介護の仕事できついのは低賃金だけではない
介護職一筋40年
そんな人を見たことがありますか?
特養施設の介護士で勤続30年
そのような人の話を聞いたことがありますか?
私は、そのような人に会ったことはありません。
長い期間、介護士をすることは非常に難しいから簡単には会えないのです。
皆、転職、転業・廃業をします。
介護士が辞める理由は、低賃金、人間関係など、いろいろいわれているけど、致命的な理由をひとつ忘れています。
身体を壊すということです。
特に、腰や首を痛めてしまうと、引退を避けられない事態になってしまう。
これが大きいんです。
収入が低くても、利用者の感謝の言葉のために生真面目にがんばった末路が、脊柱管狭窄症、腰椎すべり症などの身体状態になってしまい、職業人として引退するのでは本当に目も当てられない。
一部の人は、そのことに気付き始めています。
さらに問題なのは、腰を痛めるなどの身体を壊す職種が介護士だけではないということです。
例えば、訪問看護師も腰を痛めているのを知っていますか?
訪問看護師は、多くが女性で、しかも若手に人気のない職種です。
また、新卒の看護師が訪問看護を希望しても、臨床経験(病院での実務経験)が少ないことを理由に不採用にせざるを得ない事情があります。
訪問系は基本的に一人で患者の自宅を訪問して処置をするのと、十分な指導体制がとれないことがその理由です。たった数回の同行訪問で、新卒の看護師に基礎的な看護技術を含めて指導するのは難しいのです。
なので、実際の訪問看護は、少なくとも3年以上の臨床経験のある40~50歳代、もしくはそれ以上の年齢の方が、入浴介助などの身体を酷使する介助を行っているのです。
介助の中で大変なのが医療的ケアの必要な患者の入浴介助です。
訪問系なので、基本は職員一人ですべての介助をすることになります。
当然、腰を痛め易くなります。介助者よりも体重の重い患者を介助する際はなおのこと痛めやすいです。痛み止めを打ちながら泣く泣く仕事をしている看護師もいます。
こうして無理が蓄積され、いつか身体を壊すという図式が成り立ちます。
身体を壊した人は、続けたくても続けられなくなってしまうんですよ。
賃金を数万アップすれば済む問題ではないのです。
では、介助で腰を痛めるとどういうことが起きるか?
まず、病院に行きますよね。
医者は「看護(介護)の仕事はしない方がいい」
と言います。
つまり、辞めろということです。
「そうですか」と言って辞められる人はいいのですが、そうもいかない場合、まずは職場の上司などに相談しますよね。
するとどうなるか?
まず、批判されます。
もしくは「無理解」という間接的な避難が待ち受けています。
人手不足の職場では、このようなことが起こりがちです。
身体の痛みは本人でないと分からないので「大したことないのに休んでばかりいる」と思われてしまうのです。
介護・看護の職場の人は、理屈では分かっていても、業務の忙しさと人手不足によって、身体を壊した同僚の痛みには共感できなくなってしまうのです。
職場の同僚や上司は、
自分だって、痛みをこらえながら現場に出ているのよ
と思っていることもあります。
そうなると、身体を壊して、職場に相談している人からすると、医者からも職場の人からも退職勧告を出されている気持ちになります。
結局
もう辞めるしかないなというあきらめの気持ちになるのです。
身体を壊したら辞めざるを得ない
これが、事業希望の大きな病院であったり、公務員などであれば、転勤や配置換えによって介助の少ない業務に変えてもらうということもあるでしょう。
それができればセカンドベストです。
でも、小規模の介護施設や訪問看護ステーションは、従業員一人ひとりが大きな収入の原資になっています。
訪問して売り上げがいくら、利用者何人が利用していくらという世界です。
身体を壊している職員は収入をもたらさない存在とみなされてしまうのです。
そもそも身体を壊さなくても済むようにすることが先決ですが、身体の不調が起きても長く続けられるような仕組みを真剣に考えないと、いつまでたっても人が定着することは非常に難しいのです。
では、どうすればいいのか?
結論から言うと、身体に負担のかかる介助系の仕事から離れることです。
特に、50代になったときには知識と経験で仕事ができるようにしておくことが大切です。
- 介護支援専門員
- 相談員
- 施設管理者
- 営業職
- NPO法人設立
- 経営者
上記は、きつい介助で身体を壊すことの少ない職種の例です。
ただし知識と経験・工夫が要求されます。
中には介護の経験が活かせる職種もあります。
介護職が社会福祉士の資格を目指して相談員になるというのも介護を活かした転職の事例です。
介護職経験者の中には、その経験を活かして、介護関係の営業職に就く人も存在します。
そして、経営者、NPO法人設立などについては、訪問介護の事業などは比較的起業しやすいことから、挑戦する介護士も一部存在します。
このようにして考えると、介護士や看護師としての経験は異業種で、しかもきつい介助系ではない仕事への転換も可能だといえます。
多くの人が、その事実に気付いていないだけではないでしょうか?
もちろん、大きな業種転換には、それなりに準備期間が必要ですし、努力や時間の投資が必要なこともあります。
でも、その壁を乗り越えれば、次のステージが待っています。
私は、50を過ぎても介護士であることは、やはりどうしても難しいと考えています。
パートで介護をするならば、まだ健康的に続けられるかも知れない。
でも、ほとんどの労働時間を介護に費やしていたら、年齢を重ねるたびに身体を壊すリスクは高くなります。
かくいう私自身、社会福祉士でありながら、訪問介護と生活支援員という介助系の仕事をしている身ですので他人事ではありません。
この先、10年も今の仕事をする自信はないですし、続けようとも思っていません。
あと1年半で、生活支援員の経験が10年になります。
そのときが一つの節目なのかな?と思っています。
50代になっても介助系の仕事をフルでこなすのは無理があります。
話をまとめますと
- 介護の仕事できついのは低賃金だけではない
- 身体を壊してしまい、使い捨てのコマのように退職に追いやられる
つまり、
介護という言葉の中には、看護師や社会福祉士が行う身体介助も含まれています。
日常的に身体介助を行い、身体を酷使している仕事を意味します。
訪問看護師、特養の介護士、訪問介護員、生活支援員は特に長年勤務すると身体を壊す可能性がある職種です。
そのためこの分野には、30年以上の経験のある人がまずいないのです。
パートではいてもフルではいない。またフルであっても現場の介助がメインではなく管理者業務だったり事務仕事だったりします。
みんな年齢を重ねると介護は辞めているという事実がある
その理由は、単に低賃金だけではない
ということです。
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