介護のこまかい手順で困ったら~介護の基本を思い出して介助にあたろう
私は、障害者施設の生活支援員をしています。 支援員といっても、業務の多くは介護業務です。 今、私の職場では、腰を痛めて長期病欠にいたっている人が複数います。 なので、職員の人手不足により、男性利用者の排泄介助が忙しくなっています。 で、私は、今週の金曜から、他のグループに支援の応援にいくことになったわけです。 普段、私は、別のグループで支援していますので、担当以外の利用者については、介助の内容をよく知らないということは当然あります。 例えば、車いすの利用者同士は同じグループですし、健脚(歩ける人)の自閉症のグループは同じグループとなります。その方が、活動がしやすいですからね。 私が応援にいくことになったのは、車いすを使用している身体障害のあるグループです。 障害者施設をご存知ない方は、分かりにくいかもしれませんが、実は障害者の排泄介助というのは、人によって非常に個別的で、細かい注意点や配慮が必要なことがあります。 単におむつをかえればよいということは少なくて、その利用者の家族の意向に基づいたケアをしないと、クレームになるのです。 もちろん、すべての障害者の介助が細かいということではありません。 長年の介護生活から、確立された様式があるため、いたしかたない部分はあると思います。
今日は、同施設内の他のグループへ支援の応援にくことになって思ったことを述べます。
かなり、体力と気を使う仕事です。
名目上は、腰痛といっていますが、メンタルがやられている疑いの人もいます。
そういう人は、なぜか男性が多いのです。
特養に勤務している人の中には、女性利用者の排泄介助をする男性職員もいるでしょうが、障害者の施設では、わりと同性介助が守られており、私の勤務する施設でも、例外なく同性による介助となっています。
そのために今日は、事前に排せつ介助の手順を教わりにいきました。
障害者施設においては、障害の種別ごとにグループ分けをして、グループ単位で活動をすることが多くなっています。
ですが、中には、細かいことにこだわりすぎて、合理性を欠くクレームをいってしまう家族が、一部存在することは事実です。
こちらとしては、プロとして、要求されるケアを提供するしかありません。
「応援職員としてケアしたので、ちょっとくらい間違えても許してね」
とは決していえません。
そんなことは、ご家族からしたら関係ないことなのですから・・・・
さて、今日の排泄介助の手順と注意点を、アウトプットの意味もこめて振り返りたいと思います。
- 車いすをストレッチャーの前につける
- 利用者を抱えて、ストレッチャーに移動する
- 柵をあげて利用者が落ちないようにする
- 車いすから、着替えを出しておく
- 車いす上の防水シートに汚染がないか確認する
- 防水シートにしわがよらないように車いすにセットしておく
- おむつとパットを交換する
- 緊張して、脚がクロスするように力が入るので、手で開くようにして介助する
- 意図せず、腕が急に動いて職員にあたることがあるので注意する
- テープ式のおむつは、少しでも汚れていたら交換する
- おむつの位置は、身体の中心線にあわせる
- パット(青線のあるほうが頭側にセット)は、あらかじめ巻いてあるので、そのままの状態で陰茎に確実に差し込む
- 身体に対して横方向にパットを1枚いれる
- おむつはしわがよらないようにする
- ギャザーを身体にそわせて、尿もれがないようにする
- おむつを仮止めする(少しきつめに)
- ズボンをはかせる
- ズボンは身体の中心線に合わせるようにはく
- 服はしわがよらないようにする
- 着替えがすんだら、車いすへ移乗する
- 車いすに移乗するときは、利用者の脚が車いすにぶつからいなようにする
- 車いすにのったら、ベルトをする
- ベルトはよじれないようにする
- ベルトの向きは間違えやすいので注意
- 車いすの背もたれの角度をたてて、深く座面に座れるように腰を奥にいれる
- 仮止めしたおむつを座位の状態で開き、パットが確実にセットされているか再確認する
- テープを止める位置に注意する
- 巻いてあるパットは、外のおむつからはみ出ないようにする(尿もれしないように)
- おむつを閉じる
- 防水シーツにしわがないか確認する(又のところにシーツがきているかも確認)
- 脚のベルトをする(ゆるめ)
- 足首のズボンのすそは、夏は外に出し、冬はベルトの内側にいれる
- 車いすの角度をもとにもどす
- 着替え類をバックにいれる
ざっとですが、こんな感じです。・・・・・長い(・_・;)・・・
文字だけで、書き表したのでわからない部分もあるかと思いますが「細かい配慮点がある」ということは伝わったのではないでしょうか?
ちなみに、これらの配慮が足りず、介助法を間違えてしまった場合、即利用者の家族からクレームがくると予想されます。
もちろんクレームをいうことは悪いことではありません。
利用者は、お金をはらってサービスを利用しているわけですから、むしろ当然ですね。
「プロのくせに、こんなこともできないのか?」
とおしかりをうけることも、うけいれなくてはなりません。
でも、ここで支援職は、クレームを恐れるのではなく、冷静に状況を考える必要があります。
これが、今日のお伝えしたいことになります
上記の排泄介助の留意点ですが、よくよく見なおしてみると、ごく基本的なことばかりであることがわかります。
例えば、
ズボンは、身体の中心線にあわせてまっすぐにはかせる
とか、
服やシーツやおむつにしわがよらないように
とか
ごくごく基本的なことばかりです。
「こまかいことをいってくる、だから、間違えたらクレームになる」
と反応したくなる気持ちをおいといて、まずは基本にたちかえることが大切です。
そして、
「介護の基本を思い出して介助にあたろう」
と思いました。
そしたら、私は数年前のことを思い出しました。
介護福祉士の国家資格をとるために介護技術講習(実務者研修の前身)をうけていたときのことです。
これは、その時に使用したテキストです。
いまでも大切にとってある本です。
介護の手順をかなりこまかく手書きで記していますね。
講習を受けているとき、
「なぜ、こんな細かい手順にこだわるのだろう」
なんて感じながら受講していました。
細かく手順を紙に書いたところで、いざ実技になると、頭の中で何度もシミュレーションしたことができないという経験をしていました。
介護技術講習では、最後に実技試験があるのですが、手順を覚えるだけでは、ちょっと状況がかわると、どうすればいいかわからなくなります。
頭がまっしろになるのですね。
その時、必要となるのは、介護の基本を思い出すことと、相手と自分の状態を把握する客観視できる冷静さです。
これが、介護技術講習を受けたときに、私が学んだことでした。
話を、もとにもどします。
要するに、来週、私が他のグループに応援にいく際に、きをつけることは、
- 安全に実施すること(ケガだけはさける)
- 一つひとつ確認しながら介助を進めること(声に出しながら手順を進める)
- まっすぐに、しわがなく、よじれず、丁寧にをこころがけること
つまり、介護の基本を思い出すことです。
これらをまもることで、応援の仕事をクリアできる可能性が高くなります。
もちろん、リスク要因は存在します。
例えば、イレギュラーなことが発生した場合です。
- 失禁による着替えや、車いすの座面の汚染
- 他の利用者の対応におわれ、短時間で介助せざるをえない場合
こうしたことがおきると、いくら冷静になってもタイムアウトになってしまう(帰りの送迎に遅れる)ので、気を付けなくてはなりません。
気を付けるといっても、避けられない部分もありますが、おむつをしっかりセットするとか、早めに行動するとか、事前に予知して問題がおきるのを避けられる要素もあります。
なれていない利用者の排泄介助は、なにかとお互いに気をつかいます。
そこは、神経を集中して、感情をコントロールし、乗り切ることが大切ですね。
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