社会福祉士レポート実例(社会福祉援助技術各論ⅠA-設題2)

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実際のレポート作成例をここに提示します。
この科目は、社会福祉援助技術の中でもケースワークという各論を学ぶ科目です。
新カリキュラムにおける国家試験科目である「相談援助の理論と方法」に該当する科目です。
大学で履修する科目名は必ずしも国家試験科目と同タイトルではありませんが、学ぶ内容は、社会福祉援助技術についてです。

設題2

「個別援助技術(ケースワーク)の展開過程について述べなさい。」


 個別援助技術における過程とは、時間の流れに沿って展開される「手順」と「方法」のことである。援助の展開過程は、主に、開始期・展開期・終結期の3段階に分けることができる。本設題では、これらの概要を述べた上で事例を提示し、個別援助技術の具体的な展開過程について述べることにする。


1.個別援助技術の開始期
 個別援助は「インテーク」により開始される。これは援助者が利用者と出会い、問題の明確化と信頼関係の形成を目指すものである。通常は利用者から問題が持ち込まれ、面接という形で援助が行われるが、利用者の家族が問題を持ち込むこともあるし、援助者側が問題に気付いてアプローチすることもある。
 利用者は問題を抱えて相談に来ているので、援助者は利用者に不安を与えないようにし、ラポール(信頼関係)の形成に努めることが重要である。そのため、まず援助者は利用者の話に傾聴し、主訴を見極める洞察力を発揮することが必要である。ラポール形成にあたっては、援助者の所属する機関が、利用者の要求に応えられるかどうかを明示することを忘れてはならない。「できないことはできない」「分からないことは分からない」とし、その理由を丁寧に説明する。こうした援助者の態度は利用者にとって、誠実な態度として受け入れられる。反対に、できないことを安請け合いしたり、不明瞭な説明をすれば、利用者は、援助者や機関に対して不信感を抱くようになる。援助者は、このような結末を避けなくてはならない。
 こうして、ラポールが形成されたら、次は資料の収集と分析によって、利用者の問題を選定する作業である「アセスメント」が行われる。そして問題が選定されたら、次は当面の援助目標を設定し、具体的な実施計画を立てる。これが「プランニング」である。プランニングでは、利用者の参加が大切である。それは利用者が問題を認識し、自ら解決法を選択させることに繋がるからである。


2.個別援助技術の展開期
 展開期は、具体的援助を実施する段階である。援助者は利用者の主体的判断を尊重し、利用者が自らの力で問題解決を図れるように援助を行う。つまり、援助は利用者のパーソナリティに働きかけるものであり、援助者が利用者の問題を解決する過程ではない。従来のケースワーク論では、利用者のパーソナリティに、病的な問題を見出し、援助者が利用者に心理・精神療法的治療を施すという概念であったが、現在では利用者の生活を重視する観点から、利用者と環境と、その相互関係に着目するようになっている。つまり「処遇」から「介入」の概念になった訳である。もちろん、心理・精神的療法が必要なケースもあるが、その場合も療法を行うのは精神科医や臨床心理の専門職であって、援助者ではない。援助者の役割は、あくまで利用者と社会資源を結び付けること、利用者の環境調整をすることにある。その過程の中で利用者自身が問題に気付き、問題解決に踏み出せるように促すのが個別援助である。
 しかし、実際の援助は、過程通りに進むとは限らず、困難が伴うことも多いので、アセスメントとプランニングの段階に戻り、援助を見直すこともある。加えて、援助が効果的に実行されているかを判断し、新たなアセスメントやプランニングに繋げる「モニタリング」の作業も必要に応じて実施される。
 また、個別援助が利用者の主体性を尊重する過程であっても、利用者の中には問題を抱えているのに、それを認識できない人や、相談に行きたくとも行けない人が存在するので「アドボカシー」という代弁機能を使って、社会資源から遠ざけられている利用者に対して個別援助が行き届くように援助を行うことがある。さらに児童虐待や、ドメスティックバイオレンスといった緊急性の高い問題については、援助者側の判断によって援助が提供されることも付け加えておく。


3.個別援助技術の終結期
 個別援助の終結期は、援助展開期の後半から準備される。援助は、利用者が問題を自らの力で対処できるようになった段階で終結を迎える。終結期を迎えたのに援助が継続されれば、利用者の問題解決能力に支障を来すことになる。終結期を迎えることで援助関係も終結する。しかし実際の個別援助では利用者の問題全てを解決できることは少なく、新たな問題が発生することも多い。終結期とは、もう二度と援助が行われないという意味ではなく、援助の再利用の可能性を含めての、一つの区切りと考えられるものである。


4.事例
 ここまで個別援助技術の過程について述べてきたが、次は具体的な事例に当てはめ、その展開過程を述べる。場所はケースワーカーを配備する、ある産院での面接場面である。
①援助者:産院のケースワーカー。所属機関は産院。
②利用者(患者):20歳(妊娠3ヵ月)、妊娠検査のため来院。主訴は、人工妊娠中絶。
③照会内容:医師からは「検査により妊娠3ヵ月であることが判明し、その事実を本人に伝えるが、本人は混乱を来している。父親は特定できず、不特定多数の男性と関係をもっている疑い有り。母体保護の立場から観て中絶手術は可能だが、今後について相談してほしい」との連絡を受ける。


5.事例に対する個別援助展開過程の一例
 援助者は、まずインテーク段階で利用者とラポールを形成する。産院の援助者として可能な援助範囲を、この段階で明示して援助に入る。そして援助者は利用者とコミュニケーションをとりながら、出産した場合と、中絶した場合の、それぞれについて生じるであろう事態や、メリット、デメリットについての説明を行う。例えば、出産した場合はどのような社会保障が受けられるか、あるいは中絶する場合はどのような問題が生じるかといったことである。いずれにせよ問題に対する最終的な判断は利用者がするものであり、援助者はその側面的支援をするに過ぎないことが利用者に告げられる。
 援助が進むにつれて、他の機関との連携が必要と判断された場合は、各専門機関・福祉事務所・セルフヘルプグループなどへと繋ぐことになる。ただし機関を紹介しただけでは効果性は低く、機関の利用に至ることが少ないので、援助者は利用者の不安な気持ちを受け止めた上で援助を行うことが必要である。こうして、利用者が選択した結果に基づいて、援助はさらに次の展開へと進む。そして最終的には利用者が自らの力で問題を解決できるまで援助は継続されていくことになる。


6.まとめ
 先の事例からも推測されるように、個別援助技術の展開過程で重要なことは2つある。1つは「インテーク段階における援助者と利用者の信頼関係」、2つは「利用者自らが問題解決するという考え方の理解」である。援助の過程においては、この2つが成立すれば、大方その援助は成功する可能性が高い。これは他の個別援助技術(例えば生活保護分野)においても同様である。援助者は利用者に頼りにされるのではなく、信頼されることが大切である。それによって利用者は、自らの力で問題解決に向けて正しい方向に進むことができるのである。


【後 注】
⑴小松、187~198頁参考(事例は「未婚の母へのアプローチ」からヒントを得た)

【参考文献】

  • 小松源助「ケースワーク論」有斐閣双書 1975年
  • 福祉士養成講座編集委員会「社会福祉援助技術論Ⅰ」中央法規 2002年
  • 福祉士養成講座編集委員会「社会福祉援助技術論Ⅱ」中央法規 2003年

社会福祉士からのコメント
事例は、参考文献「ケースワーク論」に掲載されていたものを、レポート用にアレンジして使用しています。
事例は、なくてもいいのですが、もし引用するなら新聞などからネタを引っ張ってきてもいいですし、ご自身の見聞きした例や、体験した例を取り上げてもいいでしょう。
その際は、個人情報を事実通りに出すことは不要です。
あくまでレポートの題材として使用できれば問題ありません。


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