レポートで意見を述べる際の注意点

社会福祉士の養成課程におけるレポートについては、一応は大学レベルのレポートが想定されているので、単なる作文にならないように注意したほうがいいです。

「〇〇と思いました。」
などの文体で終始することを避けるだけで大分レポートらしくはなるものの、もう一工夫すると、さらにレポートらしいレポートになるのでお勧めしたいです。

私が、常に参考にしていたレポートの書籍がこれです。

木下是男著「レポートの組み立て方」筑摩書房 2002年 136ページ

この本には学生のレポートおける「意見の記述」に関して明快な意見が書かれています。

それを少しご紹介しましょう。
すなわち

  • それは誰の意見なのか明示せよ
  • 自らの意見はぼやかさないで述べよ
  • 意見の根拠と道筋を示せ

ということです。

これは非常に本質的な意見で、そもそもレポートが添削者(多くは担当講師)に対する学習進度の報告であることを考えると当然のことです。

つまり、学生がレポートの中で自分の意見を述べるためには、その前提となる事実を述べる必要がありますし、意見の根拠となるものを提示して「だから私はそう考える」という結論に持っていく必要に迫られます。

  • 意見のもととなる事実を述べる
  • 意見の根拠を述べる
  • 自分の意見を言い切る

この一連の流れを実践するには、嫌でも勉強をせざるをえないわけですが、学生はこの勉強の過程をスキップしようとすると、誰か他人の意見を拝借して、さも自分の意見であるかのようなふるまいをすることが多くなってしまいます。

しかし、著者の木下是男氏が指摘していることですが、これはレポートでは絶対に避けなければならないこととされ、私も同意見です。

ぜひとも、自分の意見は何なのかについて思考をめぐらす習慣を身につけていただけたらと思いますし、その習慣が後々効率的なレポート作成だったり、国家試験対策であったり、ひいては実務においても役立つときがくるので、臆せず実践していただけたらと思います。

注意すべき点は、世間や講師にあっといわせるほどのすばらしい内容の意見を述べる必要はなくて、ささいな意見でよいということです。

誰々さんはこのように述べているが、私はこの点に関しては同意するものの、あの点に関しては反対である。なぜならば、それはこういう理由があるからですよといった感じで十分です。

よくある技術的なミステイクとしては、

  • 何々がないともいえない
  • 何々といえなくもない。
  • 何々といってさしつかえないであろう

といった、ある種逃げの文体を書いてしまうことです。こうした文体はできるだけ避けたほうが評価は高いです。
(私が過去に書いたレポートの中にも、後で見直したらこのような表現がいくつもありました。結構無意識的に使ってしまうものです。)

  • 私は、コレコレについて何々と考える
  • 私は、この条件のときはこうだが、別の条件がそろった場合はこのような対応がーベストと判断する

このように、自らの意見を言い切るのは、とても勇気のいることですが、事実と根拠をもとに出てきた意見に対して、正解か不正解かを評価の絶対軸にしている講師は、まずいませんので過剰な心配は無用です。


でも「自分の意見を述べるっていっても難しいですよ」
というのもっともな意見だと思います。
ではどうすればいいのか?

まず、言いたいのは、自分の意見を述べる訓練は、レポートを書くときだけではないということです。

日常の中でも訓練できる場面があります。
例えば、日々のニュースを見ていて、なんらかの意見を感じることがありますよね。

最近の例でいえば、高齢者の起こした交通事故であったり、保育園の児童に車がつっこんで起きた痛ましい事故の一連の報道に関する意見です。

あの手のニュースを見ていて、みなさん何かの価値判断や意見、感情的思考が頭をめぐったのではないでしょうか?

例えばある人が、高齢者の交通事故のニュースを見て
「高齢者は免許を返納すべき」
という意見をもったとしましょう。

しかし、ここで自分はなぜそのような意見を持つのかについて思考をめぐらせることがレポート作成の訓練になります。

まず、その意見のもとになる事実を調べる必要があると気づきます。

  • 自動車の不具合はなかったのか?
  • ドライブレコーダーなどの証拠は存在するのか?
  • 事故を起こした人に認知症はなかったのか?
  • 統計的に高齢者の事故はどうなっているのか?

といった事実を集め、

自分の意見の元になっている根拠があつまったら、コレコレこういう理由で、
「だから私は高齢者は免許を返納すべきと考える」
というように意見を述べていくわけです。

この過程はレポート作成と同じですので、一つの訓練法として頭の片隅に入れていただくと役に立つことがあると思います。

まとめ

レポート教育は、論理的思考を養成するという前提があってなされている。

なので、他人の意見を自分の意見かのように述べないで、自分の意見を言い切ることが大切である。最終的にどういう意見にたどり着こうが、規定に沿ったレポートである限り意見の内容自体に正解も不正解もない。

要は、その意見に至った道筋を添削者に分かりやすく明快に示すことこそが重要である。

ということになります。


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