社会福祉士レポート実例(障害児・者の心理-設題1)

社会福祉士のレポート作成にお悩みの方へ

実際のレポート作成例をここに提示します。


社会福祉士が、相談援助職に就いたとき、障害者の心理を理解しておくことは非常に重要です。


もちろん座学としての心理学を学んだ程度で、人の心理が理解できるものではありませんが、理解のための一歩としては有効です。

ポイント(学習ガイドより)

障害児・者に共通する不安や欲求不満、劣等感等と、それに基づく適応機制についてまとめること。また、障害児・者の学習や社会的適応を困難にしている環境要因を踏まえた上で、求められる適切な指導や援助について考察すること。

科目概要(学習ガイドより)

 初めに、発達期の障害児の心理を、それぞれに個性があり発達の可能性を十分にもっていることを前提にしながら障害の種類(視覚障害児、聴覚障害児、肢体不自由児〔脳性まひ児〕、知的障害児、自閉症児、学習障害児、注意欠陥・多動児)ごとに学習する。次に、社会を構成する成人期の障害者の心理を家族、地域、働き手としての立場からそれぞれ考察する。

設題1

「心身障害児・者の共通する心理的問題は何か述べなさい。」

 障害児・者は、健常児・者と共通する心理的問題を抱えているのに加えて、障害児・者独自の心理的問題をも抱えている。障害児・者に共通する心理的問題を考える上では、この独自の心理的問題に着目する必要がある。
 ここでは、機能障害に由来する障害児・者の心理状態と、環境要因に由来する障害児・者の学習と社会的適応という2つの側面から、障害児・者の共通する心理的問題について述べる。また、障害児・者に対して求められる適切な指導や援助についても考察する。

1.障害児・者の心理状態と適応規制
 機能不全や機能喪失などの機能障害は、障害児・者に欲求不満・不安・劣等感といった心理状態をもたらす要因となる。これらの特徴と、対応する適応機制について述べる。
(1)欲求不満
 人間として誰もが持っている生理的・人格的欲求といった基本的要求の充足が阻止されたとき、心理的に不愉快な状態となることによって生じるものが欲求不満である。基本的要求は、環境的・主体的な障壁と、障害児・者にとってプラスアルファの障壁である「機能障害」によって阻止されることが多い。
 機能障害には、視覚障害、聴覚障害、知的障害、運動障害、健康障害、言語障害、情緒障害などがある。これらは克服するのが困難であるばかりでなく、障害児・者の要求の実現をしばしば妨害する要因となる。
(2)不安
 漠然とした対象や、不明な対象への恐れの感情が不安である。例えば、卒業を控えた養護学校の生徒が卒業後の進路に対して「機能障害があるために就職できないのではないか」「一般の人と対等に付き合えないのではないか」という不安がある。あるいは「機能障害が今よりも悪くなるのではないか」「機能障害があるから一人で外出したときに困るのではないか」という不安もある。
 総じて、障害児・者にとっての機能障害は、適切な行動をとることを難しくさせ、失敗を経験させることが多いから「また失敗するのではないか」という不安を招きやすくさせるものとなる。
(3)劣等感
 他者と比べて自分が劣るという感情が劣等感である。例えば「障害のある自分は人間として劣った存在だ」という感情である。こうした劣等感は、2種類に大別することができる。第1は、例えば、陸上競技の記録のように優劣が数値として明確に現れるもので、障害児・者が他者と比較して自分は劣っていると感じる場合である。第2は、他者と比べて自分が劣っているかどうかが曖昧なのにもかかわらず、実際よりも、もっと劣っていると悩む場合である。
(4)適応機制
 機能障害に由来する、欲求不満・不安・劣等感等の共通した心理的問題を抱える障害児・者は、様々な適応機制を用いることで心の平衡状態を保っている。適応機制には、例えば次のようなものがある。
① 身の周りのことが自分でできないという欲求不満を抱える視覚障害児・者が、専門家の適切な訓練を受けることで、少しでも機能障害の改善のために努力をする。
② 病気が今より悪化するのではという不安を抱えている健康障害児・者が、専門の医療機関で診察を受けるなどして不安(健康状態)の正体を明らかにし、不安を軽減する。
③ 支配と優越を求める要求が満たされずに劣等感を抱えている運動障害児・者が、スポーツではなく、勉強で要求を満たす。

2.学習と社会的適応を困難にする養育環境と社会環境
 障害児・者は、心理的に不安定で依存度が強く、幼稚で退行的であるという一つの見方がある。こうしたパーソナリティの形成は、障害児・者を取りまく養育環境と社会環境に関係がある。そして養育環境と社会環境は、障害児・者の学習や社会的適応にも影響を及ぼしている。次にその特徴を述べる。
(1)養育環境
 障害児の親は、不適切な養育を施してしまうことがある。例えば、我が子が可哀相だからといって親が何でもしてしまう。機能障害を克服させようとするあまり、各地の医療機関へ連れ回して訓練ばかりさせる。我が子にどう接したらよいか分からずに子供を放置してしまう。安全を過度に重視して少しでも危険性のある遊びは禁止してしまうといった具合にである。また、乳幼児期の障害児の中には、長期間に渡って施設や病院などに入所することがあるが、これが母性的養育の剥奪に繋がれば、ホスピタリズムと同じ問題を生じさせることがある。
 不適切な養育環境は、障害児を社会的に望ましくないパーソナリティにして、学習意欲や社会的適応力を弱める一因となる。
(2)社会環境
 社会が障害児・者をどのように捉えているかが社会環境に該当する。現代社会は障害児・者をよく知らなかったり(無知)、誤った理解をしていたり(誤解)、一方的な感情の表出をしている(憐憫)ことがある。こうした社会環境は、障害児・者の欲求不満・不安・劣等感を助長するなどの心理的な影響を与え、その社会的適応力を弱める一因となる。
 また、このような社会環境は、障害児・者の学習環境を整備する上での阻害要因ともなる。近くに養護学校がないなど、障害児に適した指導の場が少なかったり、視覚障害児・者向けの点字図書が少ないなど、適切な教材教具が不足しているといった学習環境の諸問題は、社会の障害児・者に対する捉え方と関係がある。

3.障害児・者に対する適切な指導・援助
 以上のことから、障害児・者は、健常児・者と比べて、より多くのフラストレーションにさらされており、また不適切な養育環境や社会環境によって、多くのハンデを課されている状態にある人達であるといえる。
 障害児・者がこうした事態を乗り越えるためには、フラストレーショントレランス(欲求阻止耐忍度)を高め、社会的に望ましい適応機制によって、その心理的問題を克服するための指導や援助が中心となる。なぜならフラストレーショントレランスを高くすれば、学習や社会的適応力においても望ましい結果を得ることができると考えられるからである。
 もちろん、障害児・者の中には、逆境の中にあっても明るく前向きに生きているなど、様々な人がいるから、指導や援助においては個別性に十分配慮しなければならない。その上で個々人に、どのような欲求不満・不安・劣等感かあるかを理解し、適切な適応機制が達成できるような指導や援助を実施する。
 また、障害児・者の学習や社会的適応力を高めるためには、それぞれの機能障害に応じた訓練を実施したり、家族に対する心理的な援助も求められる。例えば、視覚障害者の学習において、入力不足のために学習困難に陥っているのであれば、聴覚・触覚といった代わりの感覚を利用して不足を補うための訓練を実施する。あるいは障害児の親が不適切な養育を施しているならば、まず親の心理を受容した上で、愛情の原理・経験の原理・自己完成の原理に基づいた、障害児を溺愛するでも、拒否するでもない、適切な養育を施せるように、指導・援助していくのである。
 結局、障害児・者の共通する心理的問題は、障害児・者自身が機能障害や社会環境を、どう乗り越え、どう受け入れていくかという部分にある。したがって、その指導・援助にあたっては、障害児・者が自らを「かけがえのない存在である」と感じられるような関わりをしていくことが重要であるといえる。


【参考文献】

  1. 石部元雄、伊藤隆二、鈴木昌樹、中野善達(編)『心身障害辞典』福村出版、1983年
  2. 杉村省吾『障害者の心理』一橋出版 1999年
  3. 中司利一『障害者心理』ミネルヴァ書房 2002年
  4. 村井潤一、藤田綾子(編)『老人・障害者の心理』ミネルヴァ書房 1995年



■■レポートで大切なことは、問題に対する解決策よりも、説明の仕方と説得力■■

科目名に「心理」という名称がついているので、心理学系の科目ではあるのですが、内容的には社会福祉寄りの科目です。


高度な心理学の理論を学びたいという人には、方向性の異なる内容の科目といえます。


レポート中では、


障害者が心理的困難の事態を乗り越えるためには、フラストレーショントレランス(欲求阻止耐忍度)を高めることが重要


といったことを書いています。


これが当該科目の重要ポイントです。


いかにも福祉っぽい理論という感じですね。


要は、


我慢強さを高める


ってことですね。


根性論というか、精神論ですね。


指定教科書をよく読むと、そのような主旨のことが書かれているので、あえて否定はせず書いています。


確かに、欲求阻止耐忍度は大切ですしね。


まあ、後は、社会的に好ましい「適応機制」でなんとかしましょうという流れになっています。


でも、


レポート作成で大切なことは、問題に対する解答や解決策よりも、その説明の仕方、つまり論理展開や説得力の方です。


ありきたりの解決策だったとしても、論理的に主張を展開することで高く評価されます。

障害心理評価

序文評価

逆に、独創的な解決策や意見を提示しても、そこに論理性や説得力、さらには学んだ形跡がなければ、思うような評価は得られないでしょう。


その説得力に関してですが、


実体験をもとに文章を書く


というのは、お勧めしたい重要な手法の一つです。


例えば、


「障害者と関われるようなボランティア活動をしてみる」


というのもレポートに役立つ実体験になります。


私の場合、当時は大学4年生で、障害者施設に現場実習で訪れていたという経験がありました。


その時の体験が、間接的ではありますが当レポートに反映されています。


レポートのために、わざわざボランティアをするのは難しいという場合は、参考になりそうな動画を見たり、ニュースに触れたりすることでも、疑似体験をすることは可能です。


ちょっとした想像力を働かせれば、それをレポートに反映させることは可能です。


レポートを書くために経験したことは、物事を考察する上で大きな学ひとなっていることをご存じですか?


大学のレポート教育において、多くの参考文献を読ませるのは、できるだけ広く経験して考察する機会をもって欲しいからです。


経験というのは、何も直接的な行動のみではありません。

  • 本を読むこと
  • 人と会うこと
  • 現場にいってみること
  • 試してみること
  • 動画をみて感想を書いてみること

これらは、皆、行動です。


直接・間接の違いはありますが、立派な経験ですし、その経験から得るものは多いということです。


些細な行動や経験もレポートには役立つことがきっとありますよ。



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