波長合わせとは
社会福祉援助技術を勉強していると「波長合わせ」って言葉、よく聞きますよね。
これは、どういう意味かというと・・・・
波長あわせ(tuning-in)
ソーシャルワーカーが,個人やグループと面接するにあたり,事前にクライエントの考えや気持ちなどについて想像することや,情報がある場合はそれらを参考にすることで,面接時にクライエントに共感できるよう準備すること。波長合わせをすることでソーシャルワーカーは,クライエントの反応にどのように対処するか,また面接やグループワークをいかに展開していくかを準備できる。スーパービジョンにおいても,スーパーバイザーはスーパーバイジーにむけて波長合せを行う。わが国の社会福祉教育,特にソーシャルワークにおける基本用語の統一・普及に関する研究 報告書
2005(平成17)年3月
社団法人 日本社会福祉士養成校協会
より引用
というような意味になります。
「波長合わせ」は、レポートだけでなく、現場で普通に使われているありふれたものです。
例えば、デイサービスのような現場では確実に行われていることです。
デイサービスの職員は、援助を開始する前の段階で、あらかじめ利用者の情報に触れる機会があります。
- どんな生活をしてきたか?
- 何を大切にしているか?
- 精神的な安定感はどの程度か?
そういった情報をもとに、
であるならば、このように関わってみよう
という見立てがあるわけです。
デイサービスの職員は、その見立てをもとにして、あらかじめ援助者自身の感情をチューニングしています。
これが波長合わせの一例です。
でも、これってよく考えたら、そんなに複雑な理論ではない気がします。
他にも、一例を挙げると、
グループホームや障害者施設で、利用者に対して幼稚園児に対するような話し方をする職員がいますが、これも波長合わせの一種です。
チーチーパッパとレクリエーションをしている姿をみて、違和感を感じることがありますが、その正誤はともかくとして、これも波長合わせの結果です。
では、なせ、このような理論があるのでしょうか?
それは、
相手によって、対応の仕方を変えるというのは、確かに必要性があるからです。
例えば、認知症の人と話をしていると、話の筋がずれてくることがあります。
そのような場合に、相手が不快にならないように話を戻したり、気づきを促すなどするというテクニックを使うことことがあります。
テクニックというほどのことではないのですが、認知症介護に関わる人であれば普通にしていることです。
もちろん、波長合わせには、高度な準備作業もあります。
例えば、地域福祉のワーカーが、地域住民との対話を前に事前調査をしたり、住民の考えを深く考察することなどです。
それから、非常に厳しい利用者の家族と面談をするというような状況でも波長合わせが必要なってきます。
当然、事案によっては、経験が必要なこともあるでしょう。
でも、波長合わせをすることで、何が何でもクライエントに共感できるかっていったら、そんなことはありません。
むしろ、無理をして相手に合わせているだけだったり、我慢をしているだけ、なんてことがよくあります。
厳しい苦情を受けて「おっしゃるとおり」なんて言葉を言ったとしても、それは共感しているのではありません。
波長合わせというのは、利用者と話を合わせるということではなく、他人との意志の通じ具合を調整することです。
激高している利用者に対して、同じように声を荒げてしまうのは、相手の波長に合わせていることにはなりませんし、意志の通じ具合を調整していることでもありません。
そういう意味では、波長合わせとは、高度な感情コントロールを求められる技術だといえます。
利用者と接するという日常的なことから、連絡調整業務における高度な感情コントロールに至るまで幅広く活用できます。
理論的にはシンプルであっても、実行する上では高度な技術であるというのが、波長合わせだといえるでしょう。
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