社会福祉士レポート実例(心理学研究法-設題2)

心理学研究法

社会福祉士のレポート作成にお悩みの方へ

実際のレポート作成例をここに提示します。
 この科目は、社会福祉士資格と同時に、認定心理士のコースをとっている学生ならば必修の科目となっております。
 心理学の研究法を学ぶ専門的科目であり、難易度の高い科目の一つです。

ポイント(学習ガイドより)

 心理学をはじめとする人間科学の研究法として、観察法、実験法がある。それぞれの方法の特徴や問題点、準備・実施上の留意点などについてまとめること。

科目概要(学習ガイドより)

 心理学の主要な内容とも言える感覚・知覚・学習・認知・人格・社会について、実験・調査などの研究方法を学ぶ。一般的に心理学の研究では何のために研究するのか研究の目的をはっきりさせ、その方法を考え、その結果を分析していく。本科目では、それらの技能を身につけさせていくことを主要な目的としている。また、結果の分析にあたっては、統計学の知識、コンピュータリテラシーも必要であり、その習得も併せて目指す。さらに、それらの研究法に内在する問題点も検討する。

設題2

「心理学の研究法のうち、観察法と実験法について述べなさい。」

 心理学の研究法としての観点から、観察法と実験法について以下に述べていく。

1.観察法について
 観察法は、観察対象者と直接的に接触し、行動・言語的なやりとりを、主に視覚的に観察・記録するものである。目に入ってきた情報を漠然と受動的に捉えるのではなく、目的を絞り込んだ上で、観察対象に関わる情報を能動的に捉え、その情報を体系的に整理・分析し記録するところに特徴がある。
 観察には、観察室などに半透視鏡やカメラを設置することで、観察者が観察対象者にその存在を知られずに、観察対象者の自然な行動を観察することを可能にする方法がある。これは観察者と観察対象者が関わりを持たないという点から「非交流的非参加観察」といわれている。児童の遊戯行動を観察する場合などに用いられる。
 また、逆に観察者が、観察対象者に身をさらして観察を行う方法もある。観察者と観察対象者が関わりを持つという点から「交流的参加観察」といわれている。観察対象者の日常的な相互交渉のある自然な状況で行われる「参与的フィールド研究」などがある。
 このように、観察法においては観察者と観察対象者の関わりの有無が観察結果に影響を及ぼすために重要であるが、それぞれに問題が存在している。
 例えば、マジックミラーや隠しカメラなどを用いた非交流的非参加観察では、倫理的な問題がある。観察対象者の立場に立ったとき、場合によってはプライバシーを侵害する恐れのあるような観察は、いくら研究のためとはいえ容認され得ない。容認される範囲の観察であっても、観察者は観察対象者に対して最大の配慮をすべきである。プライバシー保護を確約したり、可能な限り(実験そのものが成り立つ範囲内)でインフォームドコンセントなどを実施することが必要である。
 一方、交流的参加観察においては、観察者の存在が観察対象者の行動に少なからず影響を及ぼしてしまうという問題がある。観察者は準備段階において、観察対象者との間にラポールの形成をはかり、観察者の役割を説明し、了解を得る。そして観察者の存在による不自然・違和感を最小限にするために、可能な限りにおいて傍観的態度をとるようにする。
 しかしあらゆる手段を講じても、観察対象者にとって観察者は、完全な無色透明の存在ではない。そのため、このデメリットを利用して、むしろ観察者と観察対象者が自然に関わることによって「当事者にとっての生きた意味」を捉え、記述しようとする方法もある。
 ただしこの方法は、現象の記述が恣意的になりやすかったり、光背効果(観察対象に好ましい特徴があると、それとは独立のはずの他の行動にも相対的に好意的な見方をしてしまうこと)や、寛大効果(日頃からよく見知った対象には有利・過大な評価をしてしまうこと)が引き起こされやすいため、実施において観察者は注意を要する。
 観察を実施する上では、観察者の主観や思い込みが記述に影響を及ぼすことが多い。そのため観察者には、先行研究を参照するなどして、記述や符号化の基準やカテゴリーの定義を明確にしたり、同一データに対する二人の観察者の分類や評定の一致率を算出するなどしてデータの客観性を一定以上に維持することが求められる。重要なことは、他の観察者が観察を実施して同様の結果が出るようにしておくということである。

2.実験法について
 実験法は、実験者に対して積極的に働きかけてデータを収集するものである。自然な状況では統御が難しい変数を意図的に操作するところにその特徴がある。「ある行動がなぜ生じたか」という因果関係に関する仮説を検討する手段の一つであるといえる。
 因果関係の原因と推定した変数を「独立変数」、原因の結果と推定する変数を「従属変数」、独立変数と従属変数の間にある他の変数を「剰余変数」という。実験においては、独立変数を、どう操作したかがポイントとなる。原因とされる独立変数を操作すれば従属変数もそれに合わせて変化する。これが実験の基本的なロジックである。実験は因果関係を見極める上で強力な方法である。
 実験における主要な方法としては「実験室実験」がある。大学などの研究機関で、学生を対象として行われることが多い。これにはいくつかの問題点が指摘されている。
 例えば、実験室が現実の場面ではないため、現実性に乏しく、被験者の行動が普段の行動と、かけ離れたものになりやすいという問題がある。しかし、実験室実験が実験室での実験である以上、現実と全く同様の場面を構成できないのは自明である。むしろ、仮説検証のために要する理論的要素が再現されていない場合に問題があるといえる。
 また、実験に参加できる人しか被験者にできず、その多くは大学生であることから、データの外的妥当性における問題もある。実験の参加者の中には、実験に対して協力的で課題を与えると必死に達成しようとする傾向があったり、あるいは実験心理学に詳しい学生などの場合には、実験の意図を読み取ろうとして、普段とは逆の行動をとることも考えられる。この問題は、実験者が被験者の特性を変数として組み込んだ実験を考えることで、ある程度カバーできるが、経験の少ない実験者には困難である場合が多い。
 それから、倫理的な問題もある。例えば、実験法においては、被験者に偽りの情報を教示する「ディセプション」を行ったり、被験者に対してストレス・苦痛を与えることがあるが、研究のためとはいえ、こうしたことが倫理的に許されるのかという問題である。これは心理学に特有の問題であり、実験者には「ディブリーフィング」によって被験者のストレス・苦痛を取り除くことや、実験の実施にあたって十分な準備をしておくことで、被験者のリスクを必要限度内に抑えることが求められる。
 実験の準備においては、⑴仮説を検証するための独立変数は何かを推定し、従属変数の測定方法や、剰余変数の可能性などを考察することから始まり、⑵実際の実験場面を想定した台本作り、⑶リハーサルの実施、⑷実験に使用する機器の操作方法の確認、⑸被験者への教示を分かりやすくするための説明用カードの作成など、細かく地味な作業を積み上げていくことが大切である。
 そして、実験の実施にあたっては、リハーサル通りの手続きで進行するのが原則である。しかし被験者の実験に対する理解度や予期せぬ事態を無視した、あまりに機械的で柔軟性を欠いた対応は失敗を招くので注意を要する。実験者は被験者の心理的等価性を考慮した対応をとることが必要である。その他、データの分析に際しては、剰余変数の統制に留意する。なぜなら独立変数と従属変数に相関関係が見られただけでは、別の因果的説明を排除したことにはならないからである。

3.まとめ
 観察法と実験法の相違点は、原因と思われる変数の操作をするかしないかにある。その点で観察法は実験法と異なり、相関関係を知ることはできても因果関係までは分からない。しかし、これは実験法が観察法より優れていることを意味しない。実験は制約が多い上に、倫理上の問題があって、実際には変数操作ができないことが多い反面、観察法は個人のプライバシーを侵害する方法をとらない限り、倫理上の問題は比較的少ないからである。両者の長所と短所は表裏一体であり、研究者には、場面に応じて実験法と観察法を組み合わせていく力が求められるといえよう。

【参考文献】

  • 高野陽太郎、岡隆編著『心理学研究法-心を見つめる科学のまなざし』有斐閣 2004年
  • 高橋順一、渡辺文夫、大渕憲一編著『人間科学のための研究法ハンドブック』ナカニシヤ出版、2001年
  • 続有垣、苧阪良二編著『心理学研究法 第10巻 観察』東京大学出版会 1983年



■■心理学研究法のレポートを書くときに注意すること■■

設題1に続いて、設題2においても、多くの専門用語の解説を要求するレポート課題となっています。

なので、

レポートを、序論・本論・結論に分類したときに、

序論→10%
本論→70%前後(序論・結論を除いた割合)
結論→20%

ぐらいを目安に文章量を調整するのを基本にします。

しかし、本設題のように解説事項が多いレポートでは、この割合を少し緩めて、

序論→3%
本論→87%前後(序論・結論を除いた割合)
結論→10%

ぐらいを目安に文章量を調整してもよいでしょう。

ところで私は冒頭で、

この科目は難易度が高いと言いました

実際、このレポートを書いてみて、実験法については、指定された教科書の該当部分をよく読むことはもちろん、参考文献も何冊かはあたってみることの必要性を強く感じました。

なぜならば、一般的に学生は、心理実験の経験がありませんので、文献に記載されている、過去に行われた実験例を参考にするしかないのがほとんどだからです。

ちなみに、心理学研究法に類似した科目に心理学基礎実験があります。

すでに、こうした実験心理学の科目を履修している場合は、その知識を使えますし、その教科書も利用できます。

これは:心理学基礎実験の指定教科書です。

履修順序としては、この「心理学基礎実験」を先に習得しておくほうが効率的です。もしくは同時並行で履修を進めていくことです。

心理学基礎実験の指定テキストには、過去に行われた心理学の実験が豊富に掲載されていますので、図書館で借りるか、購入してみるとレポートの素材として参考にできると思います。

以前にレポート実例を提示していますので参考にしたい方はこちらをどうぞ

心理学基礎実験 設題1

心理学基礎実験 設題2

最後に、

引用文献の記載方法について一口メモです

日本心理学会のHPには、引用文献の仕方として、次の記載例を紹介しています。

角辻 豊(1978).情動の表出 金子仁郎・菱川康夫・志水 彰(編)精神生理学 IV 情動の生理学 金原出版 pp.196-209.
(Sumitsuji, Y.)

日本心理学会のHPより引用

これを見ると、

最初に著者がきて、次に出版年を括弧閉じする、そして本のタイトルが示され、最後に出版社の名称、最後に参考頁

という順番で記述してあります。

心理学ワールド

これは日本心理学会が出している書籍です(非売品)。

この本に書かれている引用文献の例をみると、やはり上記の法則にしたがって記されているのが分かるかと思います。

引用文献の例

日本心理学会編(2011).『心理学ワールド』社団法人日本心理学会 173頁より

このように、学問によって引用の方法が微妙に異なることもありますので、気になる場合は、レポートの参考文献を記載するときに、この日本心理学会の方法を採用してもよいと思います。

まあ、引用方法が心理学の方法でないからといって、それを理由に減点にしたり、落第点をつける教員は少ないとはおもいますが・・・

心理学研究法の評価票

これは、今回のレポートの評価票です。
高評価ではありましたが、

  • 見出しを細かくつけた方がよい
  • 論点を明確に示す

という添削が返ってきました。
指摘されたことには素直に従いたいと思います。
しかし、別の教員が添削したら、また異なった添削になったのだろうと思われます。
これが通信教育の難しいところです。

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