社会福祉士レポートアーカイブ(障害者福祉論-設題2)

障害者福祉

過去レポート保存庫

実際のレポート作成例をここに提示します。
表題の科目名は、大学によっては異なる名称かもしれませんが、障害者福祉は社会福祉士課程をとっている学生の必須科目です。
なお、レポート作成例は、私が学生時代に書いたレポートを再編集したものです。

設題2

「我が国における障害者雇用対策の現状と課題についてまとめ、あなたの考えを述べなさい。」

 障害者の就労形態には、企業における一般雇用や、授産施設などにおける福祉的就労、さらには小規模作業所における作業活動などがある。障害者はそれぞれ、自らの障害の程度や適正に応じて就労することになるが、そこには大きな壁が立ちはだかっている。本設題では、まず障害者雇用対策の現状と課題についてまとめ、今後の障害者福祉施策の在り方につて考察をする。

1.障害者雇用対策の現状
 日本の障害者雇用対策は、1960年に制定された「身体障害者雇用促進法」が基になっている。国・地方自治体や民間企業等に対して、一定の割合で身体障害者の雇用を義務付け、障害者の雇用促進を意図したこの法律には、2つの問題があった。1つは、障害者の雇用が事業主の努力義務でしかなかったという問題と、もう1つは、法律の対象が身体障害者に限られていたという問題である。
 これらの反省から、1976年の法改正では、身体障害者の雇用が努力義務から法的義務となり、さらに1987年以降の改正では、同法の対象者を身体障害のみならず、知的障害、さらには精神障害者にまで範囲を広げる改正が行われた。名称は「障害者の雇用の促進等に関する法律」に改称された。
 この「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づく、現在の障害者雇用制度の特徴は、以下の3点にまとめることができる。
①義務雇用制度
 事業主は、雇用において、法律に定める一定の割合で障害者の雇用をしなければならない。これを雇用率制度といい、雇用における障害者の占める割合を障害者雇用率という。雇用率を計算する際には、重度の身体・知的障害者の割合は、1人を2人分としてカウントする。雇用率の割合については、民間企業(常用労働者数50人以上の規模)の場合2.0%とされている。国・地方公共団体と、特殊法人については2.3%、都道府県等の教育委員会は2.2%となっている。なお法定雇用率は、5年ごとに見直される。
②障害者雇用納付金制度
 事業主が障害者を雇用するにあたっては、環境整備などで経済的負担が生じる。そのため、障害者の法定雇用率を達成していない事業主から納付金を徴収し、それを財源として、法定雇用率を超えて障害者を雇用している事業主に対して、調整金・報奨金を支給するのがこの制度である。
 納付金額は法定雇用率の不足人員分1人につき月額5万円とされるが、常用労働者数が100人を超える企業が対象となっている。調整金は、常時雇用する労働者数が200人を超え、雇用障害者数が、法定雇用障害者数を超えている事業主に対し、申請に基づき1人当たり月額27,000円支給される。報奨金は、常時雇用する労働者数が200人以下で、雇用障害者数が一定数を超えている事業主に対し、申請に基づき1人当たり月額21,000円支給される。
③企業名公表・勧告
 雇用の促進が望まれない事業主に対して、行政が企業名を公表するという制度である。また「適正実施の勧告」「雇い入れ計画の作成命令」などの勧告を出すこともできる。

2.障害者雇用対策の課題
「障害者の雇用の促進等に関する法律」第5条は、次の記述がある。

すべて事業主は、障害者の雇用に関し、社会連帯の理念に基づき、障害者である労働者が有為な職業人として自立しようとする努力に対して協力する責務を有するものであって、その有する能力を正当に評価し、適当な雇用の場を与えるとともに適正な雇用管理を行うことにより、その雇用の安定を図るように努めなければならない。

 ここでいう「障害者」とは、同法第2条第1項にある用語の定義によって、精神障害も含めた全ての障害者を対象としていると解釈できる。ところが精神障害者に対しては、雇用義務が課されていないこと(2018年より義務化予定)や、重度障害者の雇用に対する対策が不十分という実態がある。これらを勘案すると、今後の障害者雇用対策の課題として、以下の2点が指摘できる。

  • 重度障害者の雇用促進に対する具体策を提示し、実質的な雇用を促進させること。
  • 精神障害者の雇用に対しても、雇用の義務化を確実に実施し、雇用率を上昇させること。

3.今後の障害者福祉施策の在り方
 ここ数年間の障害福祉関係の法律は、改正が急ピッチで進んでいる。例えば、障害者基本法の第3条第1項には、

すべて障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他のあらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること。

という表現がある。「参加する機会が確保される」という表現に当事者目線の一端が現れている。さらに、制度面でいうと、義務雇用率の上昇や、納付金制度における対象企業の拡充、そして精神障害者に対する義務雇用の改正などがあり、整備が進んでいる。
 今後は、実態としての障害者雇用をさらに推進していくことが必要である。障害者の雇用は増えてきているが、必ずしも労働における質の向上には貢献していない実情がある。仮に事業主が義務感から障害者の雇用に取り組んだとしたら、その企業には障害者の能力を活用するノウハウは蓄積されないだろう。特に重度障害者に対する雇用はこれが当てはまる。結果的に障害者を特別扱いし、雇用された障害者は給料だけはもらえても仕事はないという状況が生まれるかも知れない。こうした事態を起こさないためには、障害者福祉施策の制度を検討する段階において、当事者である障害者が参加することが大切である。


参考文献

  1. ミネルヴァ書房編集部「社会福祉省六法2015[平成27年版]」中央法規出版 2015
  2. 山本誠・星野政明・増田樹郎「障害者福祉論」黎明書房 2001年

社会福祉士からのコメント
 障害者福祉制度は、ここ数年で頻繁に改正されています。教科書の版が古いと、間違った数値を書いてしまうこともあるでしょう。
 でも、必要以上に細かい数値にこだわるよりも、ある程度のまとまりと、自身の意見が論理的に出ている文章にすることが大切です。
 もちろん最新の情報を知っていることをアピールしたいのであれば、厚生労働省のサイトで確認したりすることも有効ですのでサイトをのぞいてみる価値はあるでしょう。

コメントは受け付けていません。

サブコンテンツ

このページの先頭へ