社会福祉士レポート実例(数学-設題2)

社会福祉士のレポート作成にお悩みの方へ

実際のレポート作成例をここに提示します。


社会福祉士を養成する大学で「数学」を勉強するというのは意外に思うかも知れません。


内容的には、微分積分や統計などの計算問題を解くようなものではなく、文系レベルの内容です。しかし論理的・科学的なレポートが求められています。論理的思考力を鍛えるという意味では、大変役に立った科目でした。

社会福祉士の国家試験科目に「社会調査の基礎」という科目がありますが、これは統計的なものの考え方が福祉に必要だから創られた科目といってよいでしょう。

大学には、文系であっても、社会調査論や統計学といった、統計を学ぶ科目が少なからず存在するので、機会があれば履修しておくことをお勧めします。国家試験の指定科目ではないかもしれませんが、得るものは大きいと思います。

ポイント(学習ガイドより)

「統計」にはものごとをまとめて理解しやすい形にするはたらきと、まだ起こっていないことや普通の方法ではとても知り得ないことを予測・推測するはたらきがある。それは、一見したところ曖昧で漠然とした物事や現象から私達の役に立つ情報を引き出すということ、つまり一種の宝探しの技術といともいえるが、どうしてそうなのか。この点について、身の回りで見聞きした事例や自分の経験などをあげながら考察しなさい。

科目概要(学習ガイドより)

 私たちの日常生活に直接、間接的に深く関わり合いのある「数」と「数字」の発展の歴史から始まり、数の概念の拡張、自然数、整数、有理数、無理数、実数、複素数の理論とそれらの応用について学習する。特に本科目の履修については、多くの学生が、文科系や社会科学系の専攻生であることに留意して、微分積分等を含む高度な数学テクニックは必要としない学習をする。

設題2

「統計」的なものの考え方の利点について述べなさい。」

 統計とは、大まかに言って標本の情報から母集団の状況を推測しようとするものである(推測統計)。
 例えば、新聞には内閣支持率が何%などというデータが載っているが、こうしたデータがどうやって得られるのか説明すると分かりやすい。
 この場合、母集団は有権者全員である。標本は母集団から抽出して、実際に調査を行った集団である。本来なら、母集団である有権者全員に調査を行うこと(全数調査)によって正確な支持率が出る訳だが、それには莫大なコストや時間がかかるため、現実的ではない。
 そこで、標本に人数を絞って調査を行うことで、厳密とはいかないまでも、できるだけ母集団の状況に近いデータを得ようとするのが統計における特徴の一つなのである。
 以下、「統計」的なものの考え方の利点について、統計の果たす働き(①物事をまとめて理解しやすい形にする働き、②まだ起こっていないことや普通の方法では知り得ないことを予測・推測する働き)という観点から考察していく。

1.事例
 以前、勤務している職場(訪問介護事業)で利用者にホームヘルプサービスについてのアンケート(意識調査)を行ったことがある。まずは、これをもとにした事例を取り上げる。
 この調査(無記名)は、利用者50人に対してアンケート方式で実施した。
 ヘルパーの介護サービスについて、例えば次のような設問に対し、該当すると思えば○をつけてもらうというものであった。

設問例1
あなたはヘルパーのサービスつにいて、どのように感じていますか(いずれかに○をつける)。
①大満足、②満足、③普通、④やや不満、⑤不満

調査結果の内訳は、大満足(20人)、満足(15人)、普通(10人)、やや不満(3人)、不満(2人)であった。この場合、回答者の人数が度数となる。
 ちなみに、統計におけるデータには、数量として測れる「数量でデータ」と、数量として測れない「カテゴリーデータ」がある。このアンケートの設問は数量として測れないカテゴリーデータに属している。

2.物事をまとめて理解しやすい形にする働きについて
 調査から得られたデータの度数を比べることでも、ある程度データの雰囲気は分かるが、データをより分かりやすく、見やすくするためには、度数から割合を算出して、グラフにしたり集計表にしたりすると、よりまとまった見やすいデータになる。
 度数から割合を出す計算式は、例えば、大満足と答えた人でいえば、度数が20なので、20/50×100=40%という割合が算出される。以下同様にして、満足が30%、普通が20%、やや不満が6%、不満が4%という割合を算出することができる。
 一方、記述統計(データを整理することにより、集団の状況を簡潔に明確に表すことを目的とする統計)の場合、データの中には得点の分布のように、そのままグラフや表にしても分かりづらい場合があるので注意を要する。
 例えば、一学年400人の生徒に、一問一点の問題を100題解かせて、その得点分布を調べようとした場合を考えてみる。変量(得点)の種類は0~100点まで、101種類にも及ぶ。そこで、通常は、10点未満(0点~9点)、10点台(10点~19点)、・・・・・・・・90点以上(90点~100点)というように、いくつかのグループにまとめることをする。このように、変量の取り得る値を区切っていくつかのグループに分けたものを「階級」という。
 つまり「統計」には、ものごとをデータとしてまとめ、それを理解しやすいようにする働きがあるといえる。

3.まだ起きていないことや普通の方法では知り得ないことを予測・推測する働きについて
 統計によって得られたデータは、まだ起きていないことについて予測、推測するための一つの手がかりとなる。
 例えば、先の事例のアンケートでは、サービスに「不満」と答えた人に対して、次の設問についても答えてもらっている。

 設問例2
設問1に不満と答えた方にお聞きします。不満な点は具体的にどのような点ですか(いずれかに○をつける)。
①身体介護の技術が低い、②料理ができない、③言葉使いが悪い、④マナーが悪い、


 といった類いの設問である。つまり、設問に対して、どの項目に〇が多くついているのかということをデータとして集計することで、利用者のサービスに対する意識や、今後必要とされるサービスについての予測、推測が可能となる訳である。
 こうしたアンケートによる調査は、他にも様々なところで実施されている。
 例えば、東京福祉大学でもスクーリングのときに、学生に対してアンケート調査を実施しているのは周知の通りである。設問はカテゴリーデータ中心であるが、それぞれに1~5の点数が当てはめられており、点数化(数量化)されているところに特徴がある。集められたデータは集計され、今後の学校の運営方針や授業方針に反映されることになっている。
 こうした統計的なものの考え方は、アンケートによる調査に限らず、われわれの日常生活の中でも多用されている。
 例えば、ある目的地にたどり着くまでの時間を予測しなければならない状況があったとする。移動するための手段としては、電車とバスがあったとする。この場合、多くの人は道路事情などの要素が影響する可能性が高いことを考えて、電車よりもバスの方が目的地まての時間を余分に考慮しなければならないと推測すると思われる。これは初歩的な統計の理論が応用されているからこそできる考え方である。

4.統計的なものの考え方の利点(結論)
 以上のことから、統計的なものの考え方のエッセンスは「部分的な情報から全体を推定する」というところに存在すると考える。
 つまり、統計的なものの考え方の利点は、時間、コストなどの制約があっても、現実的に集められる量のデータの中から、その特徴を導き出し、統計的確立(多数回の実験や観察によって求められた相対度数)の範囲内において、役に立つ情報を引き出したり、最善の答えを予測・推測できるところにある。
 先の事例で言えば、アンケートによって顧客のニーズを把握し、サービス内容をどのように改善したらよいのかを推測・予測することができて、なおかつ、事業所なり、大学なりの経営が継続的に発展していくために必要な情報をも引き出せるという訳である。ここに、統計が「宝探しの技術」といわれる所以がある。
 しかし、統計から導き出された情報や答えが、必ずしも完全といえないことは自明の理である。ときにはあてが外れることもある。しかし、その失敗もデータ化して統計に活かすというくらいの気構えがあれば、統計的なものの考え方の利点はさらに高まるといえるだろう。


【参考文献】

  1. 荷見守助、三澤進『統計入門はじめての人のための』内田老鶴圃 1999年
  2. 数学教育協議会・銀林浩編『算数・数学なぜなぜ事典』日本評論社 1993年
  3. 藤沢偉作『初歩の統計』現代数学社 1993年
  4. 渡辺宗孝、寺見春恵『ビギナーのための統計学』共立出版 1990年



■■レポートの素材は身の回りにあふれている■■

当レポートの文中では、私が勤務している訪問介護事業所において実際に行われたアンケート調査をもとにレポートを書いています。
レポートのアイデアを練っているときに、たまたま机の上にアンケート用紙があり「これは使えるかもしれない」と思って採用したものです。

レポートというと、堅苦しい学術書から参考にするものというイメージがあるかも知れませんが、そうとは限りません。
参考文献として記載しないまでも、実際には身の回りにある素材をフルに参考にすることは多いものです。

今回の、アンケート調査の用紙もそうですし、過去には、歴史科目のレポート(近世の歴史と文化)を書くのに、漫画で解説された日本史の本(小学生向けに作られたような内容)を参考にしたこともあります。

このように、大学のレポートというものは、アイデア次第で多くの素材をみつけることができます。
ましてや、アンケート調査は、ありふれたといっていいほど手に入りやすい素材といえます。
なので、どんどんレポートに利用することをお勧めします。

ちなみに、レポート内では、東京福祉大学で行われていた学生向けのアンケートについて一言ふれていますが、これは私が学生だった2001年当時、大学が開学間もないこともあってスクーリングごとに毎回実施されていたものです。
授業の内容について問う質問、改善してほしい点などを問う質問が多く、大学が暗中模索していた様子がうかがえました。(もう10年以上昔のことなので、今はもうしてないのかな?)

今では、懐かしい思い出です。


スポンサーリンク




コメントは受け付けていません。

サブコンテンツ

このページの先頭へ