社会福祉士科目終了試験実例(臨床心理学)

科目終了試験対策にお悩みの方へ

記述式試験における試験メモの作成例をここに提示します。
科目終了試験は、一般的には、資料参照の許可がされず、1000文字程度で設題に対して回答させる形式の学校が多くなっています。

そのため、メモはあくまで試験勉強に使用するものであり、試験当日は必ずしもメモ通りの文章を書けるとは限りません。

解答文章の概要と、大まかな論理展開をイメージし、記憶として定着させることで試験本番に挑む形となります。

ところが、最近では、インターネット環境を利用した試験を行う大学が増えました。
中には、資料参照可の大学があったり、科目によって多肢選択式の問題を採用しているところもあります。

しかし、その場合でも時間制限はありますので、やはり一時メモに要点をまとめたり、一時資料を用意するなどして学習準備をする必要性はあります。

こうしたメモを作成する過程自体が試験対策となりますので、指定された教科書をよく読んで試験にとりかかることをお勧めします。

では、具体的な例を示しましょう。
あくまで、文章の書き方の一例を示したものですので、実際の筆記試験においては限られた時間内で必要な内容が伝わるように解答していく必要があることに注意してください。

科目終了試験学習のポイント(科目終了試験問題)

  1. 臨床心理学とは何か
  2. 青年期の特徴について
  3. 不登校について
  4. 老年期の臨床問題について
  5. 地域における臨床心理学的援助について

問1「臨床心理学とは何か」

 臨床心理学とは、心身の不調や環境への不適応に悩む人々に、主として心理学的な知識と方法によって援助の手を差し伸ぺ、人々の心の成熟と癒しに役立とうとするものである。また、そのための技法を追求し、理論を深めていく学問である。


 まず、第1に、臨床心理学は、心と身体の密接な関わりを重視するものである。心の内部の悩みや葛藤が、身体の症状になって現れるのであり、したがって身体面に現れた病気であっても、その根本的治療のためには、心に働きかける必要があると考えるのである。


 第2に、臨床心理学は「何か適応で、何か不適応か」について深く考察するものである。例えぱ、不登校の少年に対して、一方的に不適応と決めつけるのではなく「学校に行かないことで自らの安定を図っている」というように、客観的には不適応とみなされても「本人にとっては適応への試みであるかもしれない」と考えるのである.


 第3に、臨床心理李は、哲学.社会字、精紳医学といった近接する諸科学の成果を取り入れた知識と方法を柔軟に使っていく姿勢が強調される。臨床心理学が人間を対象とするものである以上、心理学という学問領域だけに固執するのはよくないと考えるのである。


 第4に、臨床心理学は「心理療法」「カウンセリング」などにおいて、医学的治療のように、病前への復帰のみを目的とするのではなく、病前の状態よりもー歩進んだ成熟の達成を目的とするものである。心理的治療を通して、病気の基礎となっていたパーソナリティが改善され、より柔軟で成熟したパーソナリティが獲得されることで、病から抜け出せると考えるのである。


 第5に、総括して臨床心理学は、実践的幸間であるということがいえる。それは臨床の現場と深く関わるものであり、臨床の現場から絶えず問い直されるものである。理論としていかに優れていても、実際に役立たなければ意味は半減する。もちろん理論に裏打ちされない実践は浅薄であるから、枠組みとしての理論は不可欠である。しかし、理論は固定したものであっては駄目で、臨床現場の生きた体験の中で常に修正され、深められていくべきものである。

問2「青年期の特徴について」

 青年期は「自分とは何か」の問いに向き合い始め、自分を知り、自分の全体像を把握するまでの時期である。


 中学生くらいから第2次性徴が現れ、性衝動が活発化すると、自分で自分の変化に戸惑うようになる。発達してきた自我は、これまでのように親や教師を頼ることをよしとしなくなる。大人は自立を阻む疎ましい存在と感じなからも.まだ未熟な自分は一人で考えるには心もとなく、親に依存したい気持ちもあったりする。


 自立か依存かの葛藤を共有するのは、多くの場合同じ状況にある友人である。友人と悩みを語るうちに、次第にさまざまな状況でカメレオンのごとく姿を変える自分でありながら.そのどの場面にも存在する「自分」というものが、おぼろげに形成されてくる。そして自分の興味、価値観、能力が自覚され、将来進むべく道が見えてくる。これが自我同一性の獲得である。


 この時期には、十分に葛藤し、友人と悩みや考えを分かち合うことが重要となる。こうした体験の不足からいつまでも同一性を獲得できずに「自分がわからない」「何をすれぱよいかわからない」という状態になる青年は多い。これが同一性拡散の状態である。


 最近は、価値懐の多様化、選択肢の増加などによって、自我同一性の獲得が難しくなってきている。そのためモラトリアム(猶予期間)は、ますます延長される傾向にある。


 一方、非行、家庭内暴力、不登校、拒食などの不適応行動が現れるのも青年期の特徴である。こうした不適応行動は程度の差こそあれ、今や多くの青年に生じえることとなってきている。また不適応行動を乗り越えるところに青年の成長があるという側面があったり、不適応行動の多くは一時的な現象であることから、問題が見過ごされてしまう場合がある。


 しかし、過度の暴力・拒食など、生命の危機に至る不適応行動もあるから、不適応行動の全てを一時的な現象として軽んじるのは危険である。また、表面的には同じ行動にみえても、原因はそれぞれ異なっている場合もあるから、青年を画一的に解釈しようとせずに、その不適応行動の裏にある「メッセージ」を見逃さないようにすることが重要となる。


 以上のように青年期は、発達心理学的に観ても、臨床心理学的に観ても、まさに混乱の時代である。今後は、悩みの多い青年期の若者に対して、いかに有効なアプローチをしていくかを考えていく必娶がある。

問3「不登校について」

 不登校の原因や背景は多様である。友人関係や学業不振というた学校生活に起因するものもあれば、親子関係・家庭内不和・家庭の生活環境の変化といった家庭生活に起因するものもある。中には原因や背景がはっきりとは分からない場合もある。このように不登校に至る原因や背景は多様であり、また複数の要因が絡んでいることも多いから。その対応は判で押したように同じであってはならない。


 例えば、長期化している不登校のケースを考えてみる。この場合、もともと存在していた不登校のきっかけに、別の要因が重なることで、ますます学校に行きづらくなってしまうことが考えられる。


 まず不登校の少年は、長期間欠席することで勉強の遅れが目立ち始める。親からは「学校に行きなさい」とプレッシャーを受ける。やがて「どうせ自分なんか何をしても駄目だ」と無気力感を募らせ、家族に暴力ふるったり、自室に引きこもるようになったりする。


 このように、不登校が長期化することで、もともとのきっかけとは別に、二次的な問題まで生じさせることがあり、不登校の少年は、ますます辛い状況に立たされることになる。そのため、不登校の初期の段階で、周囲が異変に気づき、適切な支援を斤うことは重要である。


 しかしなから、不登校の少年を登校させることばかり重視し、無理やり学校に連れ出そうとするのは、心理的に追い詰める結果となり逆効果である。まずは、少年が不登校せざるを得なくなった気持ちや状況を理解する姿勢を持ち、信頼関係を築くことか先決である。その上で、少年の心理状態や状況に合わせた支援を考えなければならない。


 そのためには、担任の教師はもちろん、スクールカウンセラーなどの専門家や、フリースクール・適応指導教室といった学校以外の機関との緊密な連携が不可欠である。


 また、増大を続けている不登校の社会的背景の一つとして、多くの生徒が学業に興味を失っているという事実が指摘されていることから、教師が生徒一人ひとりに対して、きめの細かい配慮ができるように「各教室に教師が1人しかいない」「教育以外の校務を教師が兼任している」といった教育制度の現状を改善していくことも、不登校を減らしていく上で有効である。

問4「老年期の臨床問題について」

 日本の高齢化は今も急速に進んでいる。臨床心理学から観た老年期の臨床問題はさまざまであるが、まず、老年期が喪失の時代であるという問題がある。つまり、加齢による心身の健康の喪失、社会や家庭における立場や役割の喪失、さらに人間関係の喪失などである。これら老年期の喪失体験が大きな埋めがたい空洞を生じさせ、無気力や、うつ状態に陥るケースが多い。したがって、これら喪失体験から生じる高齢者の精神面をどう援助していくかは大きな課題であるといえる。


 高齢者の中には、家庭を離れて介護施設などに入所する人がいる。施設入所は、従来の生活や生き方を一変させることであり、適応力の衰えた時期に厳しい適応を迫られることである。施設では満たされない精神的部分をどう埋めるのか、それに対する臨床心理学的な関わりが重要である。こうしたことから最近では、入所高齢者に対して心理療法を実施している施設も出てきている。


 また、高齢者の生活の場がどこであれ、老年期は老いが進むにつれて慢性的疾病や、日常生活動作の低下が顕著になる時期である。その極端なものが「寝たきり状態」である。これは老年期のストレスの元になる。たとえ寝たきりであっても、人間の心を失うことなく生きがいを持てるようにするには何ができるかを臨床心理学は考えなければならない。


 そして寝たきり状態と並んで「老人性痴呆(認知症)」の問題もある。痴呆の中でも脳血管性痴呆は、判断力が部分的に保たれる傾向があるため、自らの障害に対する心因反応を起こしやすい。また、アルツハイマー型痴呆でも、自らの障害に対する戸惑いや不安は存在する。したがって、痴呆性高齢者に対する関わり方は、本人の感じている戸惑い・不安・ストレスなどに共感し、本人の構成している世界を共有することか重要となる。


 その他、うつ病の症状である「自殺」の問題もある。老年期は親しい者との死別を経験したり、健康上の不安を抱えていることが多いため、自殺の可能性が高い時期である。抑うつ症状を軽減するためには、投薬による症状の軽減や、周囲の人達の暖かい受容と共に、心理療法などの臨床心理学的な関わりが必要である。


 このように老年期における高齢者の関わりについては、臨床心理学に基づいた対応が必要な場面が多く存在する。しかし、その研究は始まったばかりで、今後の臨床実践に基づいた研究が一層求められている。

問5「地域における臨床心理学的援助について」

 地域における臨床心理学的援助の中心的役割を果たしているのは、児童相談所、保健所、精神保健センタ一などである。これらの機関には、専門的技術や知識を持った人材が配置されており、地域の心理的問題に対処する上で重要な役割を果たしている。しかし、実際には地域のさまざまな社会資源の協力がなければ、これらの相談機関も十分にその機能を発揮することはできない。


 例えば、反抗期の少年による不登校の場合、本人が相談機関に訪れることは少ない。むしろ家族が心配して相談機関に訪れることから援助が始まることが多い。つまりこの場合、家族という社会資源の協力が、不登校の少年に対する援助に重要な機能を果たしているといえる。


 また、相談機関が他の機関と緊密な連携をとることも、地域における臨床心理学的援助の重要な要件である。特に不登校の場合は、親子関係だけでなく、学校と生徒の関係も重要な要素であることから、相談機関と教育機関の連携は不可欠である。しかしわが国では、相談機関と教青機関との連携は必ずしも十分ではない。その背景には、担任の教師の中に過剰な責任感があったり、自らの力不足を恥じる気持ちが働いているなどの要因が考えられる。


 もちろん専門機関どうしが連携をとれぱ.それだけで不登校の問題に対処できる訳ではない。また、このことは不登校に限らず、他の問題についても同様に言えることである。


 地域における実際の問題に対処するには、さまざまな立場の人・組織・機関からのアプローチが必要である。例えば.電話により危機介入を行うことを目的とする「いのちの電話」か挙げられる。こうした非専門家といわれる地域の人々による援助は、援助者の属性によっては、特有の役割を果たすことが可能であり、専門家による援助とは違った意味で有効となる。


 現在、地域における臨床心理学的援助は,さまざまな立場の人・組織・機関によって取り組まれている。しかし、それらは必ずしも有機的な連携を成しているとはいえない。今後は.社会休系の変革による、個人と社会システム間の適合性改善をアプローチの目標とする「コミュニティアプローチ」の視点を持つことで.地域における援助力の向上をはかることが望まれる。

参考文献
牧正興他編著『臨床心理学の理論と実践』ミネルヴァ書房

ワンポイント科目終了試験対策

論述式の試験は、下書き原稿を準備していたとしても一字一句間違えずに暗記した文章を書くことは無理です。

あくまで「どういうことを書くか」という要点が自分の中でまとまっていることが大切です。

ですので、暗記という細かいことにとらわれずに、ここはバラエティ番組のタレントにでもなったつもりで台本を頭の中に入れておくという程度にとらえておけばいいでしょう。

試験前の1週間は上記のような試験メモを繰り返し読んで概要を頭の中に入れたり、実際に時計で時間を計って紙に解答を書き出してみるというアウトプットをしておくことが対策としては有効です。

「試験対策なんて面倒くさいな」と思うかも知れませんが、苦労して単位をとったことが、後々いい思い出になりますので、ここはひとつ思い切り勉強しておくことをお勧めします。

社会福祉士の資格が取り終わって、社会福祉の現場に出ると、いつしか「一番楽しかったのは学生時代だったな」と思うときがあるでしょう。

ひとたび現場に出てしまうと、学問的なことからは遠ざかることが多いですからね。

要する何が言いたいかというと、に大学で勉強している時間というのは、とても貴重な時間ですので、楽しむというつもりで科目終了試験に挑んでもらえれば、サクサク単位が修得していけると思いますよということです。


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