社会福祉士レポートアーカイブ(介護概論-設題1)

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設題1

「介護の意義と福祉専門職者の資質について述べなさい。」


 設題に沿って、まず介護の意義を明確にする。次いで、介護を担う福祉専門職の資質・介護活動と、専門職のこれからについてまとめていく。
 なお、文中の「福祉専門職」という用語は、主に社会福祉士・介護福祉士のことを指し、「介護専門職」という用語は、介護に従事する福祉専門職のことを指している。

1.介護の意義
⑴少子高齢社会
 日本は、1970年に高齢化社会(高齢化率が7%超の社会)となり、1994年には、高齢社会(高齢化率が14%超の社会)を迎えている。2001年現在における、日本人の平均寿命は、男が78.07歳、女が84.93歳となり、世界一の長寿国となっている。高齢化の要因は、公衆衛生・栄養状態の改善、医療技術の進歩などが考えられる。また、一方では、合計特殊出生率が下がり続けているという問題もある。2001年現在の合計特殊出生率は1.33人であり、女性の社会進出と高学歴化、価値観の多様化などが原因として考えられている。
 少子高齢化の進行が著しい日本では、これまで、家族における介護機能の弱体化や、介護を公的に支援する制度の必要性が繰り返し主張・議論され、現在の「介護保険制度」の開始に至っている。このことから、今後の日本における社会福祉は、介護が中心となることが予想される。
⑵介護の定義と意義
 介護とは何かということを考える際に手掛かりとなるのは、法律の条文のなかにある「介護」という用語である。社会福祉士及び介護福祉士法第2条の2には。次の記述がある。

 この法律において「介護福祉士」とは、第四十二条第一項の登録を受け、介護福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもって、身体上又は精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者につき入浴、排せつ、食事その他の介護を行い、並びにその者及びその介護者に対して介護に関する指導を行うことを業とする者をいう。

 この条文によると、介護とは身体や精神に障害がある人に対して、日常生活援助(入浴・排せつ・食事などの介護)を行うことであると解釈できる。もちろん介護の概念は幅広いものであり、この条文を以て介護を定義づけるのは強引かもしれないが、今日の介護保険制度や、介護の専門職である介護福祉士の重要性を考慮すれば、介護福祉士の業務としての介護を、介護の定義と捉えても特に支障があるとは考えにくい。
 前述の通り、日本は明らかに少子高齢社会である。したがって、高齢化や核家族化による家族の介護機能の弱体化などとの関連において、介護の意義があるということがいえる。

2.福祉専門職者の資質
 福祉専門職者の資質として、3つの要件を挙げることができる。これらが揃って初めて専門的介護活動が可能となる。
⑴職業倫理があること
 社会福祉士及び介護福祉士法第45条では、信用を失墜する行為が禁止され、第46条では、正当な理由なく利用者の秘密を漏らすことが禁止されている。これらの義務規定を専門職として遵守できることが、職業倫理があるということである。別言すれば、専門職として、介護を要する人の人権を尊重できるということである。
⑵専門知識・技術があること
 専門知識としては、介護に関する知識はもちろん、医療に関する知識、介護保険制度に関する知識や、社会福祉に関連する法律の知識が必要である。
 専門技術については、身体介護の技術はもちろん、意思疎通を図り、介護を要する人と信頼関係を築くことができるコミュニケーション技術、個別的介護計画を立案する技術、観察技術、記録する技術、他職種との連携を図る技術など多様なものが求められる。
 これら専門知識と技術は、個別のものとしてより、連動して機能する場合が多い。例えば、在宅介護において福祉専門職が医療専門職と連携をとる際に、技術としてのコミュニケーション能力だけに長けていても、医療に関する知識が不足していれば、利用者の病状説明などができず、結果的に十分な連携をとることができないといったことである。
⑶専門職に適した人間性があること
 具体的には、①感性豊かである、②人の心を共感的に理解できる、③洞察力がある、④客観的判断ができる、⑤向上心があり自己研鑽に努めている、⑥柔軟性があることなどである。これらの要素は、生得的である場合が多いが、訓練や技術の習得によって、ある程度向上させることが可能である。

3.介護活動の展開について
 福祉専門職として資質のある者が実施する介護活動には、2つの活動相がある。
⑴人権の具現者としての活動相(倫理性に関連した活動)
 福祉専門職者は、人権・人間の尊厳という価値の実現を目標にしている。したがって専門職は、この目標に焦点をあてて、日々利用者と接し、活動している。
 例えば、在宅介護の場面において失禁して、気まずい思いをしている利用者が居たとしよう。この場合、福祉専門職者は、利用者に対して
「面倒なことをしてくれた」という態度で接するのではなく「ただいま替えの下着を持ってまいります」というように、適切で温かい声かけと、受容的態度を示すのである。これが第一の活動相である。つまり、福祉専門職の、利用者に対する倫理的な関わり方に関する活動相である。
⑵介護の問題解決過程の活動相(知識に基づく技術の適用に関連した活動)
 介護専門職が立てる介護サービスの計画を「個別援助計画(介護計画)」という。これはどのようにサービスするかというサービス内容の方法に関する実際的計画のことである。
 一方、介護支援専門員が立てる「介護サービス計画」とは、どのようなニーズの充足を目指し、サービスをどの程度提供するかというサービスパッケージの計画であり、両者を区別して考えなければならない。
 介護の問題解決過程は、ケアマネジメントの過程における「介護サービス計画」が完成した段階で、介護専門職によって始められるものである。介護の問題解決過程の活動とは、要するに介護を必要としている人と、その家族が抱える問題に対して、具体的で詳細な介護計画を立て、実施・評価・再検討する過程である。介護をより個別的に実施するためには、介護専門職が、専門知識・技術に基づき、計画を立てていく活動が欠かせない。
 なお、上記2つの活動相は、介護保険制度に則った在宅介護での話であるが、社会福祉施設や医療施設などでも、同種の活動相が展開されるものと考えられる。

4.まとめ
 これからの福祉専門職は、専門性を有することが必須条件となるだろう。何故ならば福祉専門職は、文字通り福祉の専門職だからである。そして専門性とは、社会福祉士及び介護福祉士法第1条である「社会福祉の増進に寄与する」という目的を達成するものでなければならない筈である。そのように考えると、福祉専門職の専門性と資質はイコールで結ばれることに気づく。すなわち、⑴職業倫理、⑵専門知識・技術、⑶専門職に適した人間性を具えているということが福祉専門職の専門性であり、資質であるということになる。

【参考文献】

  • 福祉士養成講座編集委員会『社会福祉士養成講座⑭介護概論 第2版』中央法規出版 2003年
  • 福祉士養成講座編集委員会『介護福祉士養成講座⑪介護概論 第2版』中央法規出版 2003年
  • 福祉士養成講座編集委員会『社会福祉士養成講座②老人福祉論 第2版』中央法規出版 2003年
  • ミネルヴァ書房編集部『社会福祉小六法』ミネルヴァ書房 2002年

社会福祉士レポート課題にコメント


「介護概論」は従前の社会福祉士養成カリキュラムに存在した科目です。
今の養成カリキュラムでは廃止されている科目となります。
原文を編集せずにそのまま掲載していますので、一部法令や制度の解説は古い内容のままとなっています。
レポートの「書き方」について参考にしていただければと思います。

設題内容は、深いテーマではありますが、どちらかというと大学1年生向けに書かせるような内容となっています。
介護の意義とか、福祉専門職の資質について書こうとすると、とかく「介護」「福祉」という言葉のイメージにつられた感傷的、理想論的な文章になりがちです。
実際、上記のレポートは、理数系の大学生が書くレポートから比べると、感想文のような印象を受けるかも知れません。
それくらい文系のレポートは、もっといえば福祉のレポートは、感傷的・理想論的なものが多いということです。

私が書いた上記のレポートでも、御多分に漏れず、あつくて、くさいことが書いてあるのが分かると思います。
今、改めて読み返してみると、笑ってしまうのですが、これが社会福祉士のレポートの実態です。

よく、
レポートは科学的でなくてはならない
という人がいます。

それはそれで正しい意見です。
特に、文体については「である調」で書くことにより、客観性を出す必要はあります。

  • なんてひどいことをする人たちなんでしょう
  • この状況をみてかわいそうだとおもわないのかしら

のように、
小説のような会話調で文を進めるのは不可です。

でも、すべての設題に対して、根拠を提示し、かつ科学的な意見を述べることは、書こうとすると気付きますが、非常に難しいのが福祉のレポートです。

なので過剰な心配は不要です。

評価票

画像をみて分かるように、私はこのレポートでA評価をもらっています。

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