社会福祉士の知識と技能は国家試験で測られる

第31回社会福祉士国家試験問題の「現代社会と福祉」という科目の中でヘイトスピーチについての問題が出題されました。

問題 26 「ヘイトスピーチ解消法」の内容に関する次の記述のうち,最も適切なものを 1 つ選びなさい。

  1. 外国人観光客に対する不当な差別的言動を規制することを目的としている。
  2. 不当な差別的言動に対する罰則が規定されている。
  3. 雇用における差別的処遇の改善義務が規定されている。
  4. 地方公共団体には,不当な差別的言動の解消に向けた取組を行う努力が求められている。
  5. 基本的人権としての表現の自由に対する制限が規定されている。

(注)「ヘイトスピーチ解消法」とは,「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」のことである。

公益財団法人社会福祉振興試験センターウェブサイトより引用

ちなみに正解は4番です。

でも、今日は問題の解説ではなく、こういう問題が出題されることの意味についてのお話なんです。

10年くらい前ならヘイトスピーチという言葉自体が表に出ることはなかった。なので、こうした問題が出るなんてありえなかったわけです。

ところが社会で何かきっかけがあり、ある特定のキーワードが注目を浴びると、こうして国家試験に出題されるようになる。
これって、すごいことだと思うんです。

ワーキングプアとか、非正規労働者の増加とか、特殊詐欺の話も同様で、近年においては社会福祉士の国家試験問題に出題されています。
これは社会福祉士が取り扱う問題の多様性と可能性を示唆しているといえます。

一般的にいっても国家試験というのは、その資格を持つ人が持つべき専門的知識や技能を試すものですから、社会福祉士というのは、ある意味で

  • ヘイトスピーチ
  • ワーキングプア
  • 貧困問題
  • 差別
  • 特殊詐欺

こうした社会問題のスペシャリストだといっても言い過ぎではない話なんです。

実際、社会福祉振興・試験センターのウェブサイトには、
社会福祉士国家試験は、社会福祉士として必要な知識及び技能について筆記試験の方法により行ないます。
と書いてあります。

つまり国家試験に出てくることはすべて社会福祉士に必要な知識や技能であると証明してくれているんです。

誰が証明してくれているって、国家ですよ。

これってすごくないですか?

私が受験したのはもう10年以上前ですから、ヘイトスピーチという言葉は試験に出なかった・・・・じゃあ私はヘイトスピーチのことを語る資格がないかというと、そんなことはないと考えています。

むしろ一回でも国家試験に出た問題は、もう社会福祉士の扱う領域の問題なんだという自信を持っていいくらいに思っています。

そう思ったほうがポジティブじゃないですか?

ヘイトスピーチを語るのに資格なんて不要だという意見は当然にわかりますが、名称独占資格という看板を使った職業においては重要な要素なんです。

だから国家試験では、どんなことが問われているのか?
みんな気にしないけど、そういうことは重要なんです。

社会福祉士は国家資格という看板に合わせて・・・つまり資格という器に合わせて成長しやすいと思うからです。

地域包括支援センターの社会福祉士の場合は、実務においてヘイトスピーチの知識が問われるケースもあり得るでしょう。

例えば、大久保や高田馬場エリアの包括には、ヘイトスピーチ関係の相談や苦情が住民から寄せられることがあるでしょう。

ですが、普通のデイサービスの相談員であっても、一般企業に勤める社会福祉士資格保持者であっても、自営業の社会福祉士であっても、国家試験で取り上げられる社会問題については理解を深めておくべきなのが社会福祉士という存在です。

普通の人でも社会福祉士の資格を活かそうと思った瞬間に社会との接点や問題点を意識せずにはいられません。

ここでいう社会にはネットの世界も含まれます。
今後は特にネットの影響力が増す社会になってきます。

技術革新の早い、かつ人口減少の社会では、ネットでの現象が無視できなくなってくるでしょう。

実際、ヘイトスピーチはネット上でも起きています。

どうです?

社会福祉士の関わる場所がまた増えたとはいえませんか?

実務経験の中にしかスキルがないと考えてしまうのは、就職・転職における採用担当者目線の思考が強すぎます。

実務の中で得られるスキルは、それはそれですばらしいスキルですが、もっと生活者としての視点、一個人としての視点を大切にして社会福祉士の資格を生かしてみてはいかがでしょうか?

社会福祉士国家試験はその一端をになっています。
そう考えると試験勉強も、少しは楽しくなるのではないでしょうか?


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