社会福祉士レポート課題アーカイブ(児童福祉論-設題2)
過去レポート保存庫
児童福祉論は、従前の社会福祉士養成カリキュラム改定に伴って廃止された科目です。
現在は「児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度」という長い科目名になっています。
大学によっては、児童福祉論の名称は存続していることもありますが、いずれにしても社会福祉士の専門分野の一つである児童福祉について学習する科目であることに変わりはありません。
設題2
「児童福祉の行政機関及び関連機関、児童福祉施設のそれぞれの現状と課題について述べなさい。」
設題に沿って、児童福祉の行政機関・関連機関、児童福祉施設について概要と役割を述べた後、今日の問題点と、今後の課題について具体例を挙げて考察する。
Ⅰ児童福祉の行政機関・関連機関
1.国及び地方公共団体
国と地方公共団体は、児童の保護者と共に児童の福祉を図る責任を有する児童福祉行政の中点的存在である。児童福祉行政は、①国、②都道府県・指定都市、③市町村の3段階で実施されている。
①国の主な機構は厚生労働省であり、児童家庭に関する福祉行政について、企画調整、監査指導、事業費用の予算措置などの機能を果たす役割がある。
②都道府県は、担当域内の児童福祉事業の企画、予算措置、児童福祉施設の認可・指導監督、児童福祉実施機関の設置運営などを行う。
③市町村は、児童福祉施設(保育所など)の設置や保育の実施、さらに1歳6ヵ月児健康診査・3歳児健康診査などを行う。
2.審議機関
児童福祉法第8条に基づく機関であり、都道府県児童福祉審議会と、市町村児童福祉審議会(任意設置)がある。都道府県、市町村と諮問・答申を行う。児童福祉に関する施策の方向づけは、行政担当者たけで決めるより、広く一般社会や専門家の意見を求めるのが望ましいと考えられるので、審議機関の果たす役割は重要である。
3.児童相談所
児童(0~18歳未満)の健全な育成と権利擁護を促進する視点で、児童福祉法により設置された行政機関である。児童に関する問題について、相談に応じ、児童のニーズに応じた援助活動によって子供の福祉の向上と権利擁護を図ることを目的とする。主な役割は、①児童福祉に関する調査・判定に基づく指導、②児童に関する医学的・心理学的・教育学的・社会学的・精神保健上の判定、③児童の一時保護、④施設入所の措置などがある。
4.福祉事務所
社会福祉法に基づく社会福祉の総合的な行政機関である。都道府県、市・特別区は設置が義務づけられているが、町村は任意設置となっている。役割は、経済的生活困難者、母子家庭、高齢者、障害者などに対して、①相談に応じ、②援護・育成・更生などの援助を行ったり、③施設入所・在宅生活が行えるように措置援助を行うことである。
5.保健所
公衆衛生における中核的機関である。児童福祉に関しては、母子保健の観点から重要な役割を果たす。その業務には、①健康診査、②訪問指導、③療育指導などがある。
6.児童委員・主任児童委員
民生委員を兼ねる児童委員は、市町村の区域における児童家庭福祉のための民間の奉仕活動を行う。①担当区域内における児童家庭・妊産婦の生活環境を把握し、②援助・指導を行い、③社会福祉主事・児童福祉司の職務に協力する役割を果たす。
7.民間児童福祉関係団体
児童福祉に関する民間団体である。各団体の目的に沿った活動を展開している。主な役割は、行政からの委託事業や、施設間の連絡調整など、行政の手が行き届かない部分について独自サービスを実施する点にある。
Ⅱ児童福祉施設
児童福祉法に基づく児童福祉施設には次のものがある。
1.助産施設
保健上必要があるのに経済的理由で入院助産を受けられない妊産婦が助産を受ける。
2.乳児院
乳児を入院させて療育する。
3.母子生活支援施設
配偶者のない女子(またはこれに準ずる者)と、その児童を入所させて保護し、自立促進のために生活を支援する。
4.保育所
保育に欠ける乳幼児の保育を行う。
5.児童厚生施設
児童に健全な遊びを与え、健康を増進し、児童の情操を豊かにする。
6.児童養護施設
保護者のない、乳児以外の児童・虐待児などを入所させ、養護し、その自立を支援する。
7.知的障害児施設
知的障害児を入所させ、保護し、独立自活に要する知識技能を与える。
8.知的障害児通園施設
知的障害児を保護者の下から通わせ、保護し、独立自活に要する知識と技能を与える。
9.盲ろうあ児施設
盲・ろうあ児を入所させ、保護し、独立自活に要する指導や援助を行う。
10.肢体不自由児施設
肢体不自由がある児童を治療し、独立自活に要する知識技能を与える。
11.重症心身障害児施設
重度の知的障害・肢体不自由が重複する児童を入所させ、保護し、治療や日常生活の指導を行う。
12.情緒障害児短期治療施設
軽度の情緒障害児を短期間入所、または保護者の下から通所させ、その障害を治療する。
13.児童自立支援施設
不良行為をした、またはする恐れのある児童や、家庭環境の理由により、生活指導を要する児童を入所、または保護者の下から通所させ、個別の指導を行い、その自立支援を行う。
14.児童家庭支援センター
地域住民などから児童福祉に関する問題について相談に応じ、必要な助言・指導を行い、さらに、児童相談所・児童福祉施設との連絡調整、その他の援助を行う。
以上が、児童福祉施設の概要である。各施設は、対象者が社会福祉援助を必要としたとき、施設の機能や目的に応じて社会福祉援助を提供する役割を持っている。
Ⅲ問題点と課題
児童福祉の行政機関・関連機関、児童福祉施設について、今日の問題と課題について具体例を挙げる。
例えば、行政機関である児童相談所は、複雑多様化した児童福祉の問題(特に児童虐待)に、全国180ヵ所の児童相談所だけで、地域に密着した、きめ細かい援助活動を展開することが困難という問題がある。これに対しては、前述の「児童家庭支援センター」を増設し、児童相談所との連携を図ることで、ある程度問題が緩和されると考えられるが、依然として独自の専門的機能を有する児童相談所が不足していることに変わりはない。
この問題を解決するには、児童相談所の増設が課題となるが、加えて各行政機関と児童福祉施設の連携機能の強化も課題として残されている。せっかく多種多様な機関・施設が整備されても、その連携が悪ければ意味がない。
連携問題の一例としては、母子生活支援施設と福祉事務所の連携を挙げることができる。
母子生活支援施設の入所決定は、福祉事務所単位で行われており、生活保護のケースワークと一体性が確保できるという長所がある。しかし、母子が夫の暴力(DV)によって緊急逃避してきたケースなどでは、入所施設の広域的措置を迅速に行う必要があるので、行政と施設の緊密な連絡調整が援助の重要な要素となる。この場合「入所決定を広域的に行える仕組み作り」が課題となる。
以上、例として挙げたものは、ほんの一例であって、児童福祉には、まだ多くの問題や課題が残されている。
【参考文献】
- 柏女霊峰『別冊発達23 改正児童福祉法のすべて 児童福祉法改正資料集』ミネルヴァ書房 1998年
- 高橋重宏・山縣文治・才村純『子ども家庭福祉とソーシャルワーク』有斐閣 2002年
- 福祉士養成講座編集委員会『児童福祉論 第2版』中央法規 2003年
- ミネルヴァ書房編集部『社会福祉小六法』ミネルヴァ書房 2002年
■■社会福祉士レポート通信課題で起こる「行き違い現象」はこれ■■
このレポートを書くとき感じたのは、設題と学習ポイントに示された注意書きを読む限り、非常に書くことが多いなということでした。
大学から指定されているレポートの字数制限は、3200文字程度、原稿用紙8枚です。
学習ガイドに示されたポイントは以下の通りです。
1998年4月より、改正児童福祉法が施行された。新児童福祉法で示されている児童福祉機関、児童福祉施設にはどのようなものがあるか、その概要と役割を説明すること。その上で今日の児童福祉機関、児童福祉施設における問題点を具体的にいくつか挙げ、今後の課題について述べること。
設題はこれです。
「児童福祉の行政機関及び関連機関、児童福祉施設のそれぞれの現状と課題について述べなさい。」
要は、設題と学習ガイドに示されたポイントを読むと、書くべきことが広く、特定されていないので、書きづらい
ということです。
「児童福祉の行政機関及び関連機関、児童福祉施設のそれぞれの現状と課題について述べなさい。」
この設題における太字の部分を読む限り、該当する機関や施設については、全て一通り触れた方がよいように読み取れました。
なので、レポートの本文を観ていただくと分かりますが、機関や施設について、それぞれ説明するために、番号を振って箇条書きのようにして、簡潔な書き方になっています。こうすると字数を節約できるのです。全てについて長い説明をすることは、字数の関係上できません。
ところが、いざレポートが返却されてくると、児童相談所、福祉事務所、保健所が重要な機関だから、そこについてもっと書いた方がいいという添削がされていました。
赤ペンで書いてある実施期間③~⑤というのは、児童相談所・福祉事務所・保健所のことです。
通信制大学の学生がレポートを書く際、まず熟読するのが、学習ガイドです。
ここに書かれていることが、通信の学生にとっては唯一の拠り所なのですが、ここに各教員の採点基準が入り込んでくることがあります。
- 学生は、学習ガイドをみてレポートを作成する
- 教員は独自の基準をもって採点する
これは、通信制大学でよくおこる行き違い現象です
私が名付けたネーミングですが・・・・
行き違い現象の構造を図に示すとこうなります。
それなら最初から
「児童相談所・福祉事務所・保健所を中心に述べよ」とかっていってほしい
って思いますよね。
大学側が作成した学習ガイドに書いてあることと、個々の教員の認識にずれが生じる。
教員が学習ガイドを作成しているとは限らないし、教員は複数在籍している。
教員には、いろいろな立場の人がいて、非常勤の講師の中には、複数の大学を掛け持ちしていたり、普段は福祉関係の団体で働いている人もいます。
つまり、大学の学習ガイドなんてあまり気にかけていないということがあるのです。
中には、自分の担当している科目が選択科目か必修科目かも知らない教員も存在します。
こうしたことが背景にあって起こる現象です。
ちなみに、こうした行き違いを理由にして、成績がC評価(可)のように悪いものであったら、学生としては納得いかないですよね。
しかしながら、この場合、成績の再評価を大学事務局に訴えたとしても、その評価が覆ることは、まずありません。
では、行き違いを防ぐために、レポートを書く前の段階で質問や問い合わせや確認をするべきでしょうか?
実際、それは難しいしでしょうねというのが私の率直な感想です。
もちろん、スクーリングに行った際などに、教員に質問することは可能です。
ただし、質問したとしても、誰が自分のレポートを採点するかは、やはりわかりませんので、教員からしても答えにくい質問になってしまいます。
また、何かしらの答えが返ってきたとしても、その教員にとっての答であって、大学の評価基準全体の答にはならないのが常です。
それくらい、レポートの評価というのは、各教員の裁量に任されているものなのです。
私は、教員の専門性を否定しているのではなく、その評価基準のずれを指摘しています。
なので、学生としては、さっさとレポートを書いて提出して、駄目だったら書き直すという方法をとるのが現実的です。
ちなみに、レポートを書き直す場合というのは「不可」、つまりF評価の場合ですが、そのようなことは少ないのが実状です。
レポートが不可になる場合は
- 教科書の丸写し(リライト一切なし)
- 他の学生のレポートの丸写し(過去に一字一句違わず、そのままコピーした学生がいた)
- レポート字数の明らかな不足、もしくはオーバー(400字原稿用紙8枚といってるのに4枚しか書かないなど)
- 設題を100%無視した解答
- 科目コードを間違えて記入したり、名前・学籍番号を書き忘れたなど事務的な手続きのミス
などの場合です。
それと、レポートの郵送事故により、不着となり、再提出となることはまれにあります。
再提出は、ウェブ上でアップロードできるレポートにしても、ネット回線やPC、サーバーの不具合などて起こりうる事象です。
なので、レポートのバックアップは、どんなときも必要だというのは、もはや鉄則です。私の場合、成績のことは結構気にしていたので、中途半端に悪い評価を付けられるくらいなら、書き直して再提出し、A評価をもらいたいという思いがありました。
でも、社会福祉士を目指すという学生の多くは、いちいち成績のことを気にしていることはできない事情があると思うので、よしとするしかないでしょう。
ただし、私の大学の場合は、GPAという制度があり、「可」のレポート評価、つまりC評価を出されるとちょっと困る事情はありました。
GPAというは、グレードポイントアベレージのことで、要は、一定以上の成績を収めないと卒業を認めないという制度です。
アメリカの大学では、一般的に行われている制度です。
最近では、日本の大学でも導入が進んでいます。
なので、あなたの大学に、もしGPAが適用されていたら、連続して及第点を取ることは避けるべきということになります。
しかし、よほど手抜きをしなしかぎり、及第点が続くことは少ないというのは、私の実体験からいえることですので過剰な心配は不要です。
レポートが及第点になる場合としては次のものが考えられます。
- 書く内容に比べて文章が明らかに長かったり、重複していたりするなどてして字数を稼いでいる
- 文脈全体を通して読んでも、明らかに専門用語や論理の錯誤がある(単なる誤植とはいえない程の間違い)
- レポートのルールを無視した書き方になっている(ですます調で書いてしまうなど)
これらの場合は、減点され、及第点になる場合があります。
厳しい評価基準をもっている教員によっては、他にもいろいろ評価基準があり、単位を落とす人も少数存在します。
でも、私に言わせれば、そんな悪評をつけるんだったら、
- 学習ガイドにはない、個別の評価基準があるなら最初に教えてほしい(スクーリングではシラバスという授業の予定表があり、そこに評価基準が明記してあることが多いがレポートでは学習ガイドがシラバスの役を担っている)
- 独学に近い通信生の立場をもっと理解して欲しい
って教員には言いたいところです。
教員の方から言わせれば、いろいろ反論はあるかと思いますが、学生の立場からしたら、これが率直な感想です。
まあいろいろ言わせていただきましたが、
今回のレポート評価は、B+(5段階評価のうち、上位2位)の評価でした。
結構、甘めの評価だったのかもしれません。
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