ケアマネの研修倍増は、スキルアップにつながるとお思いですか?

私が、福祉系の資格を取得した順番は、

ヘルパー2級→社会福祉士→ケアマネ→介護福祉士

の順番です。

合格のために最も苦労したのは、社会福祉士ですが、ケアマネの時も相当勉強をした覚えがあります。

以前は、解答免除制度があったので、現在よりは簡単であったといえます。

でも今は、資格制度が改正され、非常に難易度が高くなっているのがケアマネといえるでしょう。

解答免除の廃止、研修時間の倍増はショッキングな改正でした。

こんなにケアマネの資格取得と維持を大変にしてどうするの?

って思います。

広範囲な試験勉強をしなければならないのと同時に、資格取得後も継続的に勉強に時間を取られることになります。

今後、ペーパーケアマネは激減していく可能性が高いです。

実務で必要ないのならば、そんな資格は維持できないからです。

同時に、ケアマネを目指す人も減っていく可能性があります。

このことは、介護福祉士の実務者研修にも通じて言えることではないでしょうか。

実務者研修が義務化された、先日の介護福祉士国家試験の受験者数は、なんと8万人近くも激減したそうです。

疑う余地もなく、これは実務者研修という長時間の研修の義務化が原因です。

これと同様の現象が、今後はケアマネでも起きることが予想されます。

もちろん使いもしない資格は、要らんでしょ

って意見があるのは、その通りです。

国からしても、介護保険制度創設当時のようなケアマネ倍増計画は、もはや必要がない訳ですし・・・

なので、ペーパーライセンスのケアマネがいなくなること自体は、まあ仕方がないと思います。

問題は、実務者の研修時間の倍増です。

今後、ケアマネの研修は、実務を行う必要があって受講する人が増えます。

気になるのは、時間を増やせばスキルアップできるのかということですよね。

ケアマネの研修は、確かに制度の最新情報が得られたり、他者の支援ケースを見聞きすることで得られるものはあります。

でも、研修だけでスキルアップできるかは疑問が残ります。

私が問題だと感じるのは、ケアマネの存在意義の一つが、介護保険制度を効率よく運営する要とされている点です。

長時間の研修が、ケアマネの専門性を高めるという名目ではありますが、実態は制度を安定的に運営するための係員、それがケアマネであるという点です。

でも実際の業務におていは、ケアマネの専門性を全面に出して利用者に対することは、かなり難しいことだと思います。

例えば、専門家として、専門外の仕事を断るという仕事があります。

ケアマネでいえば、ケアマネの仕事ではないことを断るということになります。

いうまでもないですが、ケアマネは直接介護をする人ではありません。でも観るに見かねて介助してしまうことがあります。

これは、困ったことがあると、ケアマネに連絡をしてくる利用ががいるから起こります。

一例を出しましょう。

私が以前、訪問介護の入浴介助で入っていた利用者の話です。

その家は、夫婦二人暮らしで、奥さんが旦那さんを介護しています。

旦那さんは、難病で時々体が思うように動かなくなることがありました。基本的には、自身で歩けます。

ところが、ある夜、旦那さんがトイレに行ってからベッドに戻ろうとすると、突然、身体が動かなくなりました。

奥さんは、高齢のため、旦那さんを抱えてベッドまで戻すということはできません。

そこで奥さんは、ケアマネに電話をしました。

で、どうなったかというと、

ケアマネが自宅に駆け付け、旦那さんを抱えてベッドまで戻してこの一件は落着したということです。

後日、入浴介助で訪問した際、その話を聞いた私は、

果たしてこれは、ケアマネの仕事なのだろうか?

と思いました。

もちろん違うと思いますが、かといってケアマネは法律違反をしたという訳でもありません。

ボランティア活動だといえばそれまでです。

実際、お金をもらったわけではありません。(お菓子くらいはもらったかもしれませんが)

さて、ここで考えなくてはいけないのは、スキルアップした専門性の高いケアマネならどう対応するか?

ということです。

もちろん臨時のサービスとして、介護事業所が対応するとか(夜間対応の介護サービスなど)、介護タクシー、ボランティアなどの社会資源が用意できればよいのですが、そういった手段がない場合はどうするのかということです。

今回の場合、トイレで動けなくなっている旦那さんを、翌日まで待たせるというのは難しいという点がポイントです。

ケアマネが取りうる選択肢としては、

  • ケアマネの仕事ではないと断る
  • 有料の「便利屋」に連絡するように言う
  • 自分(ケアマネ)が無料でベッドまで移動させる

このくらいでしょうか?

他の選択肢があっても、結局は「自分たちでなんとかしてください」という趣旨のことを言うしかありません。

これは、親切心を基礎に置くケアマネほど、言いにくいセリフになります。

で、

結局は、3つめの選択肢を選ぶことが、経験の少ないケアマネにありがちなことです。

つまり、ケアマネがボランティアでなんとかしてしまった方が早いという結論です。

さて、ケアマネ実務について、その難しさの一例を出しましたが、今後、ケアプランの有料化が実施されれば、この種の傾向は強まることが予想されます。

上記のようなケアマネは、決して、悪い人ではないし、むしろ良心的なケアマネです。利用者の受けもよいです。

でも、こういう人は、やがて負担に押しつぶされ、または嫌気がさしてケアマネの仕事を立ち去っていく可能性が高いです。

ケアマネの研修は、こうした良心的ケアマネを何とか救おうという主旨のものではありません。

国は、介護保険制度を適切に運用するための要としての役割を期待しているというのは、先に述べた通りです。

それが出来ないケアマネには退場してもらおうという意図が見えます。

今回の改正は、ケアマネのスキルアップとの関係性は低いです。

無資格者やヘルパー資格のみでは、ケアマネを受験できないようにしたり、解答免除を廃止したり、研修時間を倍増したりというのは、タダタダ、勉強不足の人や、ペーパーライセンスのケアマネを排除するというだけのことです。

スキルアップではないんです。

いずれにしても、今後はケアマネを目指す人は減少していくでしょう。

そして目指していても、合格率が10%台ですから、なれない人も出てくる訳です。

そうなるとスキルアップの研修どころではなくなります。

長時間の研修は、何とかして変更して欲しいものです。


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