社会福祉士レポート実例(社会福祉援助技術各論ⅡA-設題1)

地域の街並み

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実際のレポート作成例をここに提示します。
 社会福祉援助技術各論ⅡAは、間接援助技術について学習する科目です。
間接援助技術は、社会福祉協議会の人はイメージしやすい援助技術です。地域における福祉ニーズを把握し、地域が抱えている問題の解決法を探すのは、社会福祉協議会の人が実践している間接援助技術の一例といえます。

設題1

「間接援助技術の必要性とその内容、今後の課題について述べなさい。」

 社会福祉法成立により、我が国の社会福祉は、地域福祉中心の方向に進展している。今日の地域福祉における多様な事業主体の参加や、地域住民のニーズの多様化などを考えれば、間接援助技術の必要性は今後も高まるばかりである。そこで本設題では、まず間接援助技術の内容と必要性を述べた上で、間接援助技術が機能を発揮する領域と、今後の課題についてまとめることにする。

1.間接援助技術の内容(レパートリー)
 間接援助技術は、直接援助技術を有効に機能させるために、組織や地域社会といった地域の社会資源を対象とする社会福祉援助技術の体系であり、次の4つの内容がある。
⑴地域援助技術(社会活動法含む)
 地域援助技術とは、地域住民に発生する生活諸問題に対応し、地域社会における諸問題を緩和・解決していく援助方法である。例えば、社会福祉機関・施設により提供されている公的サービスを有効に利用者へ結びつけたり、サービス提供事業者間の連携・調整をする仕組みを作るということである。また、地域の社会資源や、公的な制度でも対応できない問題については、新たな社会資源の開発を促したりすることもある。
 社会福祉法の成立により、地域福祉の推進が法律に明記されて以来「地域住民主体の重要性」が認識されるに至った。これにより、住民参加の促進、関係機関・団体の協力関係の促進、社会資源の動員・連携・造成、社会活動の展開などを含む地域援助技術の必要性が出てきたのである。
⑵社会福祉調査法
 社会福祉調査法とは、現地調査などにより直接的にデータを収集・整理・分析することで、科学的根拠に基づく問題解決を可能とする資料の提供を目的とした援助技術である。社会福祉調査は、社会調査の一応用分野であるが、問題解決型アプローチを重視するところにその特徴がある。これは社会福祉調査が地域の諸問題を解決するために行われるという性格を持っているためである。具体的な調査方法には、統計調査(全数調査・標本調査)や、事例調査(典型調査)などがある。
 地域における諸問題解決のためには、まず何が問題なのか、どのようなニーズがあるかを把握する技術が必要になる。社会福祉調査法により、出された調査結果(データ)は、他の社会福祉援助技術のレパートリーにおいても必要となる。ここに社会福祉調査法の必要性がある。
⑶社会福祉計画法
 社会福祉計画法とは、社会福祉領域における、社会構造を望ましい方向に変えていく計画的な活動の方法である。例えば、政府レベルの社会福祉計画としては「ゴールドプラン」「ゴールドプラン21」などが有名である。戦後の我が国では、経済開発が優先的に進められ、社会開発や社会福祉は経済計画の範疇でしか考えられていなかったが、高齢社会が到来した現在においては、経済計画に包括・補完される社会計画では駄目で、社会福祉計画が必要となってきている。ここに社会福祉計画法の必要性がある。
⑷社会福祉運営管理法
 社会福祉運営管理とは、国や地方自治体の福祉行政における政策・組織などの運営・管理の方法のことである。また、社会福祉サービスを提供する社会福祉施設・機関の運営や管理方法のことも意味する。
 社会福祉における運営管理においては、社会福祉事業の長期的展望に立った方針の策定や、社会福祉事業に分配される社会資源の有効活用、さらには、新たな社会福祉課題への対応といったところに、社会福祉運営管理の必要性を見出すことができる。

2.間接援助技術が機能を発揮する領域
 間接援助技術の、4レパートリーは、主に次に示す領域において、その機能を発揮する。
⑴社会福祉の連携・調整システムの開発
 社会福祉関連の施設・機関・団体が増加し、且つ社会福祉の制度・分野が複雑・多様化してくると、各事業者間の連携・調整が悪くなることで、結果的に利用者に不利益が生じることがある。そこに間接援助技術の機能を発揮する領域がある。
⑵社会福祉資源の開発
 現存する社会資源の多くは、かつての地域援助技術において実験的に開発されてきたものである。しかし、今後の社会変動いかんによっては、新たな福祉ニーズや、諸問題が発生することが予測される。ここに間接援助技術の機能を発揮する領域がある。
⑶住民参加の福祉活動の開発と促進
 地域福祉を推進する我が国の社会福祉において、間接援助技術は、住民参加の福祉活動の開発と促進をその領域とする。ただし対象とするのは、原則として住民個人ではなく、組織化された団体や家族である。
 戦後に比べて、現在の社会福祉が進展してきたのは、住民による福祉活動があってのことである。福祉専門職は、住民による団体や組織が的確な運営ができるように側面的援助をしていく。
⑷社会福祉の運営管理
 社会福祉の運営管理における領域は、社会福祉施設・機関や、国・自治体などの福祉行政における運営管理のことを意味する。間接援助技術が、この領域で機能を発揮することで、福祉サービス提供事業者の経営的な安定や、自治体の財政の適切な運営、さらには、社会福祉制度の充実を図ることが可能となる。

3.まとめ(今後の課題)
 以上、間接援助技術4つのレパートリーが、4つの領域において、その機能を発揮することを述べたが、誤解してならないのは、それぞれ領域において特定の援助技術のみが発揮され、援助が展開されるのではないということである。実際には間接援助技術の展開過程では、直接・間接の両方の援助技術が必要とされる。
 例えば、社会福祉の連携・調整システムの開発の領域に関しては、主に地域援助技術が用いられるが、援助を効率的に進めていくには、社会福祉調査法による客観的なデータや、利用者に対する個別のケースワークも必要となることがある。
 あるいは、社会福祉資源の開発領域では、社会福祉計画法によって、地域住民が主体的に計画を立案し、援助者による援助のもと、社会活動法を用いて、行政に働きかけるといったことも想定される。
 さらに、住民参加の福祉活動の促進については、社会福祉調査法によって、住民の福祉ニーズ・諸問題の情報を収集すると共に、地域援助技術によって地域の福祉活動を側面的に援助していくこともある。
 これらのことから、社会福祉専門機関が、各領域において、間接援助技術を提供するには、実に幅広い専門知識と技術が要求されることが観て取れる。したがって、今後の課題は、援助を提供する側の総合的な資質の向上にあると考える。冒頭で述べたように我が国の社会福祉は、地域福祉が中心である。しかし、地域福祉は地域住民のニーズを実現すれぱよいという性質のものではなく、地域が長期的に持続可能な福祉を目指していかねばならないはずである。そうであるならば、社会福祉運営管理の重要性がもっと主張されるべきであり、社会福祉専門職は、行政や、社会福祉機関・施設の目的と、地域住民のニーズが、共に達成できる援助技術を提供していかなくてはならない。ここに地域援助技術の課題が存在するのである。

【参考文献】

  • 新・社会福祉学習双書編集委員会『新・社会福祉学習双書第13巻 社会福祉援助技術各論Ⅱ』社会福祉法人全国社会福祉協議会 1999年
  • 中島恒雄『社会福祉要説』ミネルヴァ書房 2001年
  • 福祉士養成講座編集委員会『社会福祉援助技術論Ⅱ』中央法規 2003年
  • 松永俊文・野上文夫・渡辺武男『新版 現代コミュニティワーク論 21世紀、地域福祉をともに創る』中央法規 2002年

社会福祉士からのコメント

社会福祉援助技術に関連する科目は、必要とされる専門知識に共通性があります。
もともと同じ科目であったものを分化して履修する形になっているのですから当然です。

例えば、ケースワークで学んだことはグループワークで活かされるということがあります。
間接援助技術で得た知識は、関連援助技術のレポートで活かされるということもあります。

限られた時間でレポートを書いていこうとするとき、関連している科目を集中的に攻めることは効率性の高い履修方法となります。


同じ系統の科目を集中して履修することで、参考文献を流用できるメリットもあります。
社会福祉援助系の文献をまとめて借りてくることは、図書館で予約・受け取りをする手数を省く意味で有益です。



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