引きこもり支援ビジネスを勧めない理由
全国で50万人以上といわれる、大人の引きこもりが社会問題になっています。
といっても、実際に困っているのは、引きこもりの本人とその家族です。
特に、高齢化した引きこもり者の親は、金銭的な負担もさることながら、我が子への対応に困っています。
その結果、どうするかというと、
「引きこもり支援ビジネスに問題解決を依頼する」
ということになります。
ある自立支援施設では、利用者に対して
- アパートの一室に監禁する
- 一日一食しか与えない
- 暴力をふるう
といった問題を起こしていました。
引きこもり者の親から依頼を受けて、支援ビジネスの業者は、引きこもり者を自宅から連れ出して、自立支援施設に入所させます。
その施設で職業訓練的なことをさせたり、生活態度を改めさせるなどの支援をしてお金をもらうという仕組みです。
悪質な業者の場合、支援に該当するようなことはせず、ただ施設の部屋に閉じ込めているだけといったこともあります。
このようなやり方で、自立支援はうまくいきません。
ここでの自立という言葉は
「仕事に就いて自活すること」
になります。
ですが、社会に出て働くのは、引きこもり者本人であって、自立支援業者ではありません。
強制的な支援をすればするほど反発をうけます。
しかし、業者としては形だけでも支援をしていることにしないと、代金をもらえないので、なんとか引きこもり者を強制的に抱え込もうとするわけです。
逃げられたら終わりですからね。
だから、監禁だとか、食べ物を与えないとかいうことをしだすのです。
さいわい上記のような明らかな違法行為のある悪質な業者は、まだ少数です。
しかし、効果の疑われるような支援を実施して、高額な経費を請求するケースがあります。
例えば、英会話の学習と称して海外に行って、かかった費用を請求しておきながら、英会話は実際行われず、洋画のDVDをわたしただけといったケースがありました。
引きこもり者本人が納得のうえ、施設に入寮し、共同生活さを送りながら自立を目指せるケースもありますが、その場合でも慈善事業ではないので費用は発生します。
大人一人の生活費と支援にかかる費用を計算すると、月にして20万円くらいは必要となります。
これが高いか安いかは、引きこもり者が最終的に自立できるかどうかにかかってきますが、高齢者が有料老人ホームに入ったって、このくらいはかかりますので高くも安くもないといったところでしょう。
いずれにしても、業者の最終目的が利益を出すことにある限り、コストは発生しますし、高額な費用を負担したとしても効果が保証できないわけですから、業者への引きこもり支援は依頼しないほうが間違いがありません。
業者の宣伝文句として、
- 社会復帰させます
- 就職できます
- 苦痛から解放されます
といったものを見受けます。
こうした「なんでもできます系」の宣伝文句が並んでいたら要注意です。
そんな甘い言葉につられないでください。
では、引きこもりの子供を抱えて悩んでいる親は、どうすればいいのか?
というと、
「公的な制度を理由する」ことが第一歩です。
例えば、
都道府県、指定都市に設置されている「ひきこもり地域支援センター(ひきこもりに特化した専門的な第一次相談窓口としての機能を有する)」などに連絡するのが具体的な方策になります。
こうしたところに相談することによって、次にどこに、どういう支援を受ければいいのかが見えてきます。
公的な支援の場合は、何百万もの費用を請求されることはないので、費用面は安心です。
たとえば、社会福祉協議会が実施しているような中間的就労(ごく簡単な作業をして安い工賃をもらえる福祉と労働の中間的なもの)を利用するという方法があるので検討の余地はあります。
ただし、引きこもり者本人が相談機関に出向くことをこばみ、極端な場合、自宅に立てこもっているような場合、短期での支援は難しくなってきます。
なぜならば、
引きこもりの問題というのは、結局のところ本人と家族が一体となって変わっていく努力をコツコツ続けていくしかないからです。
親も、子供も相手を変えようという努力ではなく、自分自身を変えようという努力が必要です。
公的な支援の役割は、その努力をサポートすることでしかないのです。
くれぐれも、お金を払って他人になんとかしてもらおうという安易な方法には期待しないほうがいいのです。
このように言ってしまうと、身もふたもないですが、究極、相手のことを、他人の力をもってしてねじ曲げようなんて、土台無理な話です。