介護職がいなくなる理由
介護職員がしている仕事は、社会的に何か付加価値を生み出して経済を発展させるような活動ではありません。
むしろ、社会保障費や税を使って、誰かがやらなければならないことに従事している社会に必要な仕事です。
消防士とか、警察官とか、そういう仕事と同列の仕事です。
にもかかわらず、これまでの日本は措置から契約への改革をしながら、結局のところ、福祉を安上がりのサービスにしてしまったことで介護職員は時給にして1000円程度の労働へシフトしてしまいました。
介護職員を消防士や警察官のように公務員にするくらいできないのか?
と思います。
もちろん人件費を抑制したいのはわかりますが、この少子高齢・人口減少社会の中、いつまで低賃金で介護職を確保できるか疑問です。
処遇改善手当のような期間限定の約束はだめです。
もっと普通の安定を保障してあげれば介護職員はもどってきます。
介護職がいなくなる理由
賃金
賃金が低いと介護職は辞める人が増えます。業種転換できる人はさっさと転職して、介護職よりもましな収入を得る道を選びます。
これは当たり前すぎるので説明不要ですが、問題は低賃金と知りながら介護職になった人がいるのは何故か?です。
それは昇給と社会保険負担や税負担によって説明できます。入社したときの収入は求人票にかいてあるので、低賃金は承知の上ですが、何年もがんばっているのに給料が思ったほど上がらない、上がっても年間3000円の昇給だったりしたらモチベーションはやがて枯渇します。
さらに追い打ちをかけるように社会保険料や税の負担が年々増えて手取りが減ります。つまり、わずかに昇給しても引かれる分が増えるので、結局は増えていないのと同じことになります。天引きされる額や、値上がりする生活費を上回る昇給がない限り、少なくとも全産業の平均賃金と同額を保障するくらいのことをしない限り、介護職にとどまる人は減り続けるでしょう。
職場環境の要因
介護職をしたことがない人には、なかなか想像しにくいのですが、介護は「感情労働」といって介護を必要とする利用者のケアには集中力と体力が求められる仕事です。
最近では、利用者からの暴力を受けないで済むための介護手技であったり、誤嚥に関わる死亡事故に対する個人の責任が問われる事例(特養おやつ事件)があってから、介護士個人の危機管理の必要性が求められるなど、複雑化する介護についていけない側面が見受けられます。
要するに介護職場は、命に関わるリスクがある現場だということです。
その他、職場によっては他業種のブラック職場でありがちな、パワハラ、セクハラ、残業代未払といったことも残念ながら一部存在しています。
介護職員は、こうした職場環境に対して改善を求めるよりも、辞めた方が早いと判断して介護の職場を去っていきます。
介護職がとどまる理由
業種転換できないから妥協している
年齢が高いと他業種に転職しにくい状況があります。介護の経験から転職できる仕事は、介護職かケアマネか福祉系の仕事くらい。もともと会社をリストラされたとか、ニートやフリーターの経歴で介護職に来たので、さらなる業種転換は困難だと感じてしまうといったこともあります。
同業種で転職しても収入は大差ない
日本の会社全体に共通していますが、会社員は転職するたびに収入が下がるのが一般的です。介護も同様で、介護職から介護職に転職しても、給料はほとんど変わらないか下がる方が多いのです。
ケアマネになって収入が少し増えたということはあるものの、それとてわずかな額です。
仕事に使命感を感じているから賃金は低くてもいい
このタイプは少数ですが存在します。だからこそ介護業界が成り立っています。退職者が相次ぐ職場の責任者だったり、タイムカードを押してから残業をしていたり、週一日の休みなのに職場に出勤している人などが該当します。
この人たちも、生活が成り立たないので、もちろん無給で介護職はやりませんが、あまりに多忙なため賃金が上がらないことよりも、業務に没頭することに意識が逃げてしまっています。
やりがいを感じている
自分が介護の仕事をしながら介護のことを否定ばかりするのはフェアではないので書きますが、やりがいを感じてこの仕事しているという側面は確かにあります。これがなかったら介護職に何が残るというくらい重要な要素です。しかし介護職員も生活者です。低賃金・劣悪環境のままでよいわけはありません。
まとめ
介護の仕事から人々が去っていくのも無理からぬことです。
ようするに使命感を持っている人や、やりがいを感じている人だけが介護業界に残っていく仕組みになっています。
賃金にかかわらず使命感を持って介護の仕事をしている人は、なんて都合の良い存在になっていることでしょう。
こういう人たちに甘えて成り立っている介護業界には今一度考え直してもらうことを希望します。
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