社会福祉士レポート実例(社会福祉入門)

戦後の社会福祉

社会福祉士のレポート作成にお悩みの方へ

実際のレポート作成例をここに提示します。
表題の科目名は、大学によっては存在しなかもしれませんが、福祉系の学生が初期に履修する科目には必ずある福祉入門系科目です。
一般大学卒者で、養成校で履修している人であっても、以下のような設題のレポートを書く機会はあるかも知れません。参考にしてみてください。

設題

「社会福祉士・介護福祉士が誕生した背景について整理し、これからの社会福祉専門職には何が必要かを述べなさい。」

 我が国では、明治以降、家制度が存在していた。家族主義思想により独自の救貧法である「恤救規則(1874年 太政官達162号)の考え方を長らく引き継いだ結果、家族の自助努力・相互扶助を以て良しとする考え方が根強く残っていた。当然、介護も家族が中心となって行われてきた経緯があり、介護技術を体系的に習得した人が介護をする状況は無かった。「誰でもできる」などと、介護を軽く見る風潮さえ存在し、専門知識が必要で、かつ過酷なストレスを伴う労働であることが広く一般社会には伝わらずにいた。
 ところが、1963年(昭和38年)に老人福祉法が制定されると、特別養護老人ホームが設立されるようになる。日常的に介護が必要な人を措置によって入所させる特別養護老人ホームには「寮母」という名称の職種が存在した。それが現在でいう職業的介護職員の本格的な始まりである。
 その後、日本の高齢化率は、世界に類をみない速さで進んでいくことになる。1970年(昭和45年)には、高齢化率は7%を超えた。その24年後の1994年(平成6年)には14%までに達した。
 こうした社会的背景により、高齢者の増加した日本は、介護に対する専門的技術の要請が高まりを見せた。そして、社会福祉士及び介護福祉士法(昭和62年5月26日法律第30号)は無事制定され、ここに日本発の社会福祉専門職である介護福祉士の国家資格が誕生することとなる。
 一方、社会福祉士はについては、その前身ともいえる社会福祉主事任用資格にその歴史的起源がある。1951年(昭和26年)の社会福祉法における「社会福祉主事の設置に関する法律」の制定により、実質的なソーシャルワーカーとして活躍してきた経緯がある。
 しかし、体系的に社会福祉を学んでいない者が社会福祉主事として任用されたりと、その任用基準は人格の高潔さや思慮の円熟といった面が強調され、専門職としての在り方は、どちらかというと二の次で、公務員であることの方に重きが置かれた。
 もっとも、当時は戦後処理体制の混乱の中、社会福祉を学ぶ機関そのものが多くはなかったし、GHQの指揮のもと、早急に制定されれた制度だったこともあり、不備な点があるのもやむを得なかったといえる。当時の社会福祉主事が担っていた福祉は、税を原資とする困窮者に対する援助という側面が強かった。現在でいう生活保護のケースワーカーの仕事が、それに該当する。メアリー・リッチモンド(Mary Richmond、1861年8月5日 – 1928年)による慈善からソーシャルワークへの道を切り開く活動は知られてはいたが、それは戦後間もない日本の社会福祉主事が行う公的なケースワーカーの仕事とは程遠いものであった。
 戦後の日本は、その後、高度経済成長の過程、日本の高齢化の進展、さらにはバブル経済の破綻、デフレ、大震災を経験してきた。しかし、同時に山積する社会問題も多く露呈した。戦後が終わり、社会問題が複雑化していくと、福祉社会の実現、ひいてはソーシャルワークの必要性が、これまで以上に理解されることとなり、介護福祉士と共に専門職としての国家資格である社会福祉士の資格制定の運びとなったのである。
 社会福祉士、介護福祉士の両資格の制度化されたことは、社会福祉専門職の身分が確定されたことを意味し、そこで生じた意義は大きい。
 例えば、福祉制度やサービス利用者にとって専門職の存在が分かりやすくなるという意義がある。資格証明書は、専門的技能の証明である。
 近年は、介護福祉士の名称は、日々のニュースで取り上げられるほど、一般社会における認知度は高い。介護業界に関していえば、介護福祉士の資格が専門職としての証明になっているといっても差し支えない。
 また、社会福祉士に関しては、介護福祉士ほどではないが、その名称の認知度は、後見人制度の影響もあって確実に浸透してきている。
 社会福祉専門職が、資格化するだけでなく、いわば視覚化することによって、活躍の場が広がりをみせている。
 ソーシャルワークをひとつとっても、現在は、スクールソーシャルワークであったり、成年後見人業務であったり、地域包括ケアの相談員であったりと確実に専門職の裾野は広がっている。年々、有資格者は増加傾向にあることも裾野を広げている要員の一つだ。
 では、ここまで社会福祉士・介護福祉士が誕生した背景について整理したところで、これからの社会福祉専門職には何が必要であるかについて述べる。
 実は、両資格の根拠となっている法律である「社会福祉士及び介護福祉士法」には第1条に次の記述がある。

「この法律は、社会福祉士及び介護福祉士の資格を定めて、その業務の適正を図り、もつて社会福祉の増進に寄与することを目的とする。」

 つまり、社会福祉士と介護福祉士に求められるのは、福祉の増進に寄与するものすべてということになる。同時に、これが社会福祉士、介護福祉士が誕生した意義でもある。
 現在の社会福祉の課題は、生活保護費の支給などの単なる経済的支援の必要性だけでなく、少子高齢化、少年犯罪の増加、不登校、認知症による判断力の低下による成年後見の必要性、刑務所からの刑期を終えた者の出所後の支援、介護問題など多様な社会問題が山積している。
 いずれにしても、これからの社会福祉専門職には、その時々の社会福祉課題に対応した取り組みが必要とされているだろう。

参考文献
1.一番ケ瀬康子「介護福祉士これでいいか」ミネルヴァ書房 1998年
2.ミネルヴァ書房編集部「社会福祉省六法」ミネルヴァ書房 2002年
3.”ウィキペディア”. 恤救規則. 社会福祉士及び介護福祉士法.リッチモンド https://ja.wikipedia.org/wiki/(参照 2016-3-7)

社会福祉士からのコメント
レポートは、章立てて文章を書いた方がすっきりして読みやすいという意見がありますが、上記のように、章立てないで書く方がいいケースもあります。
例えば、具体例をあまり列挙できない場合です。具体的な項目が1つか2つしかないのに、章立てて、番号を振ってもバランスが悪いです。
それと、レポートの字数制限によっては、あまり多く章立ててしまうと、字数をオーバーすることになりがちです。
自分が書こうとする文章のバランスを考えて選択しましょう。


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