社会福祉士レポート実例(心理学-設題2)

手をかじる幼児

社会福祉士のレポート作成にお悩みの方へ

実際のレポート作成例をここに提示します。
 心理学は、社会福祉士の国家試験でも、実務においても、その知識が求められる科目です。今回は、その「設題2」になります。心理学を履修しておくことにより、国家試験対策にもなるので、ぜひとも登録・履修することをお勧めします。

設題2

「発達の概念や理論及び発達における諸問題について述べなさい。」

1.発達の量的・質的側面
 我々は、子供の背丈が伸びていくことを、普通は「発達した」とはいわずに「成長した」という。一方、子供が2歳から3歳頃になり、多様な言葉を話すようになる状況を「言葉が発達した」という。この「発達」と「成長」の違いは、次の点にあると考えられる。
 まず、成長とは、エネルギーの摂取と消費によってもたらされる生物学的な発達のことを指す。つまり、食物が生物に与える量的な側面である。
 次に発達とは、個体が環境の影響を受け、環境と個人とが相互に関わり合いながら変化していく過程である。例えば、アメリカに育った子供は英語が話せるようになり、日本に育った子供は日本語を話せるようになることが該当する。発達における変化の過程をみると、経験し、観たものを言葉に置き換えて記憶したり、あるいは言葉で聴いたことを経験に照らし合わせて想像したり、先々起こりうることを予測したりできるようになる。すなわち発達とは、単なる量的な変化だけではなく、質的な変化を含み、様々な機能や構造が分化したり、統合したりしながら、機能上、より有能に、また構造上、より複雑になっていく過程である。
 ここでは、認知的能力の発達について、知能検査の類いで捉えられていたような量的な能力の増大ではなく、質的な変化を捉えようとしたピアジェの発達段階説を例示し、その抱える、発達における諸問題について考察する。

2.ピアジェの発達理論
 ピアジェは、大人と子供では認知構造に質的な違いがあると考えた。そして発達における認知構造の変化は、個体と環境との相互作用によって起こるものであるとし、生得説・経験説・加算的寄与説・相互作用説の4つの学説のなかで、ピアジェの学説は、相互作用説の立場をとっていた。
 まず、相互作用説を表現するために、ピアジェ独自の用語を説明する。それは、シェマ・同化・調節の3つである。
 シェマとは、個体が外界と相互作用するときに、個体が用いることのできる活動のパターンのことである。例えば、乳児が目で見たものを掴んだり、噛んだりするといった、いつでも引き出せる動作のパターンのことである。しかし後には、総べての動作を実際行うのではなく、頭の中でもできるようになる。この状態を「シェマが内面化された」という。また、イメージや概念といったものも、内面化されたシェマと考え、ピアジェはこれらのものをシェマという共通の用語でまとめている。そして、このシェマの同化と調節により、外界と相互作用しながら認知構造は変化するとした。
 同化とは、外界のものを自分のシェマにより取り入れることをいう。生物学における同化とは、生物が外界のものを自らの体内に取り入れる機能のことを指すが、認知機能における同化もこの概念を適用する。
 調節とは、外界のものに応じて自分のシェマを変化させることをいう。これも同様に生物学における「調節(生物が外界に合わせて自分を変化させる機能)」と同じ概念を適用する。
 この相互作用説において、乳児の動作のシェマを考えていただきたい。例えば、乳児は自分の手で物を掴むことで初めてそのものを知ることができる。これが同化である。しかし、物を掴むといっても、物の形状に合わせて手の形や、手を握る強さなどの掴み方を変化させなければならない。これが調節である。つまり、自らのシェマを外界に対応できるように変化させることで、外界との同化がより進行するのである。認知的発達は、同化と調節の均衡に向かって、活動を繰り返すことによってなされるとピアジェは考えている。
 このように、認知構造の変化は、実際の動作のシェマから内面化されたシェマに移行し、段階的に進行していく。この構造の変化をピアジェは4つの発達段階に分けている。

3.ピアジェの発達段階
①感覚運動的段階(生後の2年間)
 この時期の乳児は、まだ象徴機能を獲得していない。象徴機能とは、久原恵子によると「所記(あらわされるもの)とは異なった能記(あらわすもの)によって、所記を表象するはたらきである⑴」と定義されている。そしてこの時期は、内的な思考はできない。動作のシェマを使って感覚運動的に環境を認知していき、この感覚運動的知能をすべての知能の基礎としている。
②前操作の段階(2~7歳)
 この段階になり、象徴機能が出現する。言語・延滞模倣・象徴遊びなどが可能となる。また、物の見かけに惑わされたり、自分の立場からしか物事を理解できないなどの特徴がある。
③具体的操作の段階(7~11歳)
 可逆性をもった操作が可能になり、知覚に惑わされず論理的な思考が可能になる。この論理的思考操作の体系を群性体という。ただしこの操作は具体的な対象においてのみ可能であり、現実と、かけ離れて命題の形式的な思考をすることは不可能という限界がある。
④形式的操作の段階(11歳~)
 この段階では、仮設演繹的思考、抽象的思考が可能となる。現実と矛盾するような命題でも、仮設として可能性を受け入れることで、論理的操作が可能となる。そして、この段階において象徴的構造が完成されるとしている。

4.発達における諸問題
 発達の段階を段階的に区分することは、当然のことのように思われるが、一方では問題も提起されている。
 まず、精神発達は、連続か不連続かという問題である。もともと生物である個体は、成長においては連続的であるし、質的な発達においても個によって差があるのは当然である。また、ある段階から次の段階に突然に変化する訳でもない。これらの問題点は、後にピアジェ自身も認めているところだが、発達の仕方は、個人差が大きいという点に問題がある。
 例えば、分数や小数の計算などの数学がある。数学は、事物の具体的内容から離れていたとしても論理的操作の思考である「形式的操作」ができるかどうかを試すテストの一例となる。ピアジェは、このような形式的操作の思考が11~15歳頃までに完成するとしたが、その後の追試研究の結果では、具体的操作の獲得については個人差が少ないものの、「形式的操作の獲得については、大変個人差が大きい⑵」とされている。
 したがって発達段階は一般的か特殊的かということを考察した時、結局は、常識的概念の粋を出ないのではないだろうか。形式的操作の段階に個人差が大きいということは、それだけ人間は多面的だということである。一人の人間をどんなに詳細に調査したとしても、人格性の発達段階という一般的概念については定義の難しいところである。

【参考文献】

  • ⑴波多野完治「ピアジェの発達心理学」国土社 1979年 56頁
  • ⑵子安増生「生涯発達心理学のすすめ」有斐閣 1996年 126頁
  • 福祉士養成講座編集委員会「社会福祉士養成講座 (10) 心理学」中央法規出版 2001年

社会福祉士からのコメント

参考にした文献はかなり古めの本ですが、心理学は、他の社会福祉系の科目のように、法改正や制度改正のようなことがほとんどなく、海外の学者が、大昔に提唱した学説や理論が今も息づいている学問です。


また、心理学系の教員は、こうした古い文献から引用するレポートを高く評価する傾向があります。


可能であれば、参考文献として推奨されている専門書を中古で購入してもいいですし、図書館の心理学コーナーには、絶版になった心理学の本がひっそりと置いてあることがありますので、そういう本を参考文献にするのも有益です。


なお、今回のレポートでは、ピアジェの理論を取り上げましたが、参考にした文献は、日本の学者がピアジェの学説を解説したものです。


要は孫引きになっています。


厳密にいうと、論文を書く場合は、原典にさかのぼって引用することが求められますが、社会福祉士を養成する大学や養成校で、そこまで厳格なルールを適用する学校は皆無でしょう。


原典は、もちろん英語です。


臨床心理士を要請する大学院では、こうした原点による引用は必要かもしれません。


でも、あなたは心理学の修士の学位を取ろうというわけではありませんよね。


もっとも原点を和訳した専門書が存在するケースもありますので、そうした本を手にする機会があれば、多いにレポートに活用していくことをお勧めします。


ちなみに、私は、社会心理学のレポートを書いていたとき、近所の公立図書館で、フェスティンガーの認知的不協和の理論—社会心理学序説が置いてあるのを見つけて、びっくりした覚えがあります。


この本は、認知的不協和の理論を提唱した、フェスティンガー本人が書いた原書を和訳したもので、絶版本です。


社会心理学の名著で、中古では、今も非常に高値で取引されています。


実は当時、図書館の人に、この本を「無くしたので弁償します」といって自らの手中に収めようとしたことがありましたが、そんな嘘をつくのも気が引けたので、あきらめて、何度も図書館で借りて我慢した思い出があります。


それだけこの本が欲しかったんです。


ただの学生であった私でさえ、心理学に興味が沸くと、こうした専門書にはワクワクするものを感じるのが伝わったでしょうか?


心理学を専門にする教員が、良書といわれる過去の専門書を学生が参考にしてレポートを書いた場合、つい高く評価してしまう理由がここにあります。


このことは覚えておいて損はありません。


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