社会福祉士レポートアーカイブ(国際福祉総合講座-設題2)

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当科目は、海外の福祉を学ぶ科目です。大学での専攻名が「国際福祉心理」という名称でしたので、このような国際的な福祉を学ぶ科目が複数存在していました。


社会福祉士の指定科目だけをストレートに学んでいるだけの養成施設の人にとっては、縁のない科目ですが、大学での学びは、こうした回り道に、思わぬメリットがあったりします。


せっかく大学に入ったのですから、大学で社会福祉士を目指している学生は、指定科目以外の科目もできるだけ単位取得しておくと良いと思いますし、思わぬ形で影響を受けたりします。


例えば、大学でたまたま取った科目がきっかけで、あなたの就職先が変わったりすることはよくあることです。


それくらい大学での科目との出会いは、学生にとっては、出会いであり、将来を左右する出来事なのです。

学習のポイント(学習ガイドより)

日本と欧米、アジア諸国の社会保障システムを様々な角度から比較・分析し、日本の社会保障の特徴を把握すること。また、今後の日本の社会保障はどのようにあるべきか、自分の考えを述べること。

科目概要(学習ガイドより)

先進国及び発展途上国の社会保障・社会福祉の発展と現状の理解を深め、広い視野を養う。また、欧米やアジア諸国の社会福祉を概観し、その制度・政策について日本と比較する。

設題2

「欧米やアジアの主要国の社会保障について国際的に比較し、今後の方向性について論じなさい。」

 現在は、先進国といわれている日本や欧米諸国はもとより、韓国や中国といったアジア諸国でも高齢化が進んでおり、主として医療や年金に関する社会保障費の増大に対する政策が各国共通の課題となっている。以下、欧米やアジア主要国の社会保障システムの比較から、日本の社会保障の方向性について、医療保障システムを中心にして論じていく。

1.欧米と日本の医療保障の比較
 高福祉、高負担の典型であるスウェーデンの医療保障は手厚い。医療保険の保険料は雇用主が負担するので、被用者は保険料を負担する必要がない。患者には医療費の自己負担があるものにの、少額である。
 これに対して日本の医療保険の場合、被用者の保険料負担は雇用主と被保険者の折半である。被用者にとってはスウェーデンの医療保障が優位に見えるが、その分、国民の税負担は重い。またスウェーデンの医療機関の多くは公立で、職員も公務員であることや、1990年代の経済危機を背景とする病床数の削減、医師の給与水準の低さなどが関係して、医療サービスを受けるまでの待ち時間が長いなど、非効率的医療の実態が問題となっている。
 医療の非効率性については、イギリスでも、同様の問題を抱えている。税を財源とした国民保健サービス(NHS)によって、薬剤・歯科治療を除いて原則無料の医療サービスを提供するイギリスでは、緊急性の認められない患者に対する入院・手術の待ち時間が長く、ひどい場合は1年以上待たされることもあるという。ちなみに民間保険の使用や全額自費によるプライベートの医療機関を利用すれば、患者は待たされることなく治療を受けられるが、治療費は高額となる。
 イギリスでは自費によるプライベート医療を除いて、一般診療の場合、患者はいきなり病院で治療を受けることはできない。まず一般家庭医(GP)の診察を受け、専門的治療が必要と判断された場合に、家庭医の紹介によって専門病院で治療を受けるシステムとなっている。そのため、軽い病気の人が専門病院に集まることがないので、医療費を抑えることができる。
 日本の医療機関の場合、待ち時間に関してはたかが知れているが、医療提供システムについては、医療費が第三者機関を通じての給付であるため、患者や医療機関の医療費に対するコスト意識が希薄で、安易な受診や過剰診療を招き、結果的に医療費の増大を招いてしまっている。
 このように、スウェーデンやイギリスの非効率な医療提供の問題、日本の医療費のコスト意識の低下という問題を考えると、アメリカの医療提供システムに問題解決の示唆があると考えられる。アメリカでは、メディケア、メディケイドなど、特定の人に対する医療保障を除いて、公的な医療保障制度は存在しない。医療保障はもっぱら民間保険を中心に提供されているが、近年注目されているものとしてマネジド・ケアがある。これは医療費を抑えるため、保険会社が特定の医師と契約し、病気に対する治療法、入院期間などについて指針を設け、その指針に基づいて治療を行うことで効率的な医療を提供し、トータルで医療費や保険料を抑えようとするシステムである。
 最近では、日本の医療制度の保険者も、アメリカのように、積極的に医療費抑制に関与すべきとの意見が出ている。保険者自らがレセプトの診査を行うなど、保険者機能の強化に対する議論がみられるが、医師会などの反対もあって、改革は簡単には進んでいない。

2.アジア諸国と日本の医療保障の比較
 アジア諸国の医療保障は、韓国のように皆保険を実現している国もあれば、中国のように都市部を中心として社会保障制度の整備が進んでいる国もある。韓国・中国の医療保障は、欧米諸国と比べて遅れているといわれるが、日本の社会保障制度が学ぶべき点は多い。
 例えば、中国の都市労働者を対象とする医療保障システムの1つに、銀行に設置される個人口座と、地方ごとに管理される社会統一基金を組み合わせて運営する「都市労働者基本医療保険制度」がある。これは被用者と企業が一定割合の額を個人口座や社会統一基金にに納入し、個人口座から医療費を給付するものである。一定限度額を超えた場合は社会統一基金から支給されるが、患者負担が生じる。このシステムは患者が自己負担増を避けるために健康管理に対する注意を喚起する効果が期待できるところが優れているといえる。
 一方、韓国は既に高齢化社会を迎えており、社会保障の制度改革が急展開をみせている。新たに制定された健康保険法においては、健康増進・予防までが保険給付に含まれている。この点は日本より優れている。また、医療保険については、日本と同様、職業別と地域別の2つの制度が存在していたが、2000年には、これらの制度が一本化されている。日本においては医療・年金制度の一本化が議論されながらも依然として実現に至っていない現状を考えると、今後、韓国の社会保障の展開を研究することは日本の社会保障の方向性を考える上で重要であるといえる。

3.日本の社会保障の特徴と方向性
 日本は、高齢化が急速に進行しているとはいえ、社会保障に対する国民負担率、租税負担率は欧州各国と比べて低く、そして社会保障費の約8割が、医療・年金に関する給付として支出されているという特徴がある。このことは、逆に言えば、生活保護など社会福祉関係費の割合が低く、さらに児童手当など、子育て関連の給付が少ないといった特徴を示すものといえる。
 これらを勘案すると、今後の日本の社会保障は、医療費の増大を抑え、児童手当など、子育て支援への支出を増やし、少子化に歯止めをかけることが肝要であるといえる。本来、社会保障費の支出を抑えるなら、年金の給付額についても減額を検討すべきだが、国民の老後に対する不安をこれ以上高めることは年金制度に対する不信につながるので避けた方がよい。むしろ、年金に関しては、消費税率を上げて、それを補足財源とし、当面の間は保険者間の財政調整によって、年金制度を維持していくのが現実的であると考えられる。もちろん、年金積立金が社会保険庁のアンダーグラウンドな金として使用されているという疑惑の解明や、グリンピアのような無駄な事業を展開してきた責任をクリアにすることが前提である。また消費税に関しては、食料など生活必需品の品の税率は低く設定するなどの配慮があるとよいだろう。
 そして将来的に年金制度は、一本化する方向で議論を進めていくべきであるが、それは新たに年金に加入する者を対象とするのである。つまり20歳を超えた人が新たに年金制度に加入してから、その人が年金を受け取れる時、つまり25~40年後をめどに一本化した新年金制度を適用していくのである。
 一方、医療費の増大については、イギリスの家庭医制度をモデルとした疾病予防を主眼に置いた新たな医療供給制度の創設や、アメリカのマネジド・ケアを参考とした保険者機能の強化、中国の医療保障システムにみられるような国民の健康維持を喚起するシステム作りなど、欧米やアジア諸国における社会保障や政策を参考にして、予防医療の視点に立った医療保障制度を目指すのである。そうすれば、例え高齢化が進んでも、健康で元気な高齢者が増加することになり、ひいては、介護保険制度への支出も軽減させることにもつながる。社会保障制度の改革は一筋縄ではいかないが、改革の実現には制度を変えるだけでは限界がある。そこには国民一人ひとりの協力が不可欠であるといえる。

【参考文献】

  • 健康保険組合連合会『社会保障年鑑 2003年販』東洋経済新報社 2003年
  • 厚生労働省『海外情勢白書』日本労働研究機構 2002年
  • 仲村優一、阿部志郎、一番ケ瀬康子『世界の社会福祉年鑑 2002』旬報社 2002年



■■レポートを書くコツは「教科書に学べ」だった■■

国際福祉総合講座という科目名称から想像がつきますが、科目概要を読んでもわかるように、非常に幅広い領域を学ばせようとする科目です。


一方、学習のポイントや設題を読むと、とても高度なことを要求されているように感じます。


「日本と欧米、アジア諸国の社会保障システムを様々な角度から比較・分析し」


とか

「今後の日本の社会保障はどのようにあるべきか、自分の考えを述べよ」


なんて


難しいと感じることがあります。

分析をしろといっても、どの程度分析すればいいのか分からないですし、今後の方向性っていってもなんだかよくわからない

これが正直なところですよね。


こういう問題への打開策は、やはり指定教科書の熟読です。

社会福祉士ドットコムのレポート講座で度々指摘していることですが、レポートの基本は、教科書の熟読です。


特に通信制大学では、教科書は先生と同じ存在です。


教科書をよく読むと・・・・


設題に対する回答のヒントになることが書いてあることに気付くことが多いのです。

まさしく、

  • 教科書に学べ
  • 参考文献は、意見の偏りを避けるためにある

ということになります。


もちろん、これには例外があります。


教科書があまりにも難しいものであったり、分かりにくいものであれば、仕方がありません。


他の書籍を参考にしてレポートを書くことになります。


ただし、一応は教科書を参考したという前提でレポートを書いてください。


基本、教科書に、レポートのヒントは隠されています。


参考文献は、そのヒントを探すためのツールだと考えるとよいでしょう。

学習のポイントにあるように、このレポートでは、自分の考えを述べる必要があります。


当然ですが、自分の考えは、どこのテキストにも載ってはいません。


テキストに書いてあることに、たとえ同意したとしても、まったく同じ考えをしている人がいたとしても、その文をコピペする訳にはいきません。


だからこそ、教科書を読みながら、よく考えることが大切となります。

今回のレポートの評価票です。甘めの評価をしてくださる先生でした。

国際福祉総合講座2評価票


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