社会福祉士レポート実例(教育心理学-設題1)
社会福祉士のレポート作成にお悩みの方へ
実際のレポート作成例をここに提示します。
人は、生育環境や教育に大きく影響を受けて行動している存在です。
利用者に関わるとき、教育心理学は、ひとつの指針を与えてくれるでしょう。
もちろん、この学問に唯一絶対の正解がある訳はありませんが、第一歩としては有効です。
ポイント(学習ガイドより)
知能・性格・遺伝と環境・教育・発達など様々な角度から考察すること。
科目概要(学習ガイドより)
教育心理学とは、子供を教育していく上で必要となる知識を身につけ、子供の成長を促すためのより良い教育とは何かを心理学的視点から探求する学問といえる。そのため、発達、学習、人格、測定・評価の4つの領域について基礎知識が必要となってくる。本科目では、以上のような基礎的知識修得はもちろんのこと、事例にのっとって、それらの知識をいかに教育の実践に役立てていくのか検討する。併せて、現実の教育現場で起きている問題への応用を考える。
設題1
「子どもの「個人差」について述べなさい。」
子どもの個人差について考えるとき、最も影響力を行使し得る立場にあるのは親である。親が子どもに、どのような影響を与えるかが、子どもの知能や性格における個人差を、良くも悪くも生じさせる。これらの理由から本設題では、親が子どもの個人差を、どう考えていくべきかという視点から、子どもの個人差について述べていく。
1.知能の個人差
未知の環境に早く適応する子、言葉の習得が早い子、遊び集団の中でリーダーシップを発揮できる子など、子どもの知能には様々な個人差が見受けられる。しかし親が子どもの知能における個人差を考えるとき、勉強のできる子は知能が高い子、できない子は知能が低い子というように、学業成績が優秀であるか否かという一義的な捉え方をしてしまうことが多い。本来、知能は抽象的な思考能力であるとか、新しい環境に適応する能力であるとか様々な定義付けが可能なものであり、生活する社会によって多義的な意味を含む概念である。したがって親は、子どもの学業成績が知能そのものであると考えてはならない。子どもには学業成績や知能検査だけでは測れない才能や潜在能力がある。現時点での学力をもって子どもの将来を悲観するのは適切ではない。さもなくば、子どもの個人差を見極め、教育をしていく上での障害となる。それよりも、子どもの個人差に合わせた知能の発達を考えていくことが大切である。
2.性格の個人差
物怖じしない子、人を笑わせるのか好きな子、我慢強い子というように、子どもの性格にも様々な個人差が見受けられる。最近では、傷つきやすい性格の子が増えているとの指摘もあり(同級生が一緒に遊ぼうと声をかけてくれなかったなどの些細な理由で傷つく)、子どもの性格における個人差は拡がりをみせている。こうした状況を踏まえて考えると、親が子どもの性格を見極めるときには、子どもを特定の性格特性の枠に押し込めるような言動を避けなければならないといえる。子どもの行動の一部分を取り上げて「〇〇な性格の子だ!」といったように決めつける態度をとると、子どもは、その通りの性格になる場合がある。一人ひとりの子どもの性格には個人差があり、一人の子どもの中には、様々な性格形成の素因が存在していることを、親は理解する必要がある。
3.遺伝と環境の影響
子どもの知能は、遺伝と環境要因の影響を受けて個人差が生じてくる。確かに教育心理学の知見は、遺伝的に同一と考えられる一卵性双生児が、例え、別々の環境に育てられても、知能検査の結果の相関は高いとして、知能に遺伝の影響が働いていることを指摘している。また、インドで発見された野生児アマラとカマラの事例は、知能における環境の重要性を端的に示している。これらの点から、子どもの知能が発達するためには、遺伝と環境の相互作用が必要であるという考えが導かれるであろう。
しかしながら環境要因の方に、より重要な要素があると考えることもできる。理由は、知能の遺伝的要因の多くはコントロールできない場合が多いのに対して、環境要因の方は、ある程度コントロールが可能だからである。例えば、ダウン症候群の子どもが有する知能の発達における遺伝的要因をコントロールすることは難しいが、環境要因である不適切な親子関係や養育態度(溺愛・放任・育児放棄など)をコントロールすることは可能であるということを考えると分かりやすい。
一方、性格については、知能と同様、遺伝と環境の影響を受けて個人差が生じてくる。例えば、性格に影響を与える遺伝要因として、気質、自律神経系の型、ホルモンの働きがある。環境的要因としては、親の養育態度、家庭の経済的事情、兄弟姉妹関係などを挙げることができる。遺伝的要因よりも環境要因の方が、比較的子どもの性格に影響を与えるであろう点も、知能の場合と同様の理由によって説明できる。また一見、遺伝に基づく要因に見えても、間接的に環境要因が関係している場合もある。例えば、遺伝に基づいて形成された顔つきや体格について、子どもが自信や劣等感を持つことで、性格への間接的な影響が及ぶ場合である。このとき、子どもの劣等感の原因が、社会における子どもの個人差に対する評価に起因するのであれば、これを環境的要因による性格への間接的影響と考えることができる。
4.発達について
遺伝的要因と環境要因の中で、どのような刺激を受けるかが、子どもの発達における個人差をもたらす。例えば、母親が乳児に優しく語りかけながら授乳するのと、栄養補給のために事務的に哺乳瓶で授乳するのとでは、発達上、異なる影響ほ及ぼすと考えられる。教育心理学の知見では、発達の初期において、環境からの刺激の効果が最も効果的に現れる時期を「臨界期」としているが、これを人間の場合に当てはめるなら、出生後間もない頃における授乳を通じた母親とコミュニケーションは、言語やコミュニケーション能力を獲得する上で重要な要素といえるだろう。その他、食生活、睡眠習慣といった、各家庭によって異なると考えられる要素も、積み重なることによって、子どもの発達に大きな影響を及ぼし、個人差を生じさせる。したがって親は、子どもの発達段階について理解を深める必要があるといえる。しかし発達段階の区分を杓子定規的に解釈し「具体的操作期に入ったのだから〇〇ができるはず」といった態度を子どもにとるようなことがあってはならない。
5.学校教育について
子どもの知能・性格における個人差を生じさせる要因として重要な要素に学校教育がある。現在、学校教育においては、多様な教育改革が進められている。ゆとり教育の方針のもとに新学習指導要領が実施されてきたのもその一つである。ゆとり教育の評価には、賛否両論様々な意見が提言されている。例えば、①授業時間や教育内容が削減されたことで基礎学力の低下を危惧する、②有名大学の進学に有利とされる私立高校への進学を助長し、塾の授業料も加算され、結果として教育費の高騰や教育の格差をもたらした、③子どもが感想文に「算数が大好きになった」と書いてきた、④学習意欲と点数が上昇したなどである。これらの意見から推測されることは、ゆとり教育が、子供の個人差への配慮を意図しているということである。つまり、ゆとり教育は「価値観の多様化した社会になったのだから、今までのように全体主義的に同じ勉強を強制するのではなく、個々人が得意とする教科や好きなことの勉強に、より多くの時間を使えるように」と意図して作られたと推測できるということである。最近では、学力低下を理由に教科書の内容を再検討する動きがみられるが、親は、こうした改革に振り回されることなく、子どもの個人差に合った教育とは何かを考えることが大切である。
6.結論
子どもの個人差は、どのような親を持つかによって大きく左右される。親はこのことを肝に銘じておくべきである。親には、子どもの個人差に合った適切な環境を提供する責任がある。そのとき親は、例え、学業成績の悪い子であっても、その子が強い動機づけを持って粘り強く努力する性格の持主であったならば、その子には十分に知能の発達が見込まれると考えるべきである。また、子どもが勉強に向かない気質を持っていたとしても、その結果、有名校に入学できなかったとしても、子どもには他の多くの可能性があると考えるべきである。それが子どもの個人差を考えるということである。
【参考文献】
- 作間慎一(他)『教育心理学』玉川大学出版部、2005年 13.14頁参考
- 園田富雄『教育心理学ルック・アラウンド』ブレーン出版 2002年 25.30.32~33.47.50.51.53.66.67.68頁参考
- 高橋勝視(編)『毎日新聞縮刷版 平成17年4月号』毎日新聞社 2005年 201.899頁参考
- 中島恒雄(編)『保育児童福祉要説』中央法規 2004年 200頁参考
- 日本子どもを守る会(編)『子ども白書2003』草土文化 2003年 33.148頁参考
- 日本子どもを守る会(編)『子ども白書2004』草土文化 2004年 92頁参考
- 町沢静夫『「こころの居心地」がよくなる心理学』三笠書房 2004年 16-17頁参考
- 和田秀樹・子安増生『親しかできない、子どもを賢くする方法』小学館 2002年 1.41.62-63頁参考
■■レポート内容についての説明をします■■
まず、レポートの文中表記について述べましょう。
「子供」と「子ども」という表記についてです。
「子供」という表記が差別的だとして、一部議論がありますが、学習ガイドの文や、設題文をみると、「子供」と「子ども」の表記が混在しています。
この場合、設題文の記述にならって「子ども」の表記で書き進めるのが良いでしょう。
ただし、字数制限の関係で、途中「〇〇な子」という表現も使用しています。
全てを統一しようとして「〇〇な子ども」というように書いてしまうと、くどい感じがしますし、字数を余計に稼いでいるような文になってしまいます。字数制限を守ることは必須なので、こうした応用は必要となってきます。
次に、参考文献についてです。
本科目は、実はリライト不足により、一度不合格になってしまって、書き直したレポートです。
再び不合格と判定されないため、参考文献は、過剰なくらい全て具体的参考ヵ所を記載しました。
リライト不足ってのは、こちらの見方で、教員からすれば盗作です。
要は、教科書に書いてあることを、そのままに近い形で書き過ぎだということです。
で、書き直しの際ですが、またもや盗作と判定されると困るので、防御を張るために参考文献を細かく記入することになってしまいます。
上記レポートの参考文献を見ていただくと分かりますが、ちょっと過剰に書いていますよね。
もう盗作とは言わせないために、これでもかって参考文献を挙げています。
でも、教員はこれらの参考文献をいちいち確認するはずはありません。
そんな手間をかける教員はまずいませんからね。
でも、単位を落とされるのがしゃくだったのでたくさん書いておきました。
もちろん指定したテキストや頁は、きちんと参考にした内容となっています。
ダミーの参考文献は記載してありません。
ちなみに、参考文献の一つに「毎日新聞の縮刷版」を挙げています。
これは新聞の記事をまとめた、非常に分厚くて重たい本です。
学生だった当時、ネット環境がなかったものですから、図書館でこの分厚くて重い本を借りてレポートを書き直しました。
リュックサックにこの本を入れ、さらにはイミダスやら、現代用語の基礎知識なども入れると、肩が痛いほどリュックが重くなります。
私の腰は、このときこうして鍛えられたのだと思います。
話がそれましたが、
要は、教員はこれら参考文献の内容を確認なんかしてはいません。
2回目の提出では、もちろん合格のA評価でした。
最後は、アマラとカマラについて述べておきましょう。
アマラとカマラというのは、大昔、狼に育てられたとする少女のことです。
インドで孤児院を運営する牧師に発見されたとき、四つ足で走り、死んだ鳥の肉をむさぼったといいます。その理由は、狼に育てられたからというものです。その証拠写真とされるものを見ました。
白黒の荒い画像で、見るからに野生児といった感じです。
教育心理学を勉強していると、この話には、一度は触れることがあると思います。
この少女の逸話は、今となっては信憑性が疑われますが、教科書に記述があったので事実として引用しています。
実際、狼が人間を育てるというのは考えにくいですし、昔のことなので記憶違いや都市伝説という要素もあるかも知れません。
まあ、仮に人間が、人間以外の存在に育てられた場合、人間らしくない行動様式を獲得することはあり得ることだとは思いますけれど・・・。
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