社会福祉士レポート実例(社会福祉援助技術演習)

悩む女性

社会福祉士のレポート作成にお悩みの方へ

実際のレポート作成例をここに提示します。
表題の科目名は、大学によっては異なる名称かもしれませんが、福祉系の学生が履修する科目によくある演習系科目です。
なお、レポート作成例は、私が学生時代に書いたレポートを再編集したものです。

設題1

「社会福祉機関、施設、援助者による社会福祉活動で留意すべき点について」

 日本社会福祉士会編「社会福祉士実践事例集」の中から「2-2 知的障害者への就職援助(60~63頁)」を事例として選定し、社会福祉機関、施設、援助者による社会福祉活動で留意すべき点について論じていく。

1.利用者のプロフィール
①本人
 伊藤明子(仮名) 女性 29歳(本施設在籍時当初)
 小・中学校は特殊学級へ通学する。全寮制の養護学校高等部を経て、入所型更生施設へ入所する。入所時の判定で軽度精神遅滞と判定される。療育手帳を所持している。入所更生施設で10年間生活を送った後、地域生活を送ることになる。入所更生施設からの申し送り事項は、(1)物事・人に対して興味は広いが、深く長く集中することは少ない、(2)意に沿わないとき興奮・混乱し、よく泣く、(3)金銭管理・身辺整理が不十分、要指導、(4)肥満体質、要食事制限といった内容であった。
②家族
 父親と妹がいる。父親は病弱で要介護のため自宅で療養中である。妹は仕事が多忙で、結婚・独立を控えており、本人と関わる時間は少ない。

2.事例の概要
 知的障害を持つ明子さんが、入所更生施設から、家庭生活へ戻り、様々な不適応行動と葛藤を繰り返しながらも、最終的に、企業就労・職場定着、世帯分離を果たした事例である。主な関係機関は、精神薄弱(知的障害)者通所更生施設(本施設)・福祉事務所・実習協力企業となっている。

3.援助経過の要点
①第I期(1984年4月~1987年3月)
 地域生活開始直後、父が病弱であることや、妹が結婚・独立を控えていることから、長期の家庭生活の継続が困難と判明する。明子さんは、本施設の作業活動などのプログラムは熱心に参加するが、職場実習では、注意を受けると泣き出すことが多い。家庭においては、無断で金銭を持ち出し浪費するなどの行動がみられる。これに対し、担当職員の援助方針は妹の意向を受けて、最終的にはグループホームでの自活を目指して、金銭管理・食事作り・掃除などの生活指導を重点的に援助を行う。当の本人は新しいことへの意欲は伺えるが、相変わらず実習先や本施設で、生活のことや仕事のことを注意されると泣き出すという状態が続く。職場実習は計3回実施した。
②第Ⅱ期(1987年4月~1988年3月)
 本人の意向を尊重し、生活学習活動や作業に力を入れた援助を行う。施設内の作業では従来職員が行っていた工程をやりたいと訴え、その作業に満足感を示したりする。一方、福祉事務所からグループホームの目安がついたと連絡が入り、本人に入所の話をする。また、CSW(公的なソーシャルワーカー)より本人へ職場実習の意向を確認すると「がんばってみる」と答える。
③第Ⅲ期(1988年4月~5月)
 本人・担当職員・障害担当ワーカーで職業安定所や会社を訪問し、面接を繰り返す。中々就労先は見つからなかったが、部品製作会社に決定した。また、本人にグループホームの利用は延期になったことを伝えるが落胆した様子はみられなかった。4度目の実習に際して担当職員は3点の要望が出される。本人は「約束します」と返答をする。その内容は、(1)毎日作業終了後施設に電話し、その日の報告をする。(2)毎週水曜は実習後に施設に立ち寄り、1週間の報告をする。(3)過去の反省を踏まえ、泣かないで注意を聞いてもらう。以上の3点である。
④第Ⅳ期(1988年6月~10月末日)
 実習は1ヶ月の予定であったが、生産効率上や対人関係の問題があり、正式雇用まで5ヵ月を要する。会社からは「挨拶と返事ができないこと、注意や指示を素直に受け入れられないことがある」といった指摘を受ける。CSWは明子さんに対して面接を通して、本人の意欲が職場定着につながるように、会社から指摘された部分について、具体的な解決方法を示唆する。また定期訪問日以外にも会社を訪れ、本人の過去の実習状況と現在までの成長過程、今後の課題などを説明し、会社内の対人関係の調査も行う。社内の人達から親身な指導を受けたことや、本人の努力もあって正式雇用へとつながる。
⑤第Ⅴ期(1988年11月~1989年3月)
 正式雇用後、本施設は退所するが、グループホームが延期となったので、アフターケアの観点からこれまで同様に対応を続ける。最終的に入所更生施設の寮に入所がきまったことで援助は終結に至る。

4.事例についての考察
①第I期における援助の問題点
 援助を行う上で、次の4点が明子さんの問題行動を解消できなかった要員と考える。
(1)地域生活開始直後に家庭生活の継続が困難であることが確認された点
 これに対してはインテーク段階での、関係機関との連絡・情報交換を濃密に行うべきであった。
(2)援助者が生活指導に重点を置いた援助を行っていた点
 まず利用者との信頼関係(ラポール)を形成してから生活指導を開始すべきであった。
(3)妹の意向を受けてグループホームの利用が検討されていた点
 本人の意向も深く検討すべきであった。
(4)援助者による家族へのアプローチが少ない点
 父親の介護問題、妹の結婚など、家族へのケアについて他機関と連絡・相談を図るべきであった。
②第Ⅱ期意向における援助について
 援助者は、第Ⅱ期以降、利用者の意向を尊重した援助を展開したことで、明子さんの就労意欲を向上させている。また明子さんとの信頼関係も形成できている。その上で、第Ⅲ期以降、明子さんの気持ちに共感的理解を示しながら、3つの要望を出した点が効果的であった。特に第Ⅲ期の実習で「泣かないで注意を聞いてもらう」という要望が守られいている点に注目である。それから、何ヵ月にも渡って挨拶・返事・身だしなみについての助言・指導を根気よく続けたこと、さらには、職場への細やかな働きかけを行い、職場からの協力や、連携につながる援助を実践したことは、明子さんの心理・行動面に働きかける結果をもたらし、問題解決に有効な援助であったと考えられる。

5.社会福祉活動として留意点
 通所更生施設の基本的な機能は、日中における利用者の活動支援である。そして更生に必要な指導及び訓練を行うことを目的としている。こうした更生施設の機能や目的を考えると、更生施設は、本事例第I期のように、利用者の部分的な援助や、生活指導を中心とした援助となりがちとなる。知的障害者を援助する上で、大切なことは利用者の「できない部分」よりも「できる部分」をみることである(ICFの概念)。更生施設はこの点に留意して社会福祉活動を展開する必要がある。
 更生施設は多くの知的障害者が利用してるいことから、家族からの相談をも含めて中心的な役割を果していくことが求められる。しかし、更生施設が利用者の援助において、全ての機能を果たすことは限界がある。したがって、そこに従事する援助者は、他機関・他施設、あるいは地域社会との連携を図って、援助を展開していく必要性があることにも留意しなければならない。

参考文献
1.日本社会福祉士会編「社会福祉士実践事例集」中央法規出版 2004年
2.佐藤克繁・山田州宏・星野政明・増田樹郎「社会福祉援助技術論<応用編>」黎明書房 2003年
3.福祉士養成講座編集委員会「社会福祉援助技術論Ⅱ 第2版」中央法規出版 2003年

社会福祉士からのコメント
演習系科目のため、レポートの書き方としては、指定された教科書(社会福祉士実践事例集)の中から事例をひとつ選択し、まとめ、そのうえで検討するという形式になっています。
取り上げた事例は古い年代のものですが、現在の社会福祉活動で留意すべき点についてあなたが思いつくものがあれば、それをまとめとして書いても良いでしょう。

コメントは受け付けていません。

サブコンテンツ

このページの先頭へ