相談援助実習を受ける方へ!実習の現実・まとめ

実務経験が1年以上ある方は実習免除になりますが、それ以外の場合は、1か月もの長い実習を受けなければなりません。
あなたは、これが大変だと思ったことはありませんか?

中には、実習があるために仕事を休めず、結果的に社会福祉士を断念している人もいるくらいです。

専業学生にとっても、社会人学生にとっても負担の多い実習ですが、その対価として実り多い教育的成果が得られるかというと、現実的には厳しい側面もあります。

今回は、そのあたりを私の体験をもとに記事にしてみましたのでぜひ参考にしてみてくださいね。

私の実習体験からお話しますと、2004年に社会福祉士の実習を受講して単位を習得しました

2週間×2の配属実習でした。
配属実習というのは、大学が実習先を指定する実習のことです。

  • 身体障害者福祉センター
  • 知的障害者通所更生施設

この2施設です。
当時は、社会福祉援助技術現場実習という名称で、現在の相談援助実習とはやや趣が異なる実習でした。

その特徴を簡潔に記すと、

  1. 職場体験型の色合いが強い実習
  2. ボランティア的活動実習
  3. 現場に社会福祉士がいない
  4. 介護実習(見学)だった

というものでした。

実習を経験した学生の多くは、実習報告会で上記の特徴のうち、少なくとも2つは該当していたと報告します。
私が配属された施設では、1・2・3が該当していました。

つまり、介護実習以外のすべてです。
ちなみに、特別養護老人ホームに実習にいくと介護実習と職場体験型の実習になるケースが多くなっていました。

何故、国家資格である社会福祉士の実習教育が、このようなことになっていたのか

実習でソーシャルワークのスキルを身に付けるという前提になっていなかったのだから無理もありません。

私が実習に行った施設では、利用者のケースファイルなどの個人情報は、触らせてもらえませんでしたし、身体介護のトランスなども学生にさせることはありませんでした。

何か問題があったら困るという施設側の事情があるのでしょう。
この時点で、ソーシャルワークのスキルっていう段階からは遠く離れています。

施設からしたら、学生は部外者です。
個人情報の流出、利用者や学生のケガなど、
下手に問題を起こされると困るのでしょう。

一方、
学生側からすれば、実習担当者のいうことをおとなしく聞いていれば、それで単位が修得できる仕組みになっているのだから、
「それでいいじゃないか」
という意見もあり、実習先と学生のニーズがここで合致しているというのも問題の要因といえます。

巡回指導の効果は?

実習中、大学から教員が実習先に顔を出すことを巡回指導といいます。
本来、実習担当教員は、スーパーバイザー(この場合は、外部の熟練した指導者)です。

でも、この巡回指導、これがたったの1施設1回のみで終了でした。
それも、施設側に菓子折をもってきて、数分間学生と面談し、それで終わりです。

巡回指導時の面談では、一体何を話すかというと、

  • 実習を受ける上で困ったことはないか?
  • 分からないことなどはないか?
  • その他不明点の質問と相談

とまあ、こんなところです。

仮に、学生が施設の実習指導者に対して正当なクレームがあったり、不法行為(セクハラなど)があったりすれば、この場で述べる機会はあるということになります。

もちろん、本当に問題があるならば、大学の事務局に通報して実習を中止にすることも可能です。
むしろ完全にアウトレベルの問題ならば、隠さずに言うべきでしょう。

しかし、学生は、施設の実習指導者から評価を下される立場です。
へたに苦情をいって、低評価を受けることを怖れるわけです。

実際、実習担当者は良くも悪くもプライドが高いので、何等かの理由により気分を害すると、A評価をCの評価にするということを平気でします。

なので、許容できる範囲の問題は我慢して、実習期間が過ぎることを願うというネガティブな姿勢になりがちです。

これが、実習生の本音ですが、ソーシャルワークのスキルはどこへ行ってしまったのでしょうか?と思います。

〔所見欄に空欄の目立つ、主観的な実習評価表の例]

実習評価表

専門職が受ける実習とは言い難い留意事項

これは、ある配属実習における留意事項の例です。

  • 挨拶をきちんとする
  • 言葉遣いを丁寧に(利用者を呼び捨てにしないなど)
  • 身だしなみに気を付ける

私が感じたのは、
「福祉専門職の実習において、あらためて言うようなことではない」
ということです。

もちろん挨拶は基本ですし、大切なことではありますが、何万ものお金を払って受けている実習が、この内容では、社会人学生としては物足りませんでした。

社会福祉士の実習が、福祉専門職としての実習ならば、もう少し内容が専門的にならないものか?と思います。

実習はボランティアじゃない

当時の実習(4週間)の料金は5万円だったのを思い出します(今は10万位はします)。
学生から徴収したお金は、どういう配分で大学側と実習受け入れ施設側に支払われるのかは学生には不明です。
おどろく方もいるかもしれませんが、実習先の施設はしっかり金をとっているんですよ。

にもかかわらず、内容はボランティア活動

なにか釈然としないものを感じていました。

もちろん、まじめな態度で実習は受けていました。
毎日提出する報告書には、それらしいことを書いて、多くの学びを得たことにしていました。

でも、何事もそうですが、全てを正直に書ける訳ではありませんよね。

「こんなことをして一体何の意味があるのか?」

といった実習を否定するような記述は出来ない訳です。

だから学生は利用者とのやり取りを、針小棒大に感動口調で記録にしたためるということをしてしまうのです。

ソーシャルワークが根付いていない日本にしては、まあまあの体験型実習

過去の実習のシステムが悪いと文句ばかりいっても始まらないですし、もちろん良い側面に目を向けることもできます。

例えば
利用者とのふれ合いや関わりです。

実際、感動的な出会いや別れを経験する学生は存在しました。

代表例として、ある児童養護施設に実習に行った学生の例を示すと、こんな感じです。

  • 実習に行った際、当初は信頼を得られなかったが、徐々に児童が心を開いてくれたのがうれしかった
  • 施設の子供は慣れない大人に対して「試し行動」をしてくるということを学んだ
  • 大人を信用できない、強がりをいう児童にも繊細な心があると感じた

と、まあこのような体験談です。

これは実習の事後指導の中で報告されていた事例です。
この実習体験は確かに実りあるものだったに違いありませんが、社会福祉士の実習でなければならない理由は特にありません。

冷たい言い方かもしれませんが、要は人と人とのふれあいの中で起きた出来事のひとつです。

この出来事が、より実利的に、ソーシャルワークのスキルを身につけさせたかというと、それはありません。
ちなみに施設の実習指導者は無資格者、もしくは保育士です。

もちろん、相応の経験がある職員が実習担当者になるのですが、その経験の源にある専門技術は、その現場でのテクニックであったり、独自の見解であったり、その法人や上司の方針だったりします。

学生が身に付けたのは、汎用性のあるソーシャルワークではなく、現場での体験学習をした事実です。

さて、実習を批判するようなことを言いすぎましたが、体験型学習の機会としては一定の役割を果たしていたので、その部分はプラスに考えることは、もちろんできます。

また、体験型にならざるを得ない側面もあって、例えば、学生の側にも反省すべき点はあるわけで、実習計画をみればわかるように、準備不足の学生が多い中、プロと同等の指導をするということにも無理があるという事情が多分にあることはお伝えしておくべきでしよう。

〔実習計画の例]

実習計画

カリキュラム改定

いろいろ改善の必要性のあった社会福祉援助技術現場実習ですが、2007年の養成カリキュラム改定によって、相談援助実習と名称が改められ、その内容は大きく変わりました。

実習生受け入れ先の実習指導者の要件として、社会福祉士の資格と実務経験が加えられ、有資格者に指導を受けることができる体制が整う形となったのです。

これにより、実習要件を満たさない施設が増えることになりましたが、過去の問題点はかなり解消されてきています。
少なくとも、実習先には社会福祉士の有資格者がいることになり、単なるボランティア要因としての扱いや、見学に終始するような実習は減る傾向にあります。

これは、スーパーバイジーとしての力量が試される場でもあります。
そして、指導者の方も大変です。
これからは、顔の見えなかった社会福祉士の仕事を教える訳ですからね。
今後に期待しましょう。

まとめ

2004年当時、実習先で社会福祉士有資格者なんて見たことありませんでした。
なんせ大学にすらほとんどいませんでした。
実習担当の教員すら無資格です。

それだけ、社会福祉士は顔が見えない(存在していない)時代だったということでしょう。
今では、有資格者が実習に関わることが増えてきたというだけでも進歩したというべきでしょう。

これまでの実習は、ソーシャルワーク教育の体制が整っていない分、学生の側にも準備不足な側面がありました。
体験型実習だったので、それでもよかったのです。

しかし、今後は実習計画の立て方であったり、実習記録の書き方について相談援助技術的な要素が少なからず求められるようになってくるでしょう。

それなりに準備する必要性が出てくるのですが、そこはあせらず、所属の学校に支持を仰いで準備するようにしましょう。
そうすれば怖れることはありません。

それよりも気を付けなければならないのは、心身の体調管理です。
実習教育をうける時期は、大学生にとって学問の集大成が近づいている時期です。

実習だけでなく、卒論、就活、試験対策などに追われる中で、実習を受けることは、心身の調子を崩しやすいので注意しなければなりません。

社会人で社会福祉士を目指している人の場合は、社会経験というものがあるので、少々のことでうろたえることはありません。

しかし、若くして福祉を志している専業学生の中には、実習をきっかけに現場への失望を感じ、実習に取り組めなくなる可能性があります。

福祉系大学後期の学生には、次のような心理的葛藤が内在することがあります。

  • 滑り止めで仕方なく入学したのであって、そもそも希望の大学ではなかった
  • 勉強しなくても入学できるので福祉を専攻した
  • 就活の段になって福祉労働の待遇の悪さを避けて一般企業に就職したいと思うようになった

このような心理的葛藤を抱えながらの実習は、とかく現場への失望感と無気力を引き出すことになるので、実習中はネガティブな感情に巻き込まれないように注意する必要があります。

注意すべきは、学生本人もさることながら、大学の指導教員も同様です。
豊富な経験と知識をもとに、学生を正しい方向に導くようにする必要があります。

単に、学生の準備不足を責めたり、適正のなさを指摘するような指導は、それこそまったくもって指導者としての準備不足や適性のなさを露呈することになるので、くれぐれも指導者には適切なスーパービジョンを施してほしいものです。


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