社会福祉士レポートアーカイブ(精神保健学-設題1)
過去レポート保存庫
精神保健学は、精神保健福祉士の旧カリキュラムの指定科目であったものです。
社会福祉士の指定科目ではありませんが、心理学を専攻していた関係で履修した科目です。
内容としては、精神保健福祉士履修者向けの福祉的な科目で、精神保健の専門知識よりも、考え方を重視する傾向が強いものとなっています。
では、精神保健学を学ぶ上での特徴を述べましょう。
まず、
精神障害者の福祉というのは、これまで後手に回る形で対応がとられてきた経緯があります。
戦後からの福祉制度を考えると、生活困窮者のための生活保護、困窮児童のための児童福祉法、戦争で身体に障害を負った人のための身体障害者福祉法が優先して制定されてきました。
精神的障害者も、昔から存在していましたが、他に優先して精神障害について議論されることは少なく、今のように、精神障害者のための社会資源はとぼしく、精神病院くらいでした。
戦後まもなくといわないまでも、昭和50年代頃であっても、精神病院というと、人里離れたところにあり、患者は牢獄に入れられているというイメージがありました。(私が子供の頃のことです)
都市伝説というか、デマですよね。
実際は、そんなことは誤解であることも多かったのですが、一方では、一部、宇都宮病院のような事件があったことも事実です。
そのような過渡期から何十年と過ぎて、今では、精神保健の概念は拡大しているように思います。
高度経済成長、バブル崩壊、ネット環境の整備、労働環境の変化、グローバル化などを経験して、日本には多くの人が精神的健康を崩しやすい状況が押し寄せてきたことが理由として挙げられます。
つまり、良くも悪くも、精神的健康に目を向ける環境が整ってきたということです。
このような状況を踏まえた上で、精神保健の重要性に思いを巡らせると、当レポートは書きやすいでしょう。
学習のポイント(学習ガイドより)
精神保健の概要を踏まえ、教科書にあげられているライフサイクル(ライフステージ)のいくつかを取り上げて、精神保健の重要性をまとめること。
科目概要(学習ガイドより)
精神保健とは、精神的健康に関する公衆衛生であり、精神障害の予防・治療・リハビリテーションから、精神的健康の保持・増進を図るための諸活動までも含んでいる。このような精神保健の基本的視点や基礎知識を学習し、現代の精神保健の意義や課題を考える。また、ライフサイクルにおける精神保健、及び精神保健における個別課題(アルコール関連問題対策、薬物乱用防止対策など)への取り組みについても学習していく。さらに、精神保健福祉法など精神保健施策の概要についても学習する。
設題1
「ライフサイクルにおける精神保健について述べなさい。」
精神保健とは、人間の精神面における健康を対象として精神障害を予防、もしくは治療し、精神的健康を保持増進させる諸活動のことを意味する。この精神保健には、広義と狭義の意味がある。まず、広義の精神保健が対象とするのは、社会の全ての構成員であって、一人ひとりが精神的不適応状態に陥ることを防ぎ、精神の健康維持を増進させるための取り組みを意味する。一方、狭義の精神保健が対象とするのは、精神障害者とされる人であり、精神障害の早期発見・早期治療による悪化の予防、リハビリテーション、福祉活動を促進することにより、精神障害者の能力を高め、活動の場を広げることで積極的な人生を可能とするための取り組みを意味する。
こうした幅広い概念を備えた精神保健の理念に至るまでには、実に多くの時間を要してきた。古くはピアーズの精神衛生運動に始まり、その後、我が国でのライシャワー刺傷事件、宇都宮病院事件などの紆余曲折を経て現在に至っているのは周知の事実である。
このように精神保健の概要を踏まえたところで、次にライフサイクルにおける精神保健について述べていく。まずライフサイクルについて述べたあと、その中のいくつを取り上げて、精神保健の重要性をまとめていく。
1.ライフサイクルにみる精神保健
精神分析理論を基礎に持つ、ライフサイクル(人生の周期)という概念を形作ったのはエリクソンであった。精神保健においては、このライフサイクルの考え方がしばしば用いられる。その理由は、精神障害の発症年齢や問題行動の発症には年齢依存性が認められるからである。もちろん精神障害や問題行動とされるものは、ライフサイクルの各段階ごとに明確に区分されるものばかりではないが、社会にはライフサイクルの各段階に概ね対応した活動の場があるため、ライフサイクル論に基づいた精神保健活動をすることは実際的であるといえる。
精神保健におけるライフサイクルの区分については諸説あるが、一般的大まかにいえば、乳幼児期・児童期、思春期、成人期、老年期に区分することができる。それぞれの段階では特有の精神障害や問題行動が存在しており、例えば、次のようなものがある。
(1)乳幼児期・児童期
毛糸・粘土などの食べられないものを一カ月以上にわたり摂食する「異食症」、対人関係形成上の困難に伴う「社会性発達の障害」、言語発達の遅れ、常同、または反復行動がみられる「早期幼児自閉症」、地震や災害、虐待などにより、子供が受ける心理的外傷である「外傷後ストレス障害(PTSD)」などがある。
(2)思春期
学生にみられる無気力状態である「スチューデント・アパシー」、人格障害の一種で、同一性確立に関わる混乱がみられる「境界性人格障害」、思春期における様々なストレスや悩みを要因として自らの命を絶つ「自殺」などがある。
(3)成人期
生真面目・几帳面といった、一般的にストレスに弱いとされる性質の人がなりやすい「うつ病」、日常的な大量の飲酒によって成る中毒状態である「アルコール依存症」、成人期における様々なストレスや悩みを要因として自らの命を絶つ「自殺」などがある。
(4)老年期
老化に伴い情動が拡大したり、逸脱した形で表出する「情動の老化」、痴呆の進行と共にみられる「徘徊・弄便」などがある。
これら精神障害や問題行動の中で、精神保健上最も重要で深刻な問題は自殺であろう。何故なら、どんな理由であれ、精神的な健康を損なうことによって人が死に至るという事態は取返しのつかないことであり、死んでしまっては援助のしようがないからである。したがって、まずはここに歯止めをかけることが精神保健における重要な問題であるとして、次に自殺を例に挙げ、精神保健の重要性について述べる。
2.自殺からみる精神保健の重要性
自殺は、乳幼児期を除き、どの段階でも起こりうるものであるが、とりわけ思春期と成人期において発生しやすい問題であるため、これらの段階を例として取り上げる。
(1)思春期の自殺について
近年、思春期の自殺が起こる理由は、社会環境が、緊急・複雑・競争的になるに伴って分かりにくくなってきている。つまり自殺の原因を必ずしも特定できないことが多いということである。
このことを象徴するのが、近年登場した「インターネット自殺」といわれるものである。これは、顔も知らない者同士がネットを通じて知り合い、外で会い、一緒に自殺することを意味するが、特徴的なのは、彼らには必ずしも強い自殺願望がある訳ではないと考えられる点である。つまり確実に自殺をするために仲間と会うというよりも「事と次第によっては、死ぬかもしれないし、死なないかもしれないが、それはそれでいいや」という感覚の、軽傷うつの状態になっていると考えられる。こうした精神状態にある思春期の若者には「生きるべき理由もなく、かといって死ぬべき理由もない」といった、無気力とも、投げやりともいえる感覚を背景に伺うことができる。
(2)成人期の自殺について
成人期は、かつてのライフサイクル論において、充実・安定した時期であるとの説明が多くなされていた。しかし社会の変化と共に、最近では成人期の自殺が増加している。
自殺の傾向としては、職場のストレスに関連したものが多い。長期に渡る経済不況は、社会の様々な分野での労働環境を悪化させており、失業率の増加やリストラという一方的な解雇など深刻化させた。ハローワークには求職者の列が増える一方で、リストラから免れた人は、サービス残業が当たり前となり、解雇の不安に脅えながら厳しい労働条件の中において健康を損なう人が増加している。これらは過労死や職場のストレスを苦にした自殺の要因といえる。
また、中間管理職であることが多い成人期には「部下は言うことを聞かず、上司は無理難題を押し付けてくる」という板挟み状態や、過労からくる社会機構の歪みのために生じた災害ともいえるような自殺も存在する。
3.まとめ
思春期・成人期の自殺を例に、精神保健の重要性を述べてきた。そこには社会構造の急激な変化(複雑・多様・早急性など)がもたらす、止むことのないプレッシャーが大きく横たわっているという特徴を伺うことができる。それは同時に、他のライフサイクルの段階においてもいえることであろう。
誰もが遅れまいとする通勤ラッシュ、仕事の締め切り、膨大なEメール、増え続ける児童虐待、陰湿化するいじめなど、現代においては、誰もが精神的な健康を損なう可能性を持っているのであり、そこに精神保健の重要性があるといえる。
このような社会において精神保健を推進していくためには、精神保健の重要性を社会全体に浸透させるための活動が求められる。未だに根強く残る精神障害者に対する偏見をなくし、さらには精神的不健康に至ったときには、適切な社会資源に繋げられるようなシステム作りをするために、(1)市町村、精神保健福祉センターなどの行政機関、(2)精神科医療施設などの精神科医療機関、(3)自助グループ、家族会などの当事者組織、これらフォーマル、インフォーマルの機関や組織が協力して精神保健に取り組んでいくことが重要である。
【参考文献】
- 社会福祉辞典編集委員会『社会福祉辞典』大月書店 2002年
- 中島恒雄『社会福祉要説』ミネルヴァ書房 2001年
- 中島恒雄『保育児童福祉要説』中央法規 2004年
- 福祉士養成講座編集委員会『新版 介護福祉士養成講座⑩/第2版 精神保健』中央法規 2003年
■■レポートを書くときのポイント■■
まず、学習のポイントに
精神保健の概要を踏まえ
とあります。
このような記述がある場合は、精神保健の概要を踏まえていることを、教員にアピールするために、精神保健に関する用語にわざとふれておくことが必要です。
例えば、
(1)〇〇という××、(2)△△という□□などがある。
といった記述です。
上記は一例ですが、当レポートでも、このような記述がなされていることがわかるかと思います。
これが、精神保健の概要を踏まえるという部分になります。
次に、教科書にあげられているライフサイクル(ライフステージ)をチェックします。
レポート本文では、教科書を参考にして、乳幼児期・児童期、思春期、成人期、老年期について記述しています。
そのうえで、精神保健の重要性をまとめるのが、このレポートの流れです。
精神保健の重要性と聞いて、まず思い浮かんだのは「人間が身体だけで生きている訳ではない」という意味での精神的な健康でした。
精神的に健康であることは大切ですからね。
では、今の社会で、精神的健康を害する要因は何かというと、いろいろ見当たります。
- 労働環境
- 格差
- いじめや
- パワハラ
- セクハラ
上記のようなことをキーワードにして情報を収集していくのが一つのコツです。
最近の時事ネタでいえば、
- 原発事故で避難していた児童がいじめを受けていた問題
- 電通の社員が過労自殺した問題
といったこともあるでしょう。
もちろん、書き手の個人的見解を織り交ぜても結構です。
続いて、
学習のポイントに
教科書にあげられているライフサイクル(ライフステージ)のいくつかを取り上げて、
との記述があるので、当然ですが、教科書を読んで確認することになります。
もし教科書の記述が分かりにくければ、他の書籍を探してライフサイクルの意味を調べたりすることも必要になります。
ここまで済んだら、レポートを書き出してみます。
最初は、文字数制限を厳密には気にしないで書き出し、後で編集によって文字数を調整してゆきます。
最終的には、文章が冗長なときは、簡潔な表現にしますし、文字数が不足気味である場合は、文章を引き延ばすこともあります。
要は、文章の意味を変えずに文を縮めたり、伸ばしたりする作業です。
これを仮に「文章の装飾作業」とよんでもいいでしょう。
この作業では、レポートの文字数制限によって削減するかしないかを決めることになります。
例えば、
周知の事実である
という一文があったとしましょう。
この文章は、あってもなくても事実報告をする目的に照らせば不要といえます。
それから、
言うまでもないが、
こういった表現も同様ですよね。
そもそも、このような文を挿入しているのは、
- 文字数を調整するため
- 格式が高いと思ってもらうための装飾
という理由によります。
傾向としては、
レポートが2000文字程度で、設題の求める回答が豊富であると、より要約的かつ、不要部分を取り除いた、かわいた文にせざるを得ませんので、結果的に、装飾は削られることになります。
一方、私の母校のように3200文字程度でレポートを書く条件となると、あれもこれもという感じで専門用語を羅列したり、装飾の文が多くなりがちになります。
文字数を満たすために、言葉を詰め込むんですよね。
学生の中には、装飾の多い文章は、恰好つけた、もったいつけた、まだるっこしい表現だと思う方もいると思います。
レポートは、本来、伝えるべきことに絞って文章を書くべきですが、何故このような書き方をするのかというと、大学の先生が書いた本自体にそのような書き方がされているからです。
要は大学の先生の本にレポートが影響されているということです。
偉い先生が書いた本には、結構無駄な文を書いている人がいるものです。誰とは言いませんが・・・・・・
例えば、
紙面の関係で詳細は割愛するが
などと書いていることがありますが、簡潔な表現で、もっと伝えたいことだけに絞れば、まだまだ紙面に余裕があるでは?
と思うような本が存在します。
つまり、
大学の先生だって、そういう書き方をしているのだから、学生が影響されるのは当然である
というのが私の考え方です。
もちろん度が過ぎない程度にということですが・・・
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