社会福祉士レポート実例(社会福祉援助技術総論-設題1)
社会福祉士のレポート作成にお悩みの方へ
実際のレポート作成例をここに提示します。
表題の科目名は、大学によっては異なる名称かもしれませんが、社会福祉士資格を取得する学生の多くが履修する科目です。
なお、レポート作成例は、私が学生時代に書いたレポートを再編集したものです。
設題1
「社会福祉における援助活動の意義について述べなさい」
人々が社会の中で生活していくうえで、困難や支障が生じたときに、相談やケアといった適切な援助を提供する実践のことを、社会福祉援助活動という。主に、社会福祉サービスの上に提供され、対人援助が主体となり、コミュニケーションを媒介とし、人と人との関わりを通じて相互作用する。そこでは、障害の有無に関わらず、普通(ノーマル)の生活を可能にする「ノーマライゼーション」の理念が重視される。このときに使用される「直接援助技術」「間接援助技術」「関連援助技術」を総称して社会福祉援助技術という。
1.社会福祉援助活動の概念
一般に社会福祉は、法律などにより構築されている社会制度を示す「制度としての社会福祉」と、問題を抱えている人々を実際に援助する取り組みの活動を示す「実践としての社会福祉」の2つがある。いわば、福祉におけるハードとソフトの関係である。
ハードとしての社会福祉は、制度・理念・目標・形式・構造・合理性などを重視するのに対して、ソフトとしての福祉は、活動・実践・方法・倫理・機能・内容・専門性などを重視する。
両者の相互作用は、車の両輪である。例えば、社会福祉の制度が十分整備されていても、社会福祉の担い手の資質が低ければサービスは向上しない。逆に担い手が優秀であっても、制度が脆弱なら、やはりサービスはよくならない。
2.社会福祉援助活動の内容
社会福祉援助技術を用いた社会福祉援助活動には、社会福祉専門職による、科学と専門性に裏打ちされた援助活動がある。その手段としては、言語的・非言語的コミュニケーションを用いて行う「面接」がある。これは、直接・間接的手段よって利用者の利益のために行われる。面接の要素には、利用者・援助者・時間・場所・コミュニケーション手段・目的がある。援助者は、誰に対して、どこで、どの程度の時間、どんな手段を用いて、何のために面接をするのかを検討することになる。面接を進めるにあたり、援助者はクライエントとの間に信頼関係(ラポール)を築くように配慮する必要がある。そのための基本原則としては、バイステックの7つの原則が用いられる。①個別化、②受容、③意図的な感情表出、④統制された情緒的関与、⑤非審判的態度、⑥利用者の自己決定、⑦秘密保持の原則である。これらの原則は、援助者とクライエントの間に、個人的関係とは異質の、専門的援助関係を築くのに役立ち、観察・傾聴・質問・陳述が展開されることになる。
3.社会福祉サービスと社会福祉援助活動との関係
社会福祉サービスは、社会福祉の包括的なサービス体系を意味し、その中の具体的な個々の活動として、社会福祉援助活動が位置づけられている。当然、福祉ニーズに影響を受けるが、これは社会環境によって変化する。例えば、戦後の経済的貧困状態においては、生活上の基礎的・生理的ニーズである「貨幣ニーズ」が主流であったが、高度経済成長によって、経済的・物質的なニーズが充足されてくると「非貨幣的ニーズ」が強くなるという具合である。現在では、社会構造や価値観の多様化により、福祉ニーズはさらなる変化を続けている。
このニーズに関しては、A.マズローの「ヒューマン・ニーズの階層」理論が好んで用いられる。ピラミッド状に示された段階図には、一番下層から、順に「生理的」「安全」「所属・愛情」「自尊」の、それぞれのニーズがあり、最上段には「自己実現」のニーズが据えられている。社会福祉援助活動においては、人間の存在を重視するものであるから、少なくとも第4段階の「自尊のニーズ」までは、社会福祉サービスを通して対応していくことが求められる。
4.社会福祉援助活動の変遷
これまで、日本の社会福祉は、制度や政策が中心となって発達してきた経緯がある。このことから「社会福祉援助技術」は、それらの付帯として捉えられ、ともすると後手に回されてきた感があった。実際、社会福祉サービスは、一定の基準で行政に選別された、経済的困窮者・障害者・母子家庭・要援護児童などの対象者へ、限定的に提供されていた。
しかし、2000年に、旧社会福祉事業法が改正され、社会福祉法が誕生すると、施設中心主義の施策から、地域福祉中心の在宅福祉施策へと、その方向を転換した。そして「社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律の概要」では、行政が行政処分により、サービス内容を決定する措置制度から、利用者が事業者と対等な関係に基づきサービスを選択する利用制度への移行が示され、社会福祉サービス利用者の利益保護・地域福祉の推進が明確になった。
5.社会福祉援助活動の意義
社会福祉法の制定以降における社会福祉援助活動は、対象である個人や家族、または社会環境の関係に着目し、働きかけながら、利用者自らが主体的解決をする方向で支援していく活動であると考える。しかし、社会福祉サービスの多くは法律に基づく公的な行政サービスとして提供されている。ところがサービス利用にあたっては、介護保険サービス利用に見られるような申請主義の側面が強く、また、認知症などの判断能力がない人にとってのハードルの高さの問題もある。今後、さらに社会福祉援助活動を推進し、全ての国民がウェルビーイング(well-being)を享有できる社会を目指す活動が求められる。最近では、介護保険制度創設から10年以上が経過し、福祉専門職が、量的にも質的にも向上したこともあって、介護サービスは定着した感がある。また、成年後見制度なども徐々に利用される傾向にあり、一定の成果が上がったといえる。これらは、社会福祉援助活動の意義を示しているといえよう。
参考文献
1.中島恒雄「社会福祉要説」ミネルヴァ書房 2001年
2.福祉士養成講座編集委員会「社会福祉援助技術論I」中央法規 2002年
3.ミネルヴァ書房編集部「社会福祉小六法2002[平成14年版]」ミネルヴァ書房 2002年
社会福祉士からのコメント
レポートの書き方における定番の型の1つに、設題で示された用語を解説した上で、自分の意見や回答を述べるというのがあります。
今回も、その定番手法を用いました。
この科目は「社会福祉援助技術総論」となっているように、科目名に総論という文字があるので、テーマが広くて書きにくい部類の設題です。出てくる専門用語も多く、それらについて全て説明文をいれるとレポート枚数がオーバーしてしまうことも難点でしょう。
その場合は、あなたの学校のレポート規則に合わせて、説明を短くしたり、要約したり、思い切って不要と思う箇所を削除してもいいでしょう。