社会福祉士が健康格差問題について言えること
NHKスペシャル 私たちのこれから「健康格差 あなたに忍び寄る危機」
というテレビ番組を視聴しました。
普段あまりテレビは見ないのですが、珍しく長々と見てしまいました。
番組の内容としては、貧困を背景にした健康の格差が生じていることを問題提起するものでした。
非正規雇用を始めとする低所得の人は、野菜が不足した食生活となりがちで、健康を損ないやすい。
しかも非正規の人は、正規の人に比べて短命な人が多いというデータがあるというのです。
番組には、非正規で15年勤めた人が、30代で糖尿病と診断され、わずか5年程で合併症が出たと紹介されていました。
糖尿病としては、急速な病態の悪化です。
よほど荒れた食生活をしていたと想像できます。
非正規でお金がないので、治療費を払うのも大変そうでした。
番組では、こうした健康に対する格差が生ずることに対して、
健康は自己責任か?
という議論がありました。
この議論の最終的な着地点は、自己責任だけでは済まされないし、社会ができることは多々ある
という方向にもっていかれました。
もちろん、これは正論です。
私もこの意見に賛成です。
自己責任の部分なんて、割合からしたら少ない部分の問題ですよ。
好きなだけ食べて太っておきながら、それで病気になったのは社会の所為だ
という意見が、SNSで寄せられていたけど、そんなことは表面的な現象に過ぎません。
本当の問題は、社会保障と福祉の崩壊であり、自己責任論ではなく、後々の社会全体が、つまり日本社会の全員がツケを払うことになるということです。
将来、月給の半分以上を社会保障費のために支払うということになったら、どうなるでしょうか?
相変わらず、労働者の収入は増えていません。
しかも、少子高齢化で労働力不足です。
この番組を見て、野菜をたくさん食べるようにしようとか、塩分を控えよう思った人はいると思います。
そうすることで、少しでも健康でいられたら、それは結構なことだし、個人レベルで可能な比較的容易な対策です。
お金に余裕のない人も、野菜が高いのであれば、野菜ジュースを飲むようにするとか、高カロリーの弁当ばかり食べるのを減らすとかの対策は出来るかも知れません。
ただし、人によっては環境的に、健康への配慮が難しいケースがあることは、社会福祉士が、心にとどめておかなくてはならないことです。
私自身、かつてブラック企業で深夜残業に明け暮れていた時の食生活は、本当にひどいものでした。
もう疲れ果ててしまって、健康に配慮しようという気持ちを持つことが難しかった。
節約のために、自炊はしていましたが、缶詰とごはんの弁当とか、とても栄養バランスの良い食べ物とは言えない食生活でした。
当時、私の年齢は20代後半でした。
若かったので、病気にならずに乗り切りましたが、あんな食生活を続けていたら、きっと身体がボロボロになったでしょう。
大人なので、食べるものを選択する余地はあるのですが、貧困の度が過ぎると、そうもいってられなくなります。
貧困には、いろいろなことを悪い方向へもっていく力があるという特徴があります。
つまり、社会福祉士として、そしてソーシャルワーカーとして言えることは、
近い将来において、社会福祉士の主要相談業務が、この貧困と格差によって生じた社会問題になる
ということです。
障害とか老人とか、そんなせまい範囲ではない、貧困も格差も人口問題も労働力不足も、ごっちゃになってくることが予想されます。
それにしても、今回の番組に出演していた、ゲストの風間トオルさんには、子供の頃、貧困で草を食べて空腹を満たしていた経験があると聞いて驚きました。
お風呂に入れないからと、洗濯機に服を着たまま中に入って身体を洗ったとか、そのような過酷な体験は美談としてはならないと思います。
風間さんのようにたくましい才能に恵まれた人だから、何事もなかったかのようにされていますが、内心はつらい過去のはずです。
ましてや、社会一般の人達は、もっと貧困に対しては弱さをもっています。
社会福祉士としては、ここに着目しておくことが大切です。
スポンサーリンク