社会福祉士レポート実例(医学一般-設題1)

医学一般

社会福祉士のレポート作成にお悩みの方へ

実際のレポート作成例をここに提示します。


医学一般は、社会福祉士を目指す学生ならば誰もが履修する科目です。


国家試験での科目名は「人体の構造と機能及び疾病」となっていますが、大学で履修する際の科目名は必ずしもこの名称ではありません。


いずれにしても、社会福祉士として必要な医学の知識を最低限度学ばせようというのが、この科目の主旨です。


設題に関しては、高度な医療の知識を問うものではなく、基礎的な内容になっています。

学習のポイント(学習ガイドより)

 現代社会における生活様式の変化、人口構成の変化、医療の進歩などとこの疾患との関係について理解した上で、社会福祉の立場から、今後のこの問題と対策についても考察すること。

科目概要(学習ガイドより)

 超高齢社会を迎えようとしている今日では、社会福祉の現場でも医療の範囲を超越した分野に対するニーズの増大が予見される。その際に福祉専門職者として要求される最低限の医療、医学の知識の修得を目的とする。具体的には、現代社会の代表的な疾患である生活習慣病や慢性疾患、臨床医学の各分野の概要、健康づくり対策、感染症対策等の保健医療などを学習する。単なる科学としての医学にとどまらず、総合社会科学としての医学の側面についても触れ、人間の生活の質を豊かにし、患者や家族の生活を支えられるよう、チーム医療のあり方についても学ぶ。

設題1

「生活習慣病について述べなさい。」

 近年健康ブームと言われており、メディアには健康に関する情報が氾濫しているが、中には疑わしい健康法も紹介されているのが現状である。とかく人々は手っ取り早く、安易に健康を求めようとするが、究極の健康法は生活習慣の改善にあるのではないだろうか。そこで本設題では、糖尿病を取り上げて、社会福祉の立場から現代社会における生活習慣病について考察する。

1.人口構成と生活様式
 我が国は、長寿社会になっている。「長年日本の人口構成グラフは、ピラミッド型であり、年齢が高くなるにつれ、その年齢層が人口全体に占める比率は少なくなっていた。しかし近年はこのグラフは中間が膨れたつぼ型に変化している。つまり少子高齢化という社会的方向性が明確になっている。※1」その理由は日本の歴史的経緯と関わりが深い。
 我が国は歴史的にみて、欧米の生活様式と食文化に影響を受けてきた。戦後の経済復興を果たす過程で食生活は欧米化し、外国からの輸入製品が家庭の中に浸透した結果、食生活は豊かになったが、脂肪やタンパク質の摂取量が過剰になるという問題があった。一方、生活様式においては、交通機関の発達、さらには自動車の普及により、人々の歩く量が減り、運動不足に陥った。これらは、人類が欲望を満たし、不便を克服することにより発展してきた結果だが「おいしいもの」「便利なもの」が蔓延する生活様式を続ければ当然弊害も出てくる。それが生活習慣病につながることになる。

2.生活習慣病
 厚生労働省が発表した、平成14年度糖尿病実態調査によると「我が国で糖尿病が強く疑われる人の数は、約740万人と推定されている。さらに糖尿病予備軍を含めると、1620万人にもなり、糖尿病患者は年々増加している。※2」生活習慣病が、長年の食を中心とした生活習慣と深い関係があることは、すでに知られているが、ここでは「糖尿病」を例に挙げ、その特徴を述べる。
 糖尿病は大きく2つに分類できる。
⑴Ⅰ型糖尿病
 インスリンは膵臓のランゲルハンス島のβ細胞で作られるが、何らか原因でβ細胞が破壊され、インスリンをほとんど作れなくなり、インスリンが足りなくなるものである。口渇、多尿、激痩せといった症状が出現する。遺伝性については、ほとんど認められない。食事・運動療法だけでは治らず、毎日インスリンを補給する必要がある。
⑵Ⅱ型糖尿病
 インスリンは作られるが、その働きが悪いタイプのものである。遺伝との関わりが強く、遺伝的要因を持つ人が、肥満、過剰なストレス、運動不足などにより発病する。自覚症状は少なく、症状は緩慢な経過をたどるのが普通である。インスリンの出方が遅いのが特徴であるが、まったく出ない訳ではないので、生活習慣を改善し、インスリンの働きを戻すという治療が必要となる。欧米人には、Ⅱ型だけでなく、Ⅰ型も多いが、日本人ではⅡ型が圧倒的に多く、特に中高年の多くは、Ⅱ型の糖尿病といわれている。

3.症例

 糖尿病になった人の症例としてA氏を示す。その生活習慣に対する考え方に着目していただきたい。

 A氏は、建設業の会社で営業部長をしている50歳の男性で、仕事一筋の人である。酒の付き合いが多く、運動は特にしていない。8年前の健康診断で尿糖が認められ、血液検査もして糖尿病と診断された。親戚に糖尿病の人がいたことも判明している。しかし自覚症状がなかったので、食事療法はしていない。1年前に部長に昇進し、転勤もした。ストレスから生活はさらに不規則になっていった。その後半年間で体重は6㎏減少した。体は常にだるく、口渇、多飲、多尿の症状が出てきた。この症状に対して、A氏は、きちんと治療をしようと思っているものの、頻繁に会社を休んだり、夜のついあいをすべて断ることに対して、A氏は「会社は理解を示さないし、出世に響くだろう」と考えている。

4.糖尿病に対する治療法
 糖尿病は、外科的な治療だけで治すことはできない。「胃を切除するなどの、外科的な糖尿病治療ができる※3」という報告が一部あるが、まだ一般的な治療とはなっていない。基本的には、早期発見と食事・運動・インスリン療法によって、生活習慣を変えるしか治療法のない病気である。
 しかし、よりよい血糖コントロールを目指して、さらに進んだインスリン療法は開発されつつある。具体的には人工膵臓がある。これは、常に血糖を測定し自動的にインスリンを静脈注射する装置で、携帯型の人工膵臓の研究開発も進んでいる。将来的には膵島(膵臓内に散在する内分泌腺組織で、ランゲルハンス島ともいう
)を移植する可能性もある。

5.結論
 社会福祉という用語には「国民の生存権を保障するため、貧困者や保護を必要とする児童・母子家庭・高齢者・身体障害者など社会的障害を持つ人々に対する援護・育成・更生を図ろうとする公私の社会的努力を組織的に行うこと。
」という意味がある。
 しかしながら社会福祉は、現に保護を必要とする人だけを対象とすべきではないと考える。何故ならば、岡村重夫のいう、福祉ニーズの構造が以下の項目からなっているためである。それは、「⑴経済的安定、⑵職業の機会、⑶心身の健康維持、⑷教育の機会、⑸家族(関係)の安定、⑹社会的協同、⑺文化・娯楽への参加の機会
」である。これらのニーズを満たす上で必要なことは、社会福祉が予防的措置を講ずることであり、したがって、それは現に保護を必要とする人だけが福祉ニーズの対象ではないということである。
 先のA氏を、放置すれば、されらに糖尿病が進行し、合併症を引き起こすことが推測される。A氏の福祉ニーズはまさに岡村重夫のいうところの「⑶心身の健康維持」である。もちろん労働基準法を始めとする法律により、労働者は保護されているものの、実態がともなっていないことはよくある。労働者の健康管理を軽視している雇用者側に対する罰則は別問題であるとしても、生活習慣病という疾病になることが目に見えている人の福祉ニーズに応えることは社会福祉にとって重要なことである。しかしながらその具体策はあまりないというのが現状である。

参考文献
⑴⑵財団法人新村出記念財団『広辞苑 電子ブック版』岩波書店 1999年
⑶福祉士養成講座編集委員会「社会福祉原論」中央法規出版 2001年 144~145頁参照

参照ホームページ
※1
厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/81-1a2.pdf
検索日2016年7月1日

※2
厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/toukei/kouhyo/data-kou4/data14/to03.pdf
検索日2016年7月1日

参照番組
※3
nhk(日本放送協会)クローズアップ現代
http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3272/1.html(掲載ウェブサイト)
検索日2016年7月1日



■■福祉系大学で医学のレポートを書くコツはこれ■■

上記のレポートは、過去に執筆したものを一部要約・編集しています。


糖尿病に対する治療法は日々変化しているので、ネット上から情報を探して引用をプラスしています。


クローズアップ現代というテレビ番組から糖尿病の治療法についての引用も行っています。


以前、レポートの引用元は書籍だけでなく、テレビ番組もあるというお話しをしましたが、ここでもその方法を用いたという訳です。


さて今回のレポート設題は、生活習慣病について述べるよう指示されているので、取り上げるテーマは糖尿病だけに限らなくても可能です


例えば、次のテーマでレポートを書くこともできます。

  • 脳卒中
  • 心臓病
  • 脂質異常症
  • 高血圧
  • 肥満

上記項目の中で、あなたに得意なジャンルがあれば、それをテーマにして生活習慣病について論じることができます。


その際、ある項目を選択したら、その理由を冒頭の目標規定文のところで触れるようにします。

この目標規定文ですが、設題や、大学から示された学習のポイントと重複してしまうと考える学生がいますが、重複しても構いません。


大事なことは、設題や学習ポイントを踏まえていることを伝えることです。つまり「設題からブレていないよ」ということを、教員に指し示すために書く文章だと思ってください。

レポートの文章を隅から隅までよく読めば、レポートの設題からぶれていないことが言えてたとしても、教員がそれに気づかなければ意味がありません。

なので、目標規定文によって、あなたのレポートがぶれていないことをアピールすることは結構重要です。

今回のレポートで、まず踏まえるべきポイントは


社会福祉系大学における医学一般という科目である


ということです。

学習のポイントに示されているように「社会福祉の立場から論ぜよ」ということが学習のポイントに示されています。


これは、結構やっかいな設題です。


なぜなら、このレポートを添削するのはどんな専門の人なのかが分からないからです。

医学一般というからには、大学で医学関係の学問を専攻した人が添削するのでしょうが、その際、教員が福祉のことをどれほど理解しているのかなということが心配になります

ちなみに私が、医学一般のスクーリングを受講したときの講師は、薬剤師の資格を持った方でした。


その先生は、大学院でも薬学の研究をしていた経歴の持ち主でした。


分かりやすい講義をしてくれる先生でしたが、福祉のことについては、知識・経験のある人ではありませんでした。


当然ですよね。


大学(university)では、よくあることです。


福祉系大学だからと言って、皆が福祉に詳しい訳ないのです。


いろいろな専門を持った教員が集まっているのが大学というところだからです。

ここであなたは、仮にこの薬剤師の先生がレポートを添削してくれるとして、

果たして薬剤師の先生に、福祉の立場から論じて理解してもらえるのだろうか?

という疑問をもつかもしれません。

でも、心配ご無用です。

よほど意味不明なことを言わない限りは、教員としても、その部分(福祉の立場から論じているか)について重箱の隅をつつくようなことは言わないのが普通です。

大学の教員は、所属する大学の学部構成や専門外の諸事情をあまり知りません。知ろうとしていない人もいます。


授業をコマ単位で受け持っているだけの非常勤講師であったり、他大学と掛け持ちで教壇に立っている場合はなおさらです。

自らの専門については深い専門知識を持っていますが、福祉のことはよくわからないというのが実状です。

教員の立場になると、自ら造詣が深くない領域に関し、学生が書いたものに対してダメ出しするのはなかなかできないものです。

教員自身が詳しい記述のところにフォーカスして評価するのが、私の経験上起こり得る事象です。


今回のレポートの場合、私は、岡村重夫の論を半ば強引に引用して福祉の立場から述べることで設題の条件を満たしました。

このような書き方をするのは、字数制限と提出期限というしばりがあったからです。

そして設題要件を満たしていることを分かりやすく伝える意図もありました。

本来、1つのレポートに十分な時間をかけられるのであれば、じっくりと知識を吸収してから書くことができるので、それが理想です


頭の中で情報が整理された状態で書き進めることができれば、自然と福祉の立場からレポートすることもできるでしょう。

でも、本数をこなさなければならない学生としては、やはり設題要件を満たすこと、字数制限を守ること、提出期限を守ることが、時間短縮の意味での優先事項となります。

ある程度仕上がってきたレポートを一から書き直す作業は、実際にはできないことが多々あります。

また、そもそも当レポートの場合、多くのことを学生に求めすぎています。

生活習慣病のことを説明し、さらには福祉の立場から問題を考察するというのは、条件を課し過ぎです。

実際、このレポートの試作ができた段階で、私は字数を削減する必要に迫られました。

なので最後の結論になってようやく福祉の理論を持ち出すという唐突な書き方になってしまったのでした。

でも始めから書き直のは、もはや無理

で、こうなった訳です。

他人の書いたレポートを読むと、その穴がよく見えるといいます

数多くのレポートを添削している教員からすれば、私のレポートは、さぞ「おかしなことを書くな」と思ったことでしょう。

でも、細部にこだわり過ぎてしまうと執筆が進まないと言うことは、私の経験上、得られた大原則です。

レポートは、ある程度文章が完成したら提出するのがよいでしょう。

ワンポイントアドバイス

レポートワンポイントアドバイス

  • 結論は完璧でなくてもよい
  • 結論に対する反論はいくらでもできるが、同時に完全な答を書こうとしても無理と知るべし
  • 平凡な答や結論になることを怖れない
  • あなたが強く思ったことはあなたの答だ
  • 結論に至った思考課程を明示する。ただし思考過程のパクリは不可。自分なりの考えを伝える方が高評価となる。

上記の点に注意しながらレポートを書き進めてみてください。

はたして今回私が書いたレポートは、どう評価されたのでしょうか?

高評価のレポート

なんと、ありがたいことにA評価でした。


コメントも、まずまずです。


努力評価の高得点といったところだと思います。

ただし、レポート用紙には、添削跡がありませんでした。

添削の文がない

ちゃんと読んでいただいているのかな?


もしくは、直すところがない?


いずれにせよ、この程度のレポートでも高評価を得られるので、あなたも、自信をもってレポートを書いてみてください。



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