社会福祉士は楽して取得した方がいいのか?

楽をしている人

前回は、スクーリングを楽しむというお話をしました。


今日は、


楽をして社会福祉士資格を取得した方がいいのか?


についてお話したいと思います。


「楽しむ」のと、「楽をする」というは本質的に違います。

  • 楽しむという言葉には、大変な部分もあるが、発想を変えてポジティブに物事に取り組む姿勢があります。楽しくない行動も伴っていますが、そこから得られる果実の価値に着目し、柔軟な発想で行動できます。
  • 楽をするという言葉には、面倒な部分をカットして、その果実だけを得ようとする発想があります。行動の判断基準は労力の量が重視され、楽な方を選択していくことになります。

結論を先に述べますと、


楽をして資格をとっても意味ない


ということになります。


ここでは、何のために資格を取るのか?が問われています。


なぜ、そのような結論になるのかについて「科目終了試験」を例に挙げて説明しましょう。


多くの学生が忌み嫌うものとして、試験があります。


大学によっては「科目認定試験」といったり「単位認定試験」といったりと、その名称はさまざまです。


東京福祉大学では「科目終了試験」という名称でした。


略して


カモシュー


と呼んでいました。


ウェブ上で受験できるようなIT化の進んだ通信制大学で学習されている方には、あまり馴染みがないかもしれませんが、従来型の大学(2002年当時)では、科目の単位を認定してもらうために、わざわざ大学に出向いて筆記試験をクリアする必要があったのです。


通常、レポート提出が済んだ科目についての受験が認められ、レポートと科目修了試験の合格によって単位習得するという流れになります。


試験は、1科目につき1時間程度で、論述形式の回答を手書きで作成するものです。


私の大学では、当時1000文字程度の回答を書かせるという決まりになっていました。


試験中は、参考書をみることはできません。


自分の頭の中の知識を頼りに、回答用紙に鉛筆で答えを書き込んでいきます。修正は消しゴムで消して書き直すので、机の上は消しゴムの削りかすでいっぱいです。


実にアナログですね


学生証を机上に提示しながらの受験で、試験管が学生の本人確認をできるようになっています。


なので、替え玉はできないことになっています。


どの問題が出されるかについては、試験開始までわかりません。


あらかじめ、学習ガイドに5問の例題が示されているので、その中からどれか1つが出されるという仕組みになっています。


例えば、これは「障害児・者の心理」という科目の科目修了試験の学習のポイントです。

  1. 障害児・者の学習困難の実態と原因について
  2. 障害児の親の心理について
  3. 知的障害児・者の心理的指導について
  4. 虚弱児・者について
  5. 聴覚障害と社会生活上の問題について

これが学習ガイドに示された学習ポイントです。試験当日は、これらの中から1題が提示され、回答することになります。

試験問題番号

学生が「障害児・者の心理」を受験するならば、これらの5つのポイントについて頭に叩き込み、試験当日、参考書などは見ないで1000文字程度の回答をできるようにしておかなくてはならないのです。


試験当日に、回答するのは1つなので、中には、ヤマを張る人もいますが、ヤマが外れたらほとんど解答できないので困ります。


私の場合、試験は一発で済ませたいと思っていたので、一つ一つの試験対策は念入りに行っていました。


これは、試験当日に書くであろう文面をワープロで打ち出したメモです。

科目終了試験のメモ

ここに書いてあることを、ある程度頭に入れた上で試験に挑むことになります。


なにしろ試験に落ちると、また後日試験をやり直しですから、必死でした。


試験前の一週間は、この原稿を隙間時間に目をとおして勉強することになります。


カモシューは、一回の試験で1から3科目(最大4科目)受けていましたので、受験科目数×5問の回答を頭に叩き込むことになります。


2科目受験だったら10問分、文字にして10000文字程度の情報をアウトプットできるようにしなくてはならないのです。


これは、相当な勉強量です。


当時は、訪問介護のバイトをしながら、この原稿がボロボロになるくらい見て、覚えるという勉強をしていました。


通勤の途中の電車内でも勉強です。


ただし、実際に5000文字×科目数の文章を一字一句間違わずに記憶するのは不可能です。


あくまで大まかな内容を頭に焼き付けることが大切です。


文で書いたことを図にイメージして記憶に定着させる

図にしてイメージする

そのようなイメージです。


それが科目終了試験対策でしていたことです。


さて、


この話を聞いて、社会人であるあなたは、


めんどくさそうだな・・・

面倒くさい

と思ったかもしれません。


無理もありません。


大概の人は、


いかに楽に社会福祉士を取得するか?


に気持ちが向いてしまうからです。


もちろん効率的に勉強を進めるということは大切です。


でも楽をして勉強するというのは矛盾があります。


楽をするというのは、結局のところ勉強をしたくないということです。


楽をして資格を取得した人は、やがて「社会福祉士を取得したけど無意味」と思うようになります。


結局、資格で得られる果実は資格を得る過程で、どんな種をまいたか、そして何を吸収したかによるからです。


嫌々勉強していたり、義務で単位を取得していたら、何も吸収するものはない訳です。


自身の経験として、今になって役に立っているのは、当時、大量の読書・レポート・試験・面接授業により単位を修得していたという事実です。


社会福祉士の資格の価値は、その受験資格ルートや、学習のスタンスで変わってくると思います。


どのルートが良いかは人によって違います。


法的な意味での違いはありません。


どのルートであれ、社会福祉士登録証は同じです。


受験資格ルートが登録証に記載されることはありません。


でも、


どのルートで資格をとったかが、セルフイメージに影響を及ぼすことは確かです。


社会福祉士を

  • 実務経験ルートで取得した人
  • 社会福祉系大学を卒業して取得した人
  • 一般大学を卒業後に養成施設で取得した人

では、かなり異なるセルフイメージが出来上がりますよね。


どのルートや学校が良いとか悪いとかは一概にいえませんが、あなたが、あなたをどう認識するかを考えるとき、これは重要なことです。


さらに、同じルートであっても、どの学校に行くかによっても異なる影響をうけます。


レポート、試験、スクーリング・・・・養成の過程で学校の教育プログラム内容に影響を受けます。


最近の通信制大学では、単位習得が簡略化される傾向にあります


オンデマンド方式が採用され、通学することなく、スクーリング単位が修得できたり、修了試験が認定されたりします。当該科目の知識があるかないかを判定することに評価の軸が偏っていく方向にあります。


個人的には、この傾向は好ましくないと思っています。


大学での体験に価値があるのに、それがオンデマンドやDVD鑑賞による授業ではつまらないと思います。

通信教育ガイド

これは、母校が2001年当時出していた通信教育ガイドです。

教育方針

冒頭に太字で書かれている部分に賛同したからこそ入学を決めました。


要は、思考力を持った人材を養成するのが教育方針です。


そのための手段としては

  • レポート課題作成と面接授業を多くこなす
  • スクーリングではディスカッション形式の授業を行う
  • 単位認定試験は記述式とする

というものでした。



母校は、通信制の大学でありながら、通学過程並に面接授業があって、その教育方針に満足しています。不慣れながらもディスカッション形式の授業で多様な人たちと議論を交わしたことは大きな経験となりました。


あれから15年以上の時間が経ち、母校の教育方針もオンデマンドの流れに逆行するわけにはいかなくっています。


これは、先日、同窓生向けに送られてきた「同窓会だより」という冊子に掲載されていた告知ページの画像です。

同窓会だより

オンデマンド授業が今後展開されていくことが記載されています。


しかしスマホで授業を受けるというのは、便利かもしれませんが、体験不足の履修スタイルになって損な気がします。


養成校で何を体験するかが、あなた自身のメリットにもデメリットにもなるのがここでのお話です。


話をまとめますと、


結局、資格は自分のために取得するものです。


変な話に聞こえるかもしれませんが、社会福祉士の資格の価値は、就職できるかどうかではなく、自らにインストールしたセルフイメージで決まります。


ここでいうインストールというのは、養成課程で得た知識のことではありません。


知識は時間とともに陳腐化します。


制度や法律などは、改正されたら使えないですよね。


でも、財産として残るものが一つあります。


それは、学習経験という投資効果による自身の成長です。


資格取得後に就職できたか否か、年収いくらの仕事に就けたのか?ではありません。


なので、あなたがどんな教育方針の大学を選択するか、どの学部にするか、通学生にするか通信制にするかといったことは慎重に考えるべきです。単に有名校を選べばいいという問題ではありません。


主体である、あなたが最も学習意欲を発揮できる教育方針、システムを具えた学校を選択することが大切です。



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