社会福祉士レポート実例(社会福祉援助技術各論ⅠB-設題1)

集団のイメージ

社会福祉士のレポート作成にお悩みの方へ

実際のレポート作成例をここに提示します。
 社会福祉援助技術各論ⅠBは、グループワークについて学習する科目です。
 この科目に先だって、個別援助技術(ケースワーク)の履修を済ませておくと、グループワークについての理解が早まります。
しかし、集団援助技術の中には、個別援助技術の理論も含まれていますので、個別援助技術の科目と同時並行で履修することも効果的です。

設題1

「集団援助技術(グループワーク)についてまとめなさい。」


 集団が人間にもたらす力は、使い方次第でプラスにもマイナスにも作用する。訓練された援助者が専門的技術を用いて、意図的にグループワークを展開し、それによってメンバーが相互作用を発揮したとき、集団は利用者の問題解決力に大きな力を付与する結果となる。
 本設題では、グループワークとは何かについて、その歴史的展開を踏まえた上でまとめていく。

1.グループワークの歴史的展開
 グループワークに求められるものは、その時代の社会的背景に影響を受ける。グループワークが誕生した当初のイギリスやアメリカを調べてみると、当時のグループワークは、青少年の犯罪防止という、社会教育的機能の傾向を伺うことができる。
 例えば、19世紀のイギリスでは、産業革命によって大量の失業者を生み出し、結果として貧困や、青少年犯罪の増加を招いたことから「日曜学校」が発達した。その主因は、公衆を守ることや、青少年に教育を与え、危険性の少ない存在にすることにあったといわれている。
 また、1850年代のアメリカでは、青少年団体やレクリエーションの活動が増加したが、その背景には、余暇を有意義に過ごすことで、子供の犯罪や非行の防止、さらには心身の健全な発達が目的であったとされている。
 社会変動が激しく、貧困問題が顕著であった時代のグループワークは、自然発生的に出現し、社会混乱を防ぐ意味での「集団」を対象とした社会教育的機能が重視されていたのである。

2.現代のグループワーク
 現代の先進国におけるグループワークは、主に資本主義社会の進展、公衆衛生の向上、医療・科学技術の進歩といった社会的背景に影響を受けている。ここでは、グループワークを、対象・構成要素・展開過程に分類してまとめた。
⑴対象
 グループの中にいる個人をその援助対象として、グループを構成する利用者一人ひとりが持つニーズの充足に焦点があてられている(コノプカの言う「グループ内での個別化」)。ここでいうグループとは、2人以上の人間が何らかの共通した意識や目的に基づいて、相互に働きかけ合っているものをいう。グループの人数については、利用者や援助内容によって変化するので、何人が良いという決まりはない。しかし、コノプカが「グループワークの対象とするグループとは、個別化の余地がある対面集団である」と述べていることを考えると「援助者が利用者を個別化できる範囲内の人数」と考えるのが妥当である。
⑵構成要素
①利用者:グループを構成するメンバーである。利用者はマズローの「欲求段階説」で示されるように、生理・安全・所属・承認・自己実現の各欲求を持った存在である。
②援助者:グループワークにおいて中心的役割を果たす存在である。グループを意のままに操る存在ではない。
③相互作用:援助者と利用者、あるいは利用者間によって相互作用が発揮される時、グループの中にいる個人の問題解決力に影響を及ぼす。それはメンバーの総和以上の力を発揮する。相互作用におけるグループの本質は、メンバーの相似・相違性より、メンバーの相互依存性にある。
④援助過程としてのプログラム:主に援助者により計画・実行されるが、あくまで利用者のためのプログラムであり、その実行過程が利用者にどのような相互作用を起こすかが重視される。
⑤援助の目標:目標は援助を効果的なものとするために必要である。目標が利用者の意欲を促進させたり、プログラムの内容を決めたり、援助活動に指針を与えたりする。
⑶展開過程
 準備期、開始期、作業期、終結期の4段階がある。援助者は展開過程の中で、効果的な援助を行うために「波長合わせ」を用いる。これは援助者が利用者の生活状況やニーズ、感情などを事前に理解することである。利用者の感情やニーズは言葉として表されるとは限らず、また、利用者の言葉が正確に感情やニーズを表しているとも限らないので、援助者は敏感な洞察力をもって、それらを正確に受け止めなければならない。
①準備期:援助の開始期に向けてグループの計画を立てたり、利用者に予備的接触をして、出席者の確認をする段階である。援助者は利用者の抱える問題・課題を明確化し、グループを形成する。その際、援助者は、所属機関の同僚などに対して援助の意義や目的を十分に説明し、理解を得ておく必要がある。
②開始期:援助者は、利用者のニーズと援助者の提供するサービスの共通性を明確化し、個人とグループが目指す目的に取り組めるように援助を行う。援助者は利用者同士の緊張や不安を和らげ、自由な発言ができるような雰囲気を作り、お互いがよく知り合えるように配慮する。
③作業期:援助者は、グループのメンバーが自らの目標や課題に取り組めるよう援助する。この段階ではメンバー間の役割が明らかとなり、メンバーの中からリーダー的存在が出てきたりする。また、グループの価値観や規範が形成されたり、メンバー間の対人的結びつきが強くなることもある。援助者は発展していくグループの相互作用が発揮されるように、絶えず側面的援助を行う。
④終結期:グループの目標が達成された場合において、援助は終結期を迎える。援助者はこれを次の生活への移行期として捉え、援助を行う。また、グループのまとめや評価をする段階でもある。

3.まとめ
 今後は、社会福祉の援助過程において、専門の援助者による意図的なグループワークを必要とする場面は多くなっていくと思われる。社会福祉専門職は、意図的なグループプログラム体験の提供を通して、グループ内の相互作用を活用し、グループの中にいる利用者個人の問題解決を図るべくグループワークの技術を高めていく必要がある。

【参考文献】

  • ケニス・E・リード、大利一雄 訳『グループワークの歴史 人格形成から社会的処遇へ』勁草書房 1992年(1~71頁参考)
  • 仲村優一・三浦文夫・阿部志郎『社会福祉教室 増補改訂版』有斐閣選書 1989年(116~124頁参考)
  • 福祉士養成講座編集委員会『社会福祉援助技術論Ⅱ』中央法規 2003年(68~95頁参考)

社会福祉士からのコメント

レポートには、何やら小難しいことが書いてあるように見えますが、集団援助技術の原則は、教科書をよくよく読んでみると「結局常識的なことが書いてあるなあ」と思うとことがよくあります。

  • 援助者は利用者に対して一方的に働きかける存在ではない
  • 集団といっても利用者には個別性があります
  • グループワークをする前には準備があります

こうした常識的なことが原則として書いてあるのが教科書です。
でも「そんなの当たり前です」と切り捨ててしまってはレポートにならないので
なぜ、常識的ともいえる原則が導かれたのかという「理由」の部分に目を向けてみます。
レポートは分かりやすく書くことが求められますが、あまりにも単純に書きすぎると物足りない印象を与えてしまうことがあります。
例えば、教科書には、こう書いてあった。だからこうである。
これで終わりだと物足りない印象になります。
その際は、有名な研究者の述べている理論に触れたりしながら書いていくと、話が膨らみますし、教員から評価をしてもらいやすくなります。この場合ですと、コノプカという研究者が有名です。


コメントは受け付けていません。

サブコンテンツ

このページの先頭へ