社会福祉士レポート実例(児童心理学-設題2)

社会福祉士のレポート作成にお悩みの方へ

実際のレポート作成例をここに提示します。


社会福祉士を養成する大学には、認定心理士の資格が取得できるコースが多数存在しています。


児童心理学は、社会福祉士の国家試験に必要な指定科目ではありませんが、認定心理士を取得するためには必要な科目となっています。


ポイント(学習ガイドより)

乳幼児の認知の特性と、認知・言語等の発達の過程について、その有能さを踏まえてまとめること。また、母と子の相互作用が、乳幼児の情緒の発達や愛着の形成などに及ぼす影響についても考察すること。

科目概要(学習ガイドより)

 本科目では、児童の健やかな成長を促すために必要な知識を、教育心理学・発達心理学の視点から身につけることを目的とする。そのため、まず、児童心理学における主要な概念や研究方法を紹介し、さらには運動能力、知性、社会性などの諸機能の発達的変化を概説する。そして、それらの発達に即してどのような教育が必要なのか、また、遊びはどのような意義を持っていくのか考えていく。子供の発達について、学生の関心を高め、より具体的なイメージが持てるようにする。

設題2

「乳幼児の心理についてまとめなさい。」


設題に沿って、乳児期と幼児期を定義した上で、「母子の相互作用における認知」という観点から、乳幼児の心理につてまとめていく。


1.乳幼児とは
 乳幼児とは、乳児と幼児の総称である。つまり、学齢前の子供の総称である。
(1)乳児期
 出生より1年未満を乳児期と呼ぶ。生理的には、母体を離れて独立した機能を営んでいるとはいえ、養護については依存性が高く、養護いかんによっては、身体発育も精神発達も阻害されることになるし、死亡率も影響を受ける。栄養上から言えば、乳児期前半の乳汁期と、後半の離乳期とに分けることができる。
(2)幼児期
 満1歳前後、6歳まで、あるいは小学校に就学するまでを幼児期と呼ぶ。運動機能の発達や集団生活への積極的な関心など、発達の特徴をとらえて、3歳未満の前半と、それ以後の後半に分けることもできる。
 以上のように、乳幼児を定義したところで、次は乳幼児の認知の特性と、認知・言語などの発達の過程について述べる。

2.乳幼児の認知の特質
 乳幼児の認知の働きは、自らが生きていくために必要な能力であり、外界の事物を、生活・行動するのに適したかたちに再構成し、秩序づけ、意味づけてゆく働きのことである。
 それが生得的水準であれ、高い知的水準においてであれ、認知は単独で働く独立した機能ではなく、その乳幼児のもつ、他の様々な機能と相互に関連しながら働く性質をもっている。以上のことがまず前提になる。
 そして、認知の働きの中心となる性質は「代表作用」である。
 例えば「なぜ、乳幼児は母親の顔を知り、他人の顔と区別することができるか」を考えてみると、そもそも「母親の顔を知る」とは一体、母の何を知るのかという疑問が出てくる。母親の顔には、微妙な表情の違いもあるし、化粧をしていることもあるかもしれない。成熟した大人でも、人の顔をデジタルに細かく認知している訳ではないことを考慮すると、乳幼児も、母親の顔をこと細かに認知しているのではないと考えられる。乳幼児の認知の特性について以下の推測ができる。
 それは「母親の顔の中の最も特徴的で、かつ普遍的な部分を知覚的に取り出し、認識している」ということである。しかし、ここで1つの疑問が生ずる。それは、乳幼児が対象のどこを、どのように捉え、代表させるのかである。次に、その疑問に答える一例を示す。
 例えば、乳幼児にゴリラのジェスチャーをするように求めたら、多くの場合、両手の拳で胸を叩く仕草をするだろうし、ウサギのジェスチャーなら手をウサギの耳に見立て、跳ねるような動きをすると考えられる。
 このように「ゴリラは胸を叩く」「ウサギは耳が大きく、跳ねる」という分かりやすい特徴が取り出され、認知されていることが分かる。そして他の性質は、大方無視されることになる。このことは友達についての認識を、乳幼児に質問したときも同様の傾向が伺える。
 例えば「同じクラスの〇〇ちゃんは、どんな子?」と質問すると、「おもしろい子」とか「すぐ泣く子」などと、分かりやすい特徴的な部分を答える場合がほとんどである。
 ところが代表のさせ方は、すぐに必要に応じて、複数取り出せるように発達する。つまり「〇〇ちゃんは、おもしろくて、優しい」などのような多面的な捉え方である。つまり、乳幼児の認知は、知覚的な認知から、知覚・言語的な認知に発達するということである。

3.言語発達の過程
 「おもしろい子」という要素の中には、話すという言語の要素が関わってくる訳だが、乳幼児の言語発達には、際立った特徴がある。それは保育園などの社会集団で生活を送ることで、同年代の仲間と交流することが大きく関わっているのだが、この時期の言語発達の過程をまとめると以下のようになる。
 (1)生活空間の拡大によって理解できる語彙の範囲が拡大する、(2)表現能力が、単文から複文へと発達する、(3)4歳代で構音機能が完了し「ラ行音」以外は、ほぼ構音が可能となる、(4)自分の考えや経験を筋立てて話す能力が発達する、(5)内言語の発生(言語的に状況を分析し、解決方法などを探索する)
 このようにして乳幼児は、最終的に初歩的な、読み書き能力を習得することになる。就学を迎えるころ、多くの幼児は、基本音節の文字を読めるようになる。

4.母子との相互作用の影響
 ここまでを、要約するとこうなる。「乳幼児は、生後における母とのコミュニケーションを、乳児期は主に、知覚によって認知し、そして幼児期には、知覚と言語の双方によって認知し、発達する」ということである。そこには、乳幼児の認知能力の有能さを伺うことができる。したがって乳幼児は、外界からの事象を認知していく中で「母親からの影響を強く受ける」という推論が出てくる。わが国においては、家庭における子育てが、主に母親によってなされている現状を考えると、乳幼児の情緒の発達や愛着の形成には、母子の相互作用が深く関わっていることは疑いが少ない。
 その根拠は、人間の乳幼児期の制限された養育環境から生じる問題について、J.M.ボウルビィが「育児において母親の、不在・心理的拒否、いずれの場合も、母性剥奪が、2歳、または3歳までに発生した場合は、人格発達にとって望ましくない影響を与える」という見解(1952年報告)に基づいている。
 この一例として、ホスピタリズムを挙げる。ホスピタリズムとは、一種の情緒障害である。昔においては、乳児院とか養護施設のような所で養育される乳幼児は、常時母親との接触が得られる家庭の乳幼児に比べて、知能の発達が遅れ、身体的にも虚弱(食欲不振・顔色が悪い・体重が増えない・睡眠不足など)で、情感に乏しく、無関心・無気力となりやすく、成長した後でも、冷たく人間的情感に乏しい人格になりやすいことが指摘され、その克服法が工夫されてきた。ボウルビイは、非行児と無非行児の生育環境を調査した結果、非行児の方に幼少期のアタッチメントを欠く者が多かったことも報告している。
 しかしながら、ボウルビイの報告は古いものであり、近年の研究では、幼児期の経験は絶対的ではないという説も出てきている。確かに、乳幼児は母親から影響を受けるが、同時に母親も乳幼児に影響を受ける存在である。ホスピタリズムにしても、昔に比べて養護施設などの社会福祉施設の質は向上しているので、養護施設=ホスピタリズムという二次元的な考えは妥当ではない。
 また、親の養育態度が乳幼児の性格に与える影響については、(1)支配-服従、(2)過保護-依存的、(3)甘やかし-我儘、などの図式がよくあるが、乳幼児の情緒の発達や愛着の形成などに及ぼす決定的な要因は、乳幼児が親の養育態度を、どういうものとして認知するかによって決まるものであり、単純ではないということである。


【参考文献】

  • 田中昌人・田中杉恵『子どもの発達と診断1 乳児期前半』大月書店、1984年



■■心理学論文の引用方法について思うこと■■


本科目は、指定教科書(児童心理学 無藤隆著 日本放送出版協会)をメインに学習したうえで、レポートを書いています。


参考文献は、1冊のみとなっています。


当レポートの後半で、


乳幼児の情緒の発達や愛着の形成には、母子の相互作用が深く関わっていることについて、J.M.ボウルビィの報告をもとに論理を展開しています。


本来であれば、ボウルビィの原著書から引用・参考にすべきですが、心理学系の書籍で原書を取り寄せるのは、実運用面では現実的でないことがあります。


そもそも絶版になっていたり、また、原書があっても、英語の本や論文だったりするので、なおのことです。


なので、教科書や参考文献に書いてあったボウルビィの記述を参考にして書くという


孫引き


の状況になっています。


また、教科書や参考文献からの引用にしても、原文からの直接引用ではなく、内容を書き手が要約して書くという


間接引用


の形をとっています。


これは、原文を逐一載せていくことで、レポートの字数制限をオーバーしてしまうのを避けるという理由によるものです。


間接引用は、直接引用に比して、書き手の主観や勘違いが入り込みやすいです。


設題で求められる回答に答えつつ、レポートの字数制限を守ることを考えると、自然と上記のような書き方となります。


心理学の学会の論文であれば、論文の書き方に関する作法を厳密に守るべきですが、大学のレポートにおいては、そこまでは求められないことが多いです。


引用の仕方について、心配な人は、大学の事務局が提示している「学習ガイド」であったり、レポートの書き方を説明した冊子なり、大学のホームページの説明に従うのが確実でしょう。



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