社会福祉士レポート実例(社会福祉援助技術各論ⅠB-設題2)
社会福祉士のレポート作成にお悩みの方へ
実際のレポート作成例をここに提示します。
社会福祉援助技術各論ⅠBは、グループワークについて学習する科目です。当科目に関しては、設題1と設題2で、その学習内容の関連性が高くなっています。
例えば、設題1では「グループワークについて」、設題2では「グループワークの展開過程について」をそれぞれ述べる設題になっています。
まずは設題1を作成し、その後、設題2を作成すると、知識の再利用ができて、効率的にレポート作成ができます。
設題1を確認する場合はこちらをクリック
設題2
「集団援助技術(グループワーク)の展開過程についてまとめなさい。」
本設題では、まずグループワークの事例を提示する。その後、事例を参考にしながらグループワークの展開過程について、主に援助者の視点から「個人」と「集団」の両方について検討し、まとめていく。
1.事例(フェイス・シート)⑴
①施設名:精神薄弱者援護施設コロニーK
②グループ名:kグループ
③グループの種類:集会室でレクリエーションや対話を行い、目標達成を目指すグループ
④グループの目的:入所者間の信頼関係強化
⑤個人の目的:日常生活・作業実習から生ずる緊張の緩和、対人関係適応能力の習得など
⑥日時・場所:毎週土曜、10~11時、集会室
⑦出席者:A子、B男、C子、D男、E子
⑧援助の経過:1回目の集会でA子は遅刻する。このことからB男・D男は、A子を非難する。A子は表情を固くし、活動に対して抵抗を示す。その後、援助者の提案により、遅刻問題についての対話が行われる。最初、A子の表情は固かったが、その後メンバー同士で合唱するなどしていくうちにグループに溶け込むことができた。なお、C子のグループに対する態度は消極的であった。
2回目の集会では「個人やグループの目標を達成するには、どうすればよいか」などの話し合いが行われた。C子は欠席した。
3回目の集会以降、グループ内での役割や規範が形成されてくる。メンバーの相互作用が発揮され始め、集団援助は軌道に乗る。その後、集会は第9回まで行われ、終結した。
なお、本事例におけるメンバーの選出に関しては、入所施設という関係上、必ずしも自発的グループではないが、メンバー全員の承諾を得ていることをお断りしておきたい。
2.援助の準備期
準備期とは、施設・機関などで、集団援助が必要と判断された利用者に対して、援助者が援助を開始するための準備をする段階から、予備的な接触をするまでの段階である。
事例の場合は、援助者が施設に入所している利用者間における、信頼関係強化の必要性を感じたため、集団援助が計画された。
まず、援助者は、以前のケース記録を読み返すなどして、個々の利用者の生活状況や感情・問題の把握をして、利用者の抱える問題と、その解決方法について予測を立てる。さらに、プログラム活動の準備を進めていく中で、これから構成しようとするグループが、どういう集団になるか、どういう障害が発生するかについての予測を立てる。予測を立てる際は「波長合わせ」を用いる。
次は、援助者が所属する機関・施設のメンバーに対し、これから行う集団援助活動について、その意義を説明し、合意を取りつける。
その際、同時進行で利用者の家族や関係者に接触することも集団援助活動の一環である。
次は、個々の利用者や、その家族などに対して予備的接触をする中で、活動の目的や援助についての説明を行い、参加の同意を得た上で、最初の集会の日時と場所を決定していく。その他、援助記録用紙の作成や、最終的な出席者の確認なども行う。
3.援助の開始期
開始期とは、最初のグループの集まりから、実際にグループとして動きはじめるまでの段階をいう。グループの目的を再確認し、メンバーと施設の間に結ばれる約束の確認が行われる。また、準備期に用意されたプログラムの計画をメンバーと共に再検討することも行われる。援助者は、個々のメンバーがグループ活動へ速やかに入れるように、メンバー間の感情をほぐし、グループが活動しやすいように、受容的態度で援助を行う。
また、開始期では、メンバーは援助者を中心的人物とみなし、援助者が中心となって活動が進行しやすい傾向にあるので、援助者はメンバー同士が交流を図れるように側面的援助をしていくことが大切である。
例えば、第1回の集会の時に、A子の遅刻に対して他のメンバーがA子を非難したが、援助者は一方的にメンバーに対して制御するのではなく、A子に弁明の機会を与えたりするのである。ただし、状況によってはA子に対して個別援助を行うことも考慮に入れておくことが必要である。
4.援助の作業期
作業期とは、個々のメンバーとグループの両方が自らの課題に取り組み、目的を達成するために明確な成果を出せるように活動する段階のことである。援助者は個々のメンバーのグループ内における役割行動を把握し、メンバー間の相互作用が活発になるように働きかけ、グループがメンバーにとって必要とされる存在になるよう援助を行っていく。
また、作業期はグループ独自の規範や、メンバーの役割が形成される時期でもある。
事例の場合、3回目の集会時に「体調不良でもないのにC子が欠席したことについて話し合うべき」という案がメンバーより出て、その結果「グループ全員でC子の部屋を訪ねよう」ということになった。この案を提案したのは、C子と仲良しのE子であった。
事例では、グループに仲間意識が芽生え、ある程度メンバー間の信頼感とグループの凝集性が確立されていたので、援助者はC子に対して個別援助を行わず、グループの案に任せてみたのである。これによりC子が欠席した理由は「歌を歌うのが嫌だから」ということが判明している。
なお、事例ではグループの力によってC子の感情が表現されたが、場合によっては、グループの中にある個人は、グループの圧力から、メンバーの感情表現が困難になることもある。この場合、援助者は個人に対して、目的を明確にさせるよう励ましたり、必要であれば個別援助の実施や、個人の目標達成に障害となる原因を取り除いたりすることもある。
5.援助の終結・移行期
終結・移行期とは、個人やグループの目標が達成されたり、あるいはグループ活動が継続不可能になった場合において、グループ活動を終えるための準備段階から実際にグループ活動が終わる段階までのことを意味する。
事例では、6回目の集会において、参加者全員の間で、十分に目標が達成されたという合意に達したため、ここから終結の準備に入り、9回目の集会で終結を迎えた。A子、C子を含めてメンバー間の信頼感は集団援助によって格段に向上している。事例のように集団援助が成功した場合は、終結に対してメンバーは、達成感と同時に喪失感の感情を持つことがある。その場合援助者は、メンバー個々の感情を、共感をもって受け止める必要がある。それには、十分に余裕をもって終結に対する準備をしておくことが望ましい。そしてメンバーがグループで得たものを糧として、新たな生活に移行できるよう援助を行っていく。
6.まとめ
グループワークとは、グループに参加している「個人」と、その個人で形成される「グループ」の両方を対象とし、グループの特性を活用してメンバーの相互作用を引き出し、メンバー個々の問題解決を図る援助技術の体系である。
以上、グループワークの展開過程について述べてきたが、援助の各段階では、最後に活動の「評価」と「記録」が行われることを補足として付け加えておく。これは、今後の援助活動において貴重な資料となるものである。
【後注】
⑴大塚・硯川・黒木、270~277頁参考
事例は「精神薄弱者施設におけるグループワーク事例」を参考に、加筆訂正したものである。
【参考文献】
- 大塚達雄・硯川眞旬・黒木保博『グループワーク論 ソーシャルワーク実践のために』ミネルヴァ書房 1993年
- 福祉士養成講座編集委員会『社会福祉援助技術論Ⅱ』中央法規 2003年
社会福祉士からのコメント
事例が掲載されていた文献は、大学から参考文献として指定された図書ではなくて、私が独自に選択したものです。
推奨される参考文献以外を使用するのはよくないと考える人がいますが、特に問題はありません。
参考文献を厳格に指定されてしまうと、文献が用意できないがためにレポートが書けないということが起こります。
また、一本のレポートを書くために参考文献を買うのも大変です。
大学もその辺のことは承知しているので、多様な参考文献を選択してレポートを書いていくとよいでしょう。
ただし、あまりに分野違いの書籍を参考文献として挙げ連ねても、あまり意味はないので、各科目に関係のある重要な書籍名を参考文献として記入するようにしましょう。
スポンサーリンク