社会福祉士レポートアーカイブ(児童福祉論-設題1)

児童福祉

過去レポート保存庫

児童福祉論は、従前の社会福祉士養成カリキュラム改定に伴って廃止された科目です。
現在は「児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度」という長い科目名になっています。

設題1

「児童福祉法の成立と内容を中心に我が国の児童福祉の発展についてまとめ、今後の児童福祉のあり方について述べなさい。」

 我が国における戦前の児童福祉は、民間による主体的活動に依存していたが、児童福祉法制定を境に、制度を中心とした児童福祉として再出発を遂げることになる。まず、その児童福祉法の成立について述べる。

1.児童福祉法の成立
 児童福祉法が制定されたのは、1947年のことである。その第1条には「すべて児童は、ひとしくその生活を保障され」とあるように、それまでの、要保護児童のみの対応から、全児童に対する、健全な成長発達を保障するという考えに大きく変化した。それまでの「恤救規則」を始めとする児童対策とはまったく異なる理念を打ち出した点で画期的な法制度であった。
 しかし、高尚な理念と裏腹に、当時の児童福祉は、荒廃した戦後の後処理に追われていたのが実状であった。
 例えば、当時における児童福祉の課題は、戦災孤児・浮浪児たちの命を保護し、いかに衣食住を与えるかといったことが中心であった。また、劣悪な環境にさらされることで多くの児童の命が犠牲を強いられたり、貧困を主な原因とする堕胎も多数行われていた。
 理念と実状の矛盾を抱えながらも、要保護児童に対する施設処遇を展開していく中で、施設が児童に与える悪影響を論じたホスピタリズムが唱えられるようになると、児童福祉は、要保護児童の生命確保という段階から、児童の、より健全な成長発達という新たな局面に、その力点を移行するようになる。こうして、児童福祉法の理念に沿った方向で、児童福祉の基盤が整備され始めたのである。
 その後、児童福祉法は、50回近くの改正をくり返し、現在に至っている。以下に、現在の児童福祉法の内容と、改正点について述べる。

2.児童福祉法の内容
 児童福祉法第1条には「すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるように努めなければならない」とあり、第1条の②には「すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない」という記述がある。これらは「児童福祉の理念」である。
 また、第2条では「国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う」と示されている。これは「児童育成の責任」である。
 児童福祉法における、これら以外の条文は、全て「児童福祉の理念」の実現と「児童育成の責任」を果たすために存在するといってもよい程の内容となっている。
 例えば、第1条は全国民に対しての義務を規定したものであるが、これには第25条(要保護児童発見者の通告義務)が対応している。すなわち、保護者のない児童や、保護者に監護させることが不適当な児童を発見した者に対して、福祉事務所、もしくは児童相談所などに対する通告義務を課した条文である。これは全ての国民に課された義務であると解釈できる。
 次は、第1条の②について述べる。これに対しては、第4条により、児童を満18歳未満であると定義することで、児童福祉の対象を全ての児童とし、且つ、第21条の10に示される、居宅生活支援費の支給を始めとする各種の給付制度によって、児童の生活の保障を図っていることなどがそれぞれ対応している。
 最後に、第2条の「児童育成の責任」について述べる。これは児童育成に関しての、国や地方公共団体の、公的な関与を示唆するものである。例えば、第6条の2にある、各種支援事業に関する記述や、第15条にある、児童相談所の設置や業務に関する記述、さらには、第33条の6にある、児童相談所長に対する「親権喪失宣言の請求」の権利といった条文がそれぞれ対応しており、これによって児童福祉法第2条の「児童育成の責任」を果たそうとするものである。

3.児童福祉法の改正
 児童福祉法は、1997年以降、大幅に改正されている。主な改正内容は次の通りである。それは、⑴保育制度が措置制度から利用選択制度になったこと、⑵児童自立支援施策の充実が図られたこと(単なる保護・養護の実施のみならず、施設退所後の支援を通した児童の自立支援への対応)、⑶母子家庭の自立を支援する仕組みである「母子家庭支援施策」が見直されたこと、などである。
 総じて、我が国の児童福祉は、保護型から、自立・参加型の福祉へと方向を転換したといえる。つまりウェルフェアからウェルビーイングへの転換である。改正後の児童福祉法は、児童福祉の対象を、児童と、児童を取り巻く家庭にまで範囲を拡大している点や、措置制度から契約・利用制度への転換という点に、その特徴を見ることができる。ただし、児童養護施設・乳児院などにおいては、契約・利用制度がなじまないとして、措置制度が残されている。

4.児童福祉の問題点
 時代の変遷に合わせて、改正を繰り返してきた児童福祉法は、児童福祉に大きく貢献した優れた制度である。しかし、近年の児童が置かれている社会情勢は、児童福祉法が制定された当時からは想像も付かない程、急激な家庭環境の変化を来しており、新たな問題を抱えるようになっている。
 具体例として、現在の児童福祉問題を取り上げるならば、児童虐待・殺人・親子間の絆の崩壊といった点を挙げることがでぎる。
 近年、児童虐待は急増しており、児童相談所における対応の不備や、虐待を受けた児童の心の傷(トラウマ)による虐待の連鎖などが指摘されている。また、神戸の連続児童殺傷事件に代表されるような、児童による殺人の問題も、残酷な児童虐待に他ならない。こうした問題は、親子間の絆の崩壊が一要因として考えられ、今後の更なる社会の複雑化につれて、児童虐待の形態も多様化していくことが予測される。今まさに、児童問題に対する、児童福祉のさらなる展開が求められている。

5.今後の児童福祉のあり方
 核家族化の急激な進行、少子化、子育てにおける親の地域社会からの孤立・母子密着など、よく考えてみれば、児童虐待が社会問題と化すことは、以前から予測できることだったのかもしれない。あるいは、昔から虐待は存在していたが、それに気づかなかっただけなのかもしれない。これらは反省すべき点である。
 これらのことを踏まえ、今後の児童福祉のあり方を述べる。それは、児童福祉は児童だけを対象とするのではなく、児童を取り巻く環境を総合的に捉え、より予防的視点を持った施策に改革していくことである。それから、児童が健やかに成長するための責任について、国や地方自治体の責任の比重を、より拡大していくことである。
 従来の児童福祉は、親に対して過剰に子育ての責任を課した上で、親に虐待などの問題行動が発見されれば、事後処理的にサービスが展開されている傾向があった。1997年の児童福祉法改正以来、状況は、改善されつつあるが、現実は、まだ伴ってきていないというのが実状である。これは児童福祉法第2条に反することでもあり、早急に改善していかなければならない。

【参考文献】

  • 児童虐待防止制度研究会『子どもの虐待防止』朱鷺書房 1994年
  • 社会福祉辞典編集委員会『社会福祉辞典』大月書店 2002年
  • 福祉士養成講座編集委員会『児童福祉論 第2版』中央法規 2003年
  • ミネルヴァ書房編集部『社会福祉小六法』ミネルヴァ書房 2002年



■■社会福祉士レポート課題について思うこと■■

本レポート設題に回答するためには、まず児童福祉法について調べたうえで


じゃあ児童福祉は今後どうあるべきなのか?


という学生の意見を述べる流れになります。

ここで

自らの意見を言うときのコツを一つお伝えしましょう


それは


私はこれが嫌いなんだから、こうすべきである


という

独りよがりと受けとられかねない書き方を避けるということです


そのためには


社会での出来事を取り上げたうえで


こういう出来事かあるから、こうしたらいいのではないでしょうか?


という提案をする書き方にすることです。

例えば、児童福祉の分野でいえば、児童虐待は大きなテーマですよね。


では、レポートの中で「児童虐待は、なくしていくべき」という意見を述べようとする場合はどうすればいいのか


そのとき


虐待は犯罪だから徹底的に取り締まるべき


とだけいっても、結論だけで理由が何かということについてが分かりにくくなってしまうので避けます。


そこで


理由を述べるために社会の出来事を引っ張り出します


これがコツです。


その際のキーワードはこれです。

  • 戦前と戦後
  • 日本経済
  • 人口要因
  • 情報テクノロジーの発達
  • 価値観の多様化
  • グローバル化

より具体的に述べると

  • GHQの影響
  • バブル経済と崩壊
  • 少子化と高齢化
  • インターネットと携帯電話の普及
  • オタク文化
  • 賃金の低下と価格競争

といったことです。


他にもきっと思いつくと思います。


ここで挙げたキーワードと、児童虐待が起きる理由に、何か関連性はないか思考します。


例えば、児童虐待が増えたこんな理由はどうでしょうか?

  • 児童虐待が増えたのは、バブル崩壊後の経済悪化によって、リストラが増え、生活が苦しくなったことによるストレスの結果である
  • ネットによる情報化社会が到来し、これまで表面化されなかった児童虐待が明らかになったから

このように、社会の出来事を理由にして、自分の意見を述べていくと客観性が増し、レポートの文章らしさがでます。


これは、レポートの中で、法律や制度の解説をしようとする場合の、書き方のパターンになります。

社会の出来事について関心を持つと、レポートのネタに困ることが減ります


テレビのニュースだってレポートのネタになります。


児童虐待のニュースが良く報道されていますよね。


そうした情報に触れたときに、頭の片隅に情報をインプットしておくと、いざレポートを書く段になって、アイデアが沸くことがあります。

レポート作成とは、直接関係ないかもしれませんが、時間のあるときに社会の出来事について思いをはせる時間をつくるといいレポートが書けると思いますよ。

何も小難しい本を読破しようということではありません。


今は、情報が大量に転がっている時代です。


なので、自分のアンテナをちょっとチューニングするだけで必要な情報は手にすることができるでしょう。


ちなみに、未来において、社会で起こるであろう出来事を予測して、自分の意見の理由とする方法もあります。


私だったら、今後の日本の未来には、次のようなことが待っていると予測します。


最近の情報に触れてみて感じたことです。

  • 人口減少のさらなる深刻化
  • ロボット化
  • 働き方の変化

これがキーワードです。


レポート設題で、自分の意見を求められたときに、こうしたキーワードを頭の隅に置いて考えてみると、いい意見が書けるかもしれません。


ぜひ参考にしてみてください。


コメントは受け付けていません。

サブコンテンツ

このページの先頭へ