社会福祉士レポート実例(社会学-設題2)

家族

社会福祉士のレポート作成にお悩みの方へ

実際のレポート作成例をここに提示します。
 社会学は、心理学と同様に、国家試験でも実務でも非常に重要な知識を与えてくれる科目となっています。社会学特有の社会の捉え方を学ぶことは、広い視野を持つべきである社会福祉士には必須の学問といえます。
 家族は、社会学が昔から研究しているテーマです。家族社会学という専門分野があるくらいです。社会福祉分野では、利用者を取り巻く家族関係の力学のなかで、家族に対する理解を深めるのに、実務的に役立つ実学でもあります。

設題2

「家族の構造と機能について述べなさい。」


 近年、家族形態は単身赴任や下宿などにより、住居を共にしていない人を含む家族があったり、養子や里子、その他血縁のない人を含む家族や、婚姻届けを出さずに共に暮らす男女の家族があったりと多種多様である。そのような中「家族」というものの境界は不明確になり、実際には各個人の意識の中にある「家族像」が家族の範囲を決めているといってもよいのではないだろうか。
 本設題では、まず文献により家族の構造と機能を調査した後、家族の役割や、家族が今後どのように変容し、何を必要としているのかを取り上げ、考察する。
 なお、ここでの「家族」という言葉の定義は、社会学者の森岡清美の定義を引用する。すなわち、家族とは、

夫婦・親子・きょうだいなど少数の近親者を主要な成員とし、成員相互の深い感情的な係わり合いで結ばれた、第1次的な福祉志向の集団

となる。では本題に入る。

Ⅰ家族の構造・役割・機能
1.家族の構造
①核家族
 夫婦と未婚の子供で構成される家族のことである。夫婦のみ、ひとり親の家族も含まれる。
②直系家族
 夫婦と1人の既婚の子供と、その家族で構成される。2つの核家族が世代的に、縦に結合した形態である。
③複合家族
 夫婦と複数の既婚の子供と、その家族で構成される。3つ以上の核家族が、世代的(縦)および、世代内的(横)に結合した形態である。
2.家族の役割
 家族の構成員は、家族集団内において、夫・妻・父・母・息子・娘・兄・姉などの地位を与えられている。しかし、その地位には社会的に期待される一定の行動様式や、行動基準があり、すなわちこれが家族構成員の役割である。役割は、家族の機能を遂行するために必要であり、構成員個々の役割の相互協力的・相互補完的な体系が家族の役割構造である。家族の役割構造を役割領域別にみると、①夫婦結合、②子供の保育、③家事労働、④職業労働、⑤家計管理、⑥余暇活動、⑦対社会活動がある。
3.家族の機能
 家族の機能には、①夫婦の愛情と性的欲求を満たす機能、②子供を扶養する機能、③子供を生殖する機能、④衣食住を共にする消費生活機能、⑤経済的生産機能、⑥老人・児童・病弱者を保護する機能、⑦教育機能、⑧娯楽機能がある。
 現代における家族の機能では、①と②が重視されている。また、⑥と⑦に関しては、家族外の社会的サービスに依存する傾向にある。
 以上、文献により、家族の「構造と機能」につて調査した。ここで気が付くことは、森岡氏による家族の定義が、文献調査により得た、家族の「構造と機能」に合致している点である。この理由から、森岡氏の定義は、家族を成り立たせるための必要条件とみなすことができる。

Ⅱ家族の変容
 社会学的な意味での「家族」の規模は、今後縮小し、個人主義が台頭するといわれている。つまり、家族は核家族化していく傾向にあるということだが、そもそも家族は今まで、どのように変容してきたのだろうか。以下にその経過をたどってみる。
第1段階
 社会のために家族が存在している段階である。つまり、家族を子孫繁栄に必要な、子供を生む機能として捉えている段階である。
第2段階
 家族のために個人が存在している段階である。我が国では旧民法により制度化された家制度がこれに該当する。この制度のもとでは、個人より「家」が優先され、戸主を頂点とする家族員相互の上下関係が重視されており、女性は男性より低い地位に置かれていたのが特徴である。
第3段階
 個人のために家族が存在している段階である。現代はこの段階になりつつあり、今後は、さらに進行していくと考えられる。
 以上の3段階を経て、家族は変容してきた。この中で強調するべきは「家制度」である。その理由は、家制度が女性の犠牲の上に成り立っていた制度だからである。
 現在の結婚制度は、日本国憲法第24条に記してあるように、夫婦の合意によってのみ成立するものである。
 つまり、結婚によって作る「生む家族」は、まず個人が自らの幸福のためにパートナーを選び、核家族を構成することから出発する。これが基本である。しかし、結婚の実情は、当事者以外の様々な思惑も絡んでくるものであり、時に結婚が親を始めとする親族との対立を招くこともある。しかし社会の流れは、実質的な平等をめざして進んでいる。その中において、未だに家制度に準じるような差別行為が反発を招くことは必須である。結果として、個人主義が台頭し、核家族が増加したことは、いわば当然の社会現象であるといえよう。

Ⅲ結論
 核家族が増加した背景には、制度的側面だけでなく、国民の家族意識に対する変化も関係している。
 内閣府の平成26年度国民生活に関する世論調査において、家庭の持つ意味について訊ねたところ、「家族の団らんの場」を挙げた者の割合が66.0%、「休息・やすらぎの場」を挙げた者の割合が63.7%と高く、以下「家族の絆(きずな)を強める場」(53.9%)、「親子が共に成長する場」(37.7%)などの順となっている。(複数回答、上位4項目)
 この調査結果は、いずれも家族に情緒的役割を求めている傾向がうかがえる。家事や子供の養育、老人の介護といった核家族の機能的弱点が、社会的サービス(保育・介護サービス)などを購入することで、ある程度補える社会システムにその理由があるといえよう。
 結局、家族にとって必要なものは、金銭では代替できない情緒的側面ということがいえる。ひいては、それが家族の全構成員にとって、重要な機能を果たし、長期的な視野で捉えれば、家族の構造にも影響を与えるものなのである。

【後注】
⑴ 新・社会福祉学習双書編集委員会、81頁参考
⑵⑶ 矢田・夏刈・松岡・仲川、96~99頁参考
⑷ 新・社会福祉学習双書編集委員会、65頁参考
⑸ 福祉士養成講座編集委員会、34頁参考
⑹ 出典:http://survey.gov-online.go.jp/h26/h26-life/2-3.html
  内閣府世論調査より(検索日:2016/4/27)

【文献表】

  • 新・社会福祉学習双書編集委員会「新・社会福祉学習双書 第16巻 社会学」社会福祉法人全国社会福祉協議会 1999年
  • 矢田大雄・夏刈康男・松岡雅裕・仲川秀樹「現代社会の理論と視角」学文社 1996年
  • 福祉士養成講座編集委員会「社会学」中央法規 2002年

社会福祉士からのコメント
家族の在り方は、その時々の社会によって常に変化しています。
インターネットの普及、少子化、晩婚化、ニートの増加、団塊世代の大量退職など、家族の変動要因は、たくさんあります。
ニュースや新聞などで、その辺りのネタをちょっと頭に入れて、レポートに活用するだけでも、家族の構造と機能について、説得力のある意見を述べることが可能です。


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