社会福祉士レポート実例(社会福祉援助技術総論-設題2)
社会福祉士のレポート作成にお悩みの方へ
実際のレポート作成例をここに提示します。
表題の科目名は、大学によっては異なる名称かもしれませんが、社会福祉士資格を取得する学生の多くが履修する援助技術科目です。
なお、レポート作成例は、私が学生時代に書いたレポートを再編集したものです。
設題2
「社会福祉援助技術の諸援助技術とその援助過程についてまとめなさい。」
I直接援助技術
1.個別援助技術(ケースワーク)
個人や家族が社会生活を送る上で、様々な要因により、社会生活上の問題解決が自力では図れない場合に、直接的な対人関係を媒介にし、社会的機能を高めるように援助する技術である。その援助過程は、生活問題を抱えた利用者(クライエント)と出会うところから始まり、問題に一定程度解決の目途が付いたところで終結となる。
(1)インテーク
直接援助の導入部分において実施される。「初回面接」や「受理面接」と訳される。援助を必要とする人は、必ずしも自らの問題を正確に表明できるとは限らない。援助者は、クライエントの主訴とニーズを正確に見極めることが必要である。利用者が自らの問題解決の方向性について適切に認識できるように、どの機関が、どのサービスを提供できるのかといった情報を提示する。契約の合意は、利用者が援助を受けることに納得し、かつ援助者も援助内容が適切であると認識することによって成立する。
(2)情報収集
利用者の問題を把握・検討するために情報を得る段階である。後の「援助計画」や「介入」を検討する上での重要な過程となる。情報収集の具体的方法は、施設や機関によって異なる。一例を挙げると、生活保護実施前に行われるミーンズテストが該当する。
(3)アセスメント
利用者の援助計画を策定する前の問題把握と理解のためにある。集めた情報を分析し、問題解決の方法を探る。
(4)援助計画
具体的な援助計画を策定する段階である。計画内容は、利用者との合意に基づいている。
(5)介入
援助計画に沿って、利用者の問題解決を図るため、援助者が働きかける過程である。介入方法には、直接介入と間接介入がある。利用者自身に問題解決の糸口がある場合は、直接介入が行われ、利用者を取り巻く環境に問題がある場合は、間接介入が行われる。
(6)評価
介入の結果を判定することである。評価には、判定者の主観が入り込む余地があることに注意しなければならない。
(7)終結
利用者の問題が解決すれば、個別援助技術の援助過程は終結する。終結は、利用者と援助者が納得した形で行われるべきものである。
2.集団援助技術(グループワーク)
小集団(2人以上)を対象にし、集団の相互作用を活用し、成員の成長・発達・治療を促進する活動である。構成要件には、援助者と利用者の間にある援助関係・利用者間の相互作用・プログラム活動・社会資源の活用がある。その援助過程は、以下のように展開される。
(1)準備期
事前に情報を収集し、利用者の生活状況や感情、問題やニーズを把握する。そして問題に対する目標を設定し、プログラム活動への準備、関係する施設・機関の職員への説明・協力の要請などを行う。また、利用者に対する予備接触や活動の出席者の確認も必要である。
(2)開始期
最初の集まりからグループとして動き出すまでの段階である。援助者は個々の利用者が速やかにグループ活動に入れるように利用者間の感情をほぐすようにする。
(3)作業期
利用者であるグループが、自らの課題に取り組み、目的の達成に向けて活動する段階である。援助者は、利用者が主体的に活動できるようにし、また相互援助が可能になるように働きかける。
(4)終結期
グループ目標が達成されるなどの理由により、グループ活動を終える準備の段階から、実際に活動を終えるまでの段階である。
Ⅱ間接援助技術
1.地域援助技術(コミュニティワーク)
地域社会を単位として、地域生活上の諸問題を住民自身が主体的・組織的に取り組めるように援助を行う方法である。地域社会を組織化する過程でもある。その過程は、問題の発見、重点課題の設定、問題解決に向けての方針作成、活動の展開、活動の評価である。
2.社会福祉調査法(ソーシャルワーク・リサーチ)
福祉ニーズや問題の把握、社会福祉サービスや政策の評価、個別ケースの介入や援助の効果測定、さらにソーシャルワークに必要な知識の蓄積や理論構築に関する質的・量的な実証研究の総称である。その援助過程は、問題の決定と仮説の構成、計画と準備、現地調査の実施、調査結果の整理・集計・分析の4段階がある。
3.社会福祉運営管理(ソーシャル・ウェルフェア・アドミニストレーション)
福祉機関や施設の組織運営や管理上の合理的な方法論や理論を指すものである。援助技術としての社会福祉運営管理の過程には、地域社会の診断とニーズの検討、解決可能な問題を抽出し、広報による地域社会への協力要請、問題解決の計画作成、評価がある。
4.社会活動法(ソーシャルアクション)
社会福祉に関する運動論的活動の展開へ援助する技術である。かつてのソーシャルアクションは、重度の障害により、自らの発言が困難な人々の意見を代弁する機能の一つとして実施されていたが、現代では当事者が自らグループ形成する方向に移行している。例えば、障害者による「アクセス権運動」により、「ハートビル法」「交通バリアフリー法」の制定に影響を及ぼしたことなどが挙げられる。
5.社会福祉計画法(ソーシャル・ウェルフェア・プランニング)
時代の進展に対応するため、社会福祉の構築を計画的に実現することを目的とする方法である。従来は、専門家の指導のもとに行政が参画する方法だったが、地域福祉重視の今日では住民が広く参加し、独自のニーズを反映した社会福祉計画が策定される方向にある。その援助過程は、構想計画、課題計画、実施計画、評価という過程を経て、抽象的段階から具体的な計画策定と実施に向けた展開がなされる。
Ⅲ関連援助技術
関連援助技術の構成は、ネットワーク、ケアマネジメント、スーパービジョンと、隣接科学分野であるカウンセリング、コンサルテーション、IT技術などがある。
福祉ニーズの複雑・多様化により、社会福祉援助技術を推進する支援組織や支援方法のネットワーク化や、介護保険制度以降のケアマネジメントの必要性は欠かせない援助技術となっている。社会福祉法制定により、措置制度から利用制度への移行が示されてからは、福祉専門職の資質向上のためのスーパービジョンの必要性や、福祉以外の領域である隣接科学分野の専門的技術の必要性が高まっている。
Ⅳまとめ
一人の福祉専門職が、所属する組織において職務を遂行する分には、個別援助技術と集団援助技術のみで事足りるかも知れない。しかし、より広い視野に立って社会福祉援助を発揮するめためには、間接・関連援助が不可欠となる。とりわけ、関連援助技術は、今後のわが国における人口構成比の変化や、IT化、ロボット化の進展に伴って、コンピュータなどの支援ツールは社会福祉の業務にとって必要不可欠なものとなり、福祉専門職者にとって関連援助技術の重要性は、今後も高くなっていくことが予想される。
参考文献
1.福祉士養成講座編集委員会「社会福祉援助技術論Ⅱ 第2版」中央法規出版 2003年
2.佐藤克繁・山田州宏・星野政明・増田樹郎「社会福祉援助技術論<応用編>」黎明書房 2003年
3.岡本民夫・小田 兼三「社会福祉援助技術総論」社会福祉基本図書 1990年
社会福祉士からのコメント
総論科目は、テーマが広くて、抑えなくてはならない専門用語が多く、短文説明による用語の羅列になりがちです。しかし、字数制限を考えるとやむを得ないこともあります。全ての用語に対して、具体例や自分の考えを述べるのは、明らかに字数オーバーになります。こうしたレポートの単調さを回避する工夫として、最後に「まとめ」として自分の意見や感想を書くというのも一つの手法です。