 自身の言った言葉が、親にどう受けとられたか? その結果は? さまざまなエピソードがあると思われる。

レポート作成に役立つかもしれない思考がめぐったら、ここでもメモを忘れずにしておこう。メモが後で重要な資料となる。

あなたは、あれこれ思考をめぐらせるうちに、言語的・非言語的コミュニケーションのどちらにしても、限界があることに気づくかもしれない。
マニュアルに沿ったコミュニケーションをとることで万事うまく解決するならこんな楽なことはない。そういう現実に気づくかもしれないということだ。
そこで大切なのが援助者の「気づき」であるという結論を導くのはどうか?という仮説を立てることもできる。

もう少し情報を仕入れる
ここまで思考をしていくと、自身の思考したことを裏付けるために、もうすこし教科書や文献にあたる必要が出てくる。
レポートの結論に対するおおよその仮説が出ているので、援助者に気づきが大切な理由を効率よく情報収集して、それこそ「気づいたこと」を書き留めていこう。

援助者に「気づきが大切」というのは本レポートにおける前提事項であり、解答必要事項となっている。なぜ、気づきが大切なのか、そしてどういう気づきが大切なのかについて考えることがメインとなる。

下書きを書き始める
レポート設題に対する大まかな結論、教科書や参考文献による情報収集、一次メモ、こうしたものが整ったら下書きを書き始める。

序論は最後に書くとして、本論の部分と結論の部分を書いていこう。

重要はコツとしては、

  • 設題に対してあなたはどういう意見を持っているのか?
  • 自身の意見をどう論理的に伝えるか?
  • 自身の意見を補完する他者の意見をどう引用するか?

これらについて、論理がブレないように気を付けながら筆を勧めていく。
細かい誤字脱字にはこだわらず、論理に筋が通っているかに注意を向けて書く。

序論文を書く

  1. 序論
  2. 本論
  3. 結論
  4. 参考・引用文献

この4つのブロックで構成することは、レポートの基本形となる。

本論と結論がある程度仕上がったら、最後に序論文を書けばいい。
序論のよくあるパータンとしては、設題文の繰り返しと本論へのイントロダクションである。

例えば、


社会福祉実践においては、援助者自身の「気づき・自己覚知」が大切である。本レポートでは、体験を踏まえながら、なぜ、援助者の「気づき」が必要なのかについて述べていく。


といった感じである。序論を読むことによって、このレポートには何がどう書かれているのかを簡単に説明し、本論にスムースにつなげる文になっていることが求められる。学者か研究者にでもなったつもりで堅苦しく書いて差し支えない。

まとめ

  • レポートをいち早く書くコツは、設題に対する思考過程を早い段階で見立てることである。
  • いちはやく思考過程をめぐらせるには、教科書や参考文献、さらにネット上の情報・意見と対話すると考えるとよい。思考過程はとかく忘れてしまうので必ずメモをとっておく。
  • 情報収集は、暗記よりも情報との対話を重視する。読書は著者との対話だ。
  • 完璧なレポートを書こうとしない。そんなレポートを書こうとすると疲弊するばかりである。70点レベルのレポートを目指そう。

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