社会福祉士科目終了試験実例(生涯発達心理学)

科目終了試験対策にお悩みの方へ

記述式試験における試験メモの作成例をここに提示します。
科目終了試験は、一般的には、資料参照の許可がされず、1000文字程度で設題に対して回答させる形式の学校が多くなっています。

そのため、メモはあくまで試験勉強に使用するものであり、試験当日は必ずしもメモ通りの文章を書けるとは限りません。
回答文章の概要と、大まかな論理展開をイメージし、記憶として定着させることで試験本番に挑む形となります。

ところが、最近では、インターネット環境を利用した試験を行う大学が増えました。
中には、資料参照可の大学があったり、科目によって多肢選択式の問題を採用しているところもあります。
しかし、その場合でも時間制限はありますので、やはり一時メモに要点をまとめたり、一時資料を用意するなどして学習準備をする必要性はあります。

こうしたメモを作成する過程自体が試験対策となりますので、指定された教科書をよく読んで試験にとりかかることをお勧めします。

科目終了試験学習のポイント(科目終了試験問題)

  1. ライフサイクルからみた人間の発達について(現代女性のライフスタイルも含む)
  2. 発達のメカニズムについて
  3. 現代の発達環境について
  4. 知覚と思考の発達について
  5. 情動と欲求の発達について

問1「ライフサイクルからみた人間の発達について」(現代女性のライフスタイルも含む)


 ライフサイクルの基本的概念は、人間の生命や人生には成長の諸段階があり、各段階は相互に関連した一連の連鎖を形成しているというものである。
 こうした概念は古くから存在していたが、中でもエリクソンが、個体発達分化の図式において、人間の一生を、(1)乳児期、(2)幼児期初期、(3)遊戯期、(4)学童期、(5)青年期、(6)前成人期、(7)成人期、(8)老年期の8段階に分け、それぞれの段階に固有の心理社会的課題と危機が存在するとしたことの意義は大きい。
 エリクソンのライフ・サイクル論は、長寿化や成人期における生き方や価値観の多様化という、今日の時代的変化の中で、これまで取り扱われることの少なかった青年期以降の成人の発達において有用な考えをもたらしたといえる。
 近年、延長傾向にある青年期は、将来の選択肢や可能性が増えた分だけ、その発達課題である「アイデンティティの確立」が困難になってきているといわれている。
 特に、女性の青年期における「アイデンティティの確立」は困難を極めている。かつては、結婚して専業主婦となり、子供を育てるのが当たり前の選択肢と考えられていたものが、現在では結婚をしないという選択肢や、結婚をしないで子供を育てるというシングルマザーなどの選択肢も珍しくなくなっている。
 こうした背景には、女性が高学歴化し、社会進出することによって、経済的に自立してきたことや、「男は仕事、女は家庭」という伝統的な性役割について、女性側が疑問符を投げかけるようになったことが考えられる。
 ところが、こうした女性の自立心の向上とは裏腹に、結婚したいと考える女性は依然として居なくならない。それはエリクソンが前成人期以降の発達課題として、他者との親密な関係作りや、次世代である子供を産み育てることの重要性を挙げているように「人間という存在は、生まれてから死に至るまでの間、人との関わりなくして発達することはできない」という普遍の原則を示すものであるといえよう。
 価値観の多様化した現代においては、必ずしも結婚という制度にとらわれることはないが、少なくとも家族を中心とした人間同士のつながりが、人間を大きく発達させてくれるものであることは確かである。

問2「発達のメカニズムについて」

 人間の発達における重要な要素は、遺伝と環境である。そして遺伝的要因と環境的要因が発達の法則に関係している。発達のメカニズムについて以下に述べる。
(1)遺伝について
 遺伝子を通じて両親の形質が子に伝わることを遺伝という。受精のときに精子と卵子が持つ情報により、人間としての特性や、両親個々の特性が子に伝わるのである。遺伝子はいわば、子の発生における設計図ともいえるものである。しかし、何らかの原因によって病的な遺伝子が親から子へと伝えられた場合、遺伝性疾患や染色体異常など、遺伝に起因する障害が生じることがある。
(2)環境について
 どのような環境に置かれるかは、子の発達にとって重要な問題である。例えば、胎児期において、母親が過度な喫煙・飲酒をすれば胎児に悪影響が及ぶ。そして生まれてからは、どのような親にどのような養育を受けるか、あるいはどのような栄養を摂取するかによって、発達の度合いが違ってくる。暴力や育児放棄などの身体的・精神的虐待が継続された場合、子供の人格上の発達において重大な障害がもたらされる。
(3)発達の法則について
 人間の一生は、乳児期、幼児期、児童期、青年期、成人期、老人期など、特徴ある段階に区別することができる。発達は、それぞれの段階において、斬新的・連続的に起こるのであって、特定の段階を飛び越えて発達するようなことはない。言葉の発達も同様で、まず喃語(なんご)から始まり、徐々に有意味な言葉が出現してくる。身体上の発達については、まず胴部の発達が進み、首がすわり、腕、手首、指というように身体の中心から周辺部への方向性が認められる。発達のリズムについて、生後は、急激に身長が伸び、その後は緩やかとなるが、青年期になって再び急激に伸びるなど、周期性がみられる。
 総じて発達には、遺伝や環境の要因によって、歩き始めや発語の時期などについて、個人差が生じるのが通常とされる。
(4)まとめ
 発達のメカニズムそのものは、遺伝子の中に多くの要因が含まれている。しかし、そのメカニズムを十分に発揮するためには、環境要因がより重要になってくるといえよう。なぜなら人間は、環境の中からさまざまなことを学びとり、成長する能力を持つ存在だからである。

問3「現代の発達環境について」

 家庭は子供にとって、人間関係の基礎、社会性、基本的な生活習慣などを身につけるうえで重要な役割を果たすものである。しかし、現代の家庭は、核家族化・少子化の進行などの要因から、必ずしも子供にとって望ましい発達環境を提供しているとはいえない。
 現在、子供は少なく生んで大切に育てるという文化が定着しており、親の子供に対する養育態度は過保護・過干渉となりがちである。幼い頃から欲しがるものは何でも買い与えるため、概して物を大切にする心が育ちにくく、兄弟姉妹が少ないことから喧嘩する機会も少ない。おまけに子供部屋と称して個室を与え、勉強ができることを重視した教育を施すため、子供は他者に対するノイズへの耐性が低いまま、パーソナリティを形成していくことが多くなる。
 そして小学校にも上がると、いよいよ本格的な勉強が始まるため、親は子供に過剰な期待をかけるようになる。勉強のできる子が、良い子とされ、半ば塾通いを強制し、子供が外で遊ぶ機会は制限される。
 もっとも、外で遊ぼうにも、自然環境の少ない、都市化された街では、遊び場も限られているから同じことであるという側面もある。さらに最近では、子供を対象にした誘拐などの犯罪が多発している事情から、昔のように地域の子供がグループを組んで、探検などの小さな冒険ごっこをするなどの光景はほとんどみられなくなってきている。
 こうして、子供たちの遊びは、塾通いの合間をぬって室内でできる、テレビゲームやテレビ鑑賞、漫画本を読むなどの、マスメディアを利用したものが中心となってくるのである。
 近年、こうしたマスメディアの浸透は、子供の知識や情報量を飛躍的に拡大させ、技術革新の変化に対する柔軟性を身につけさせたという評価がある一方で、過激な暴力シーンや性描写に溢れており、子供の発達に少なからず悪影響を与えているとの批判も存在している。
 以上のように、現代の発達環境は、急速な社会環境の変化に大きな影響を受けている。現実的には、子供の発達を阻害する社会環境の要因を全て排除することは難しいが、親の養育態度に起因する発達環境の改善を図ることはできよう。子供にとって家庭の親は、重要な発達環境の一つといえる存在なのである。

問4「知覚と思考の発達について」

 ここでは、主に幼児の知覚と思考の発達について述べる。
 スイスの発達心理学者であるピアジェは、4~6歳頃の幼児は、個々の対象に関する保存性は獲得していても、要素の集まりについての全体概念では、必ずしも保存性を獲得していないとして、幼児の知覚と思考に関する次のような例を示している。
 幅広い形状をしたコップAと、細長い形状をしたコップBがある。A・Bのコップの容積値は同じで、同じ量の水が入っている。これを4~6歳頃の幼児は、見かけ上の水面の高さから、コップBの方がたくさんの水が入っていると捉えてしまう。
 また、コップAに満たした水を、水の入っていない、空のコップBに注いだ場合は、水量が増えたなどと捉えてしまう。
 以上の例は、幼児からみて「水面の高さが上がっても、その分、コップの幅が狭いのだから、水の容量は同じ程度である」という思考が働かないから、このようなことが起きるのである。
 しかし、7歳以降にもなると、(1)水面の高さという、特定の知覚的次元のみで判断するのではなく、(2)コップの幅という、他の関係ある知覚的次元にも注意を払えるようになり、両者を共に考慮して、思考をめぐらすことができるようになってくるのである。
 さらに、コップAに満たした水を、水の入っていないコップBに注ぎ、コップBの水を、またコップAに戻せば、水量は元通りになるという、前の状態と今の状態を比較検討する「可逆的思考」も順次できるようになってくる。
 こうして幼児は、知覚と思考を発達させていくのである。

問5「情動と欲求の発達について」

 ここでは、主に新生児期、乳児期における、情動と欲求の発達について述べる。
 簡単に言ってしまえば、(1)情動とは「〇〇な気持ち」であり、(2)欲求とは「〇〇がしたい」ということを意味する。
 (1)情動には、喜び、恐れ、悲しみなどがあり、(2)欲求には、食欲、排泄欲などの「生理的欲求」と、愛情欲・独立欲などの「社会・人格的欲求「がある。
 こうした情動や欲求は、生まれて間もない新生児に、全てが備わっている訳ではない。例えば、新生児期に現れる微笑は、自発的微笑、または生理的微笑といわれており、外部の刺激とは無関係な、筋肉の弛緩と緊張の結果であると考えられている。
 ところが、母親から見れば、新生児の微笑は「わが子は私を見て笑った」というふうに解釈され、この上ない愛情を感じさせるものとなる。したがって母親は、わが子の微笑をさらに引き出そうとして、働きかけを強めるようになる。例えば、わが子が泣けば、オムツをせっせと交換し、夜泣きをすれば抱きしめ、あやすといった愛情のこもった養育を提供するようになるのである。
 一方、新生児から見れば、こうした母親の行動は、新生児の欲求を満たすことになり、望ましいこととなる。最初は、自発的・生理的微笑であったとしても、微笑をすることによって、母親から欲求を満たされ、愛されることを学ぶようになると、徐々に母親からの情緒的な働きかけに対して、応答を強めるようになる。つまり、自らの欲求を満たすための手段として、母親の情緒に反応する行動をとるようになるのである。
 その後、母子間の相互交渉を伴う活発なやりとりの中で、徐々に乳児の「社会的微笑」が出現するようになる。そして生後6か月以降にもなると、乳児は、人を選んで微笑を向けるようになり、知らない人に対しては警戒心を見せ、人見知りをするようにもなる。
 こうして、情動と欲求は発達していく。そしてこのことは、母子間のコミュニケーションが情動と欲求の発達において、いかに重要であるかを物語っているといえよう。

参考文献
平山諭也編著『発達心理学の基礎Ⅰ・Ⅱ』ミネルヴァ書房

科目終了試験において常に意識すべきこと

論述式の試験の場合は、次の点に注意します。

  • 常に制限時間を意識する(時間切れで文章が尻切れトンボにならないようにする)
  • 書くことの概要を設計してから書き始める(序論・本論・結論で何を書くのかを簡単にメモ書きしてから書く)
  • 細かいところにこだわらず、全体として筋道が通っているかに留意する
  • わからない漢字があったら、とりあえずひらがな・カタカナで代用し、あとで漢字を思い出せれば、修正する

ある程度文章を書いてしまって、あとから書き直そうとしても時間がないことが多いので、最初に決めることが肝要です。

用意した原稿を一字一句正確に記憶する必要はありません。
それは、しようとしても無理があります。


あくまで、大まかなところを記憶するように準備しましょう。
ただし、該当科目や設題のキーワードについては、明らかな誤解の記述がないように対策をしておきます。

例えば、
スイスの発達心理学者であるピアジェ
というところを、

フロイト
と書いてしまわないように、キーワードについては、正確に暗記するということになります。


スポンサーリンク



コメントは受け付けていません。

サブコンテンツ

このページの先頭へ