刑務所の高齢化問題

行き場のない高齢者

高齢化の問題って広くて深いんです。

あまり、大きな声ではいえないが、福祉の一面をはっきりいってしまうと、

社会システムから落ちこぼれた人を税金によって救済するもの


だと思うんです。

それを象徴するのが、高齢受刑者の実態である。


今、刑務所は、福祉施設のような状態になっている。

法務省の犯罪白書(平成26年版)によると、高齢者の再犯率は7割を超えている
5人に1人は2年以内に再び刑務所へ戻ってくる。

犯罪の種別については、窃盗や詐欺といったものが多くなっている。
スーパーで万引きをしたり、タクシーの乗車賃を未払いにするといったことです。

なぜ高齢者は犯罪を繰り返すのか?

高齢者が凶悪化したなんてことはありません。
背景には、貧困や核家族化などの問題がからまっています。

最近増えているのが「行き場がないから」という理由である。

利用料ゼロ、看護師常駐の医療保証付き、三食寝泊り付きの福祉施設。

一度でも刑務所に入ったことのある高齢者は、その事実を知ってしまう。
もちろん、それがベストとは思っていない。

社会にいても生活できないから、仕方がなく犯罪を犯して刑務所に戻ろうとする。

刑務所というと、苦役にさらされ、地獄のような生活を強いられるかというと、現代では、そんなことはない。

というか高齢者に対して、苦役なんて強いることは無理があります。
車いすや、杖つきの高齢者に何をさせられるかって話です。

疾病などがある高齢者の場合については、刑務作業すら軽減されている状態である。

認知症の症状が悪化している人は、もはや刑務作業どころではないので、症状に適した免除対応になる。
受刑者の指導どころではないケースもある。

かつてない高齢化が、刑務所に生じていることを皆は知らない。

刑務所の療施設では、病気に配慮した減塩食であったり、きざみの食事が提供されている。

受刑者だからといって病気に配慮せず、すべて同じ食事(くさい飯)をとるなんてのは、テレビドラマの話である。

ここにいる職員は、刑務官である。

刑務官は准看護師の資格をとっており、職員は全員公務員である。

専門的な医療が必要な場合は、外部の医療機関に行くこともある。

受刑者だからといって、命に関わる治療が受けられないなんてことはなく、保険適用外の医療として提供される。

身寄りがない。一人で生活できない。家族から見放されている。どうしたら生きていけるかわからない・・・・・・

そんな時は、万引きなど、人を傷つけない程度の犯罪を犯すことで、刑務所に入所できるようになってしまっている。

本来の刑務所の役割としては、パーフェクトに間違っているのであるが、実態としては、最後の受け皿としての役割を果たしている。

衣食住という意味において、

  • 刑務所は生活に困らない
  • 刑務所の費用は、負担金なし
  • 医療は保証されている

これらは、税によって賄われています。

では、刑務所は楽園かというと、決してそうとはいえない。

例えば、

  • 人権の一部が制限されることがあるので、外部の医療機関に搬送される際などは、手錠をされることがある。
  • 刑務官の受刑者に対する声かけは、指導であるので、命令口調になる。
  • 名前ではなく番号で呼ばれる。
  • たばこや酒などの嗜好品は好品は制限される。

受刑者である以上、上記の点は我慢しなくてはならない。


でも、逆に言えば、これらさえ我慢してしまえば、もしくは気にならなくなれば、あとは生活が安定します。

もちろん、心の安定はそこにはない。特に罪を認識できる人はなおさらです。

刑務所暮らしなんて誰だって望まないですからね。
成人後期における心理社会的危機の状態にあるのが普通です。

今、介護報酬が減額され、介護職の賃金が上がらず、介護人材の流出が止まりまぜん。


老人施設が足らず、介護離職が増え、医療費は膨らみ続けています。
予算をどうすればいいのか四苦八苦している裏で、最後の受け皿としての刑事施設がある。

投入されている税金の額は多額です。
例えば、刑務官は全員公務員で、身分が保証されています。
時給1000円のバイト職員なんていない。


人件費だけでも大変な額です。

刑務官は、准看護師の資格を公費で取得します。介護的業務も行います。

ここでは、介護職の低賃金問題は存在しない。医療行為のできる、ある意味最強の介護士が揃っているともいえる。

民間の介護施設が同様の条件であったなら、介護人材の不足はなくなるだろう。

職場で準看の資格を取らせてもらえるというのも実は画期的なアイデアであるが、民間ではありえない。

もちろん現場の刑務官の職務はハードで、潤沢な人員でやっているわけではない。
入所施設なので勤務も不規則である。楽な仕事でないのは当然である。
受刑者が多くて、収容スペースが足りないという問題もある。

調べれば調べるほど、刑務所の福祉的公共性は、民間ではありえないほど高い。

もうひとつ、刑務所のスーパー福祉施設ぶりを示す一例を示そう。

社会復帰もできない、身寄りもない、家族から見放されている受刑者は、最終的に亡くなります。

するとどうなるか?

なんと、刑務所の中には、お墓もあります。これには驚きました。
遺骨の引き取り手がいない場合は、刑務所の中にあるお墓に埋葬されたりします。

お墓自体は、塀の外にあるという配慮もあります。
亡くなってもなお、塀の中にいるというのでは成仏できないという配慮からです。

本当にこれで、良いのでしょうか?


コメントは受け付けていません。

サブコンテンツ

このページの先頭へ