社会福祉士レポート実例(カウンセリング演習-設題2)

社会福祉士のレポート作成にお悩みの方へ

実際のレポート作成例をここに提示します。


社会福祉士が、相談援助職に就いたとき、役に立つ技術の一つがカウンセリングです。


なので、大学で社会福祉士を目指している人は、可能ならカウンセリング関係の単位取得をしてみてはいかがでしょうか。


教科書に書いてあることがすべて正しいとか、大学で学んだことをそのまま現場に持ち込めるということではありませんが、役には立ちます。


問題を抱えた人の話を理解するための一つのツールだと考えていただくのが、社会福祉士にとってはちょうどいいと思います。


ロジャーズのカウンセリング理論は、広範囲に応用できる理論ではありますが、これとて絶対ではありませんし、時には指示的カウンセリングが有効なこともあります。


どの場面で、どの人にどの理論や技法を使うかは、社会福祉士の判断によります。


まあ、それはさておき、レポートはレポートてす。設題に沿って解答を目指しましょう。

ポイント(学習ガイドより)

 現代の社会状況を捉え、何故カウンセリングが必要なのか、カウンセリングがどのような形で、どういったことに役立っているのか考察すること。

科目概要(学習ガイドより)

 カウンセリングの理論は、医療、社会福祉、教育などの現場で幅広く活用・実践されている。そこで、カウンセリングとはどのようなものなのか、そしてカウンセリングに必要な技法や態度、心構えとはどのようなものか、基礎から学習していく。また、カウンセリングは比較的新しい学問領域であるため、いくつもの理論が存在しているが、その中でも基礎となる、精神分析、来談者中心療法、行動療法(認知行動療法)の三つを中心に学習していく。

設題2

「現代人の生活とカウンセリングについて考え、カウンセリングがどうあるべきか述べなさい。」

 現代人の生活は、ストレスが多いとか、価値観が多様化したとかいう言い方がされているが、捉えられている傾向は、人と人との絆が減少している感覚ではないだろうか。
 その理由として、コンビニ的、ファミレス的なアメニティが挙げられる。ディズニーランド的なホスピタリティやおもてなしは、快適ではあるが、これは役割とマニュアルに基づくサービスであって、自発的な善意に基づくコミュニケーションではないということを押さえておく必要がある。
 これに対して、昔の地元商店的なものは違っていて、買い物に行けば、店主と、その場に居合わせた客とのコミュニケーションがあり、自発的な善意に基づくコミュニケーションがあった。
 つまり、現代人の生活は、快適さの中にシステム化されたものが入ってくることによって、人々の絆の介在する余地が減ってきている。これが、仕事から消費の場面のいたる所で広がっており、このよう社会では様々な心理的問題が生じやすい。
 例えば、反抗期がないことをよしとする家族が増えている。これは、トラブルを回避し、その場さえ仲良く過ごせればいいという感覚で人間関係を結ぶ人が増えていることを示唆している。背後には、子供の頃から子供部屋として個室を与えられ、他者に対するノイズ態勢が低いまま育ってきた家庭環境が一つの要因としてある。
 そうすると、他者をノイズと感じてしまう割合が高くなり、寛容度の低い人間が増える。そのような人間が集まっているときのコミュニケーションは、相手に入り込まない、本当の自分を見せない、トラブルの原因となるものを最初からカットするというような展開になる。こうしたコミュニケーションには実りがなく、家族の絆を深める機会を阻害する要因となっている。実際、若い世代の中には、何をやっても楽しくない、だるいだけだと感じている者が多い。
 現代人の生活は、絆感覚の減少が一つのキーワードとなり、心の問題がクローズアップされるようになってきており、ここにカウンセリングの必要性が生じてきている。
 しかし、心の問題をカウンセリングによって解決しようとすると、多様なカウンセリングの中にも、役割とマニュアルに基づくものが存在しているという問題に気付く。コンビニ的、ファミレス的アメニティから生じた心の問題を、同じく役割とマニュアルに基づくカウンセリングで解決しようとしても問題の解決とならない場合があるということである。
 役割とマニュアルに基づくカウンセリングとは、例えばクライアントをカウンセリングの技法によってのみ治療しようとするものである。または、特定のカウンセリング理論にのみに固執してクライアントと接するものである。そもそもカウンセリング理論の立場は多様であり、理論や技法もまちまちである。それは容易にマニュアル化できるものではないはずである。
 カウンセリングで大切なのは、どういうカウンセリングをしたかということよりも、クライアントの問題が改善したかどうかである。カウンセラーはクライアントの役に立つためにカウンセリングをするのであって、カウンセリングするためにクライアントに会う訳ではない。
 一方、社会では、カウンセリングという言葉が氾濫している状況もある。化粧品や髪の相談(対面販売)などにもカウンセリングという言葉が使われるなど、日常用語化している。中には、カウンセリングと称していながら、実はその目的がカウンセラー側の自己利益の追及であったりする場合もある。こうしたカウンセリング的なものは、クライアントのためにならないばかりか有害ですらある。
 では、役割とマニュアルに基づかないカウンセリングとは一体どのようなもので、どういった形で社会に役に立っているのかということになるが、次の事例によって、それを示すことができる。
 ある女性のカウンセラーが、集団就職で都会に来た十代の男子のカウンセリングを担当した時の話である。彼はホームシックから、会社を辞めたいと訴えてきた。何回かの面接の過程で、身体のだるさと背中の痛さを訴えてきたとき、カウンセラーである彼女は、たまたま指圧の心得があったため、彼に指圧を実施した。その後のカウンセリングでも何回か指圧を実施することになったが、それが功を奏してか、その後、クライアントは元気になり、会社を辞めずに済んだのである。
 これは、カウンセラーとしての在り方を考えさせられる事例である。通常、クライアントから何らかの訴えがあったとき、カウンセラーとしては、すぐ、誰の理論を用いて、どう受け答えするかといったことを考えがちである。しかし、この事例のカウンセラーは「身体が痛いのであれば指圧をしましょう」というように、カウンセラーとしての役割にとらわれずに、柔軟に対応した点が評価できる。つまりこれは役割とマニュアルに基づかない、自発的な善意に基づくカウンセリングだと考えられるのである。
 誤解のないように言うと、役割とマニュアルに基づかないカウンセリングとは、カウンセラーとしての領分をわきまえずに、伝統的なカウンセリング理論を無視して独自のカウンセリングを展開せよということではない。先達の理論を応用しつつ、クライアントをよく見極めたうえで、最適なカウンセリング技法を用いてクライアントの利益を図られよという意味である。
 また、自発的な善意に基づくカウンセリングというのは、クライアントのためを思って行うカウンセリングという意味であり、金銭や自己満足を第一義的に捉えるカウンセリングのことではない。
 もちろんこの事例の方法は、他の事例に用いても効果はないかもしれないし、たまたま上手くいっただけかもしれない。しかし、こうした役割とマニュアルに基づかない、自発的な善意に基づくカウンセリングこそが、絆感覚の少ない社会に生活するクライアントにとって、役に立っているカウンセリングであり、これからのカウンセリングに求められるものであると考える。
 以上に述べてきたことに対しては、若い世代を中心とした都会での話であって、一面的な見方であるという批判があると思われる。しかし、土地や世代によって程度の差こそあれ、システム化された絆感覚の少ない社会が、これ以上、継続・拡大していくのであれば、もはや心の問題が生じたときに相談できる人は、ごく一部の近親者か、専門家であるカウンセラーのみということになってくるだろう。カウンセリングは、まさにこうした社会状況に対応していくべきものと言える。


【参考文献】

  • 菅野泰蔵『カウンセリングがわかる本』法研、2000年
  • 水島恵一、岡堂哲雄、田畑治『カウンセリングを学ぶ〔新版〕』有斐閣 2002年
  • 武藤清栄『カウンセリングに行こう』サンマーク出版 1997年



■■書き手の価値観を問うような設題では、熱く語ることもある■■

当レポート内容は、十分な裏付けがない文章と言えば、確かにそうですし、やや強引な論理展開になっている感があります。


設題が「どうあるべきか」系の価値観を問うような内容ですと、こうした内容になりがちです。


参考文献を提示してはいますが、主要な部分は、頭の中にある情報をもとに仕上げたものとなっています。


文面が、やや話口調になっていますね。


イメージとしては、社会学者が時事ニュースを解説しているかのようなコメント的文章です。


原文を大部手直ししたのですが、それでもなお、冗長で、熱い語り口の文章となっていて、その点では改善点があるといえましょう。


本来、レポートでは渇いた文章が好まれるといわれます。


渇いた文章というのは、感情的表現のないタッチの無味乾燥な文章です。


しかし、本設題は、書き手の価値観を問うような内容となっているので、多少、熱くて痛いような言葉遣いをしても、大勢に影響はないと考えます。


実際、評価は、不合格ではなく、B+(5段階評価のうちの上から2番目)でした。

カウンセリング演習2評価票


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