社会福祉士レポートアーカイブ(社会福祉国際比較論-設題1)

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諸外国の福祉と日本の福祉の制度の違いから国際的な視野を持てるように勉強する科目です。


国際的視野を持つことの意味は、比較することで新な価値観を創造するところにあります。


大学のレポート程度で、そのような能力が身につくとは考えにくいですが、ゴッコというか、練習の場が大学なので、気にせず高い目線で文を書いてゆきましょう。

学習のポイント(学習ガイドより)

べヴァリジの社会保障構想について考察すること。そして、サッチャー政権以降の社会保障政策についても考えること。

科目概要(学習ガイドより)

 現在は国際社会と言われている。グローバルな視野を持てるよう、まず国際事情に関する必要な知識を学んでいく。その上で先進国及び発展途上国における社会福祉・社会保障を文献等を通して学んでいく。さらに、各国の社会福祉制度を福祉国家という視野でとらえ比較する。アメリカ合衆国と日本の比較というように、欧米諸国とアジア諸国の福祉制度等を取り上げて比較し、その違いを考察する。

設題1

「イギリスの社会保障について、我が国と比較して述べなさい。」

 社会保障は、その国の様々な事情が絡まりながら成立・発展してく性質をもっている。それは福祉国家といわれるイギリスにおいても同様である。以下、設題に沿って、現在に至るまでのイギリスの社会保障成立の過程の概略を述べた上で、日本の社会保障との比較や問題点などについて考察していくことにする。

1.べヴァリジの社会保障構想
 イギリスの社会保障は、第二次世界大戦という社会情勢の最中、1941年のべヴァリジ報告によって、その方向性が定められた。べヴァリジ報告とは、当時のイギリスの経済学者であったべヴァリジが、チャーチル内閣のもとに設けられた「社会保険および関連諸サービス」を検討する省庁連絡委員会の委員長に任ぜられて、べヴァリジの単独署名によってまとめた報告のことである。
 当時、べヴァリジ報告が目指した社会保障の姿は、貧困の除去と最低生活の保障であった。第一次世界大戦の経験から、戦後の経済の混乱や、生活不安、失業の大量発生は、イギリス国民が最も心配する問題であった。そのためイギリス政府としては、戦後の社会保障計画を国民に示す必要性からも、この報告を出したのである。
 べヴァリジ報告の特徴は、ミーンズテストを受けることなく、社会保険によってナショナルミニマムを国民に保障することにあった。公的扶助にあたる国民扶助と、ナショナルミニマムの領域を超える部分の保障については補足的に行い、均一拠出、均一給付により、普遍主義・平等主義の原則をもって、最低生活を保障しようとするものであった。
 べヴァリジ報告によって方向づけられた社会保障政策は、べヴァリジの社会保障構想の実現を旗印に掲げ、社会主義的思想を背景に持つ「労働党」と、社会保障を充実させるために経済の回復を優先する立場を保持する実用主義的な「保守党」の二大政党によって、年金・医療などの社会保障改革が繰り返し行われてきた。
 労働党における改革の特徴は、次の2点においてべヴァリジ構想の方向性を修正せざるを得なくなっている点にある。
 第一は、均一拠出・均一給付による平等原則から離れて、公正な格差を含む社会的平等を目指す方向への修正である。つまり、保障のフラット制から所得比例制への転換である。これには、財政難によって平等原則の実施と多様化・高級化したニーズへの対応が困難となったことが関係しているといえる。
 第二は、保健相べヴァンによる公的資金に基づく普遍的な医療サービスの無料化である(NHSの創設)。これにより、イギリス国民は、原則無料で医療サービスを享受できるようになった。また、病院の多くは国有化された。つまり、医療サービスを保険原理から切り離したこと、病院を国有化したことが、べヴァリジ構想の第二の修正である。
 しかし、NHSが開始されると、間もなく医療費は膨大な額となり、支出削減、財源確保の政策がとられるようになる。薬剤などの患者の一部負担が導入されるなどの妥協策がとられた。また、病院の老朽化、地理的偏在、さらには国有化に伴う非効率的医療サービスの問題が噴出し、国が医療サービスを配分する医療のあり方が反省されるようになり、コミュニティケアの考え方が重視され始める。こうしてべヴァリジ構想は、妥協と修正を繰り返しながらも、常に経済の不振に見舞われ、結果的には実現されなかったのである。
 一方、保守党については、従来から実用主義的政策を打ち出してきたが、とりわけサッチャー政権以降の改革が特徴として挙げられよう。新自由主義を掲げ、それまでのケインズ政策を排して、公共部門を縮小し、小さな政府を目指した彼女は、民間経済の活性化に力を注いだ。公有企業の民営化や、1990年国民保健サービスおよびコミュニティケア法でNHSの中に市場原理を導入するなど、次々と改革を断行し、英国病の治療に寄与したのである。
 現在では、労働党に政権が移り、ブレア首相はサッチャー政権以来の自立自助路線を継承しながら、社会的公正の観点でこれを調整する「第三の道」を標榜した改革を進めており、今後の動向が注目されている。

2.日英社会保障の比較と考察
 べヴァレジの社会保障構想と、サッチャー政権以降の社会保障政策について概略を述べてきたが、次は、これを日本の社会保障と比較して考察してみる。
 まずは、イギリスがべヴァリジ報告によって社会保障の改革を方向づけられてきたのに対して、日本は戦後、占領軍の政策的な影響を受けながら、旧生活保護法などの社会福祉の基本的骨格が形成されてきた経緯に注目する必要がある。そもそもイギリスと日本の社会保障は、ナショナルミニマムの考えが出てきた時点から異なっているのである。
 そして、イギリスが国民保険の給付などを自営業者・被用者も含めて、単一の制度で運営してきたのに対して、日本は、企業内の福祉が発達したことから、年金などの制度が不統一で多岐に分立してしまい、制度間における給付の格差の問題や、今になって制度の統一化を困難にしているという問題が特徴として挙げることができる。
 一方、政治形態については、イギリスが労働党と保守党という二大政党によって、より良い政策の実現のために政権交代を争ってきたのに対して、日本は、同じ政党が長く政権の座について政治を展開する傾向が強いため、権力の腐敗に繋がっている側面がある。韓国や台湾などでも二大政党化が進んでいることを考えれば、日本の政治体制もそろそろ変化する必要があるといえよう。こまでは高度経済成長を背景に高福祉を実現してこられたが、近年における国民の年金にたぃする不信感の高まりや、国民年金加入者の約半数が保険料未払いであるという年金の空洞化の問題、2004年度の与党による年金改革案の不備を観ていて特にそう感じる。
 このように考えてみると、日本の社会保障はイギリスより劣っているかに思われるが、医療制度による医療の提供については、その限りではなく、イギリスの医療制度には患者の待機期間の長さという問題がある。
 かつてサッチャー政権は、NHSそのものを廃止したり、あるいは民営化することはできなかった。それはNHSが国民から多大な支持を受けていたからであると考えられる。しかし今ではNHS自体がイギリスの社会保障における一つの足かせになってしまっている感がある。緊急性を要しない患者の待機期間の長さは、日本の場合と比べると、とてつもなく長く、早急に改革が望まれるところである。ちなみに、現在のブレア政権は、患者の最大待機期間を、2005年末までに、外来3ヵ月、入院6ヵ月とすることを改革の目標として設定しているが、今のところ効果の程は出ていないというのが実情である。
 サッチャー政権以降の一連の社会保障改革は、市場原理を導入するという部分において、日本における社会福祉基礎構造改革の流れと類似している。しかしどちらの改革も、その根底には、社会保障にかかる国の負担を軽減させるという目的が強調され過ぎてしまっているように思えてならない。
 イギリスにしても日本にしても、社会保障制度は、保険原理、経済観点からのみ改革を行うのではなく、保障内容・人口構成・疾病構造の変化、経済情勢などを総合的に考慮し、長期的視野をもって改革を実施していくのが望ましいといえよう。


【参考文献】

  • 足立正樹『新版 各国の社会保障』法律文化社 2002年
  • 健康保険組合連合会編『社会保障年鑑2004年版』東洋経済新報社 2004年
  • 厚生労働省編『海外情勢白書 世界の厚生労働2003』TKC出版 2003年
  • 社会福祉辞典編集委員会編『社会福祉辞典』大月書店 2003年



■■レポートの構成と、ちょっとしたコツ■■


当レポートの構成は、


まず、前半の「項目1」において、イギリスの社会保障成立の過程の概略を述べています。


次いで「項目2」は、日本の社会保障との比較や問題点などについての考察と意見という構成にしています。


学習のポイントに出てくる


考察


という言葉は、


「物事を明らかにするためによく考え調べること。」


という意味になるので、本文中では、


まず項目1で、よく調べていることを示しています。


次に、項目2で、よく考えていることを示しています。


日本語というのは、似たような言葉が複数存在します。


例えば「考察」と「論考」とかですね。


こういった類似語は、わかっているようで、正確には、わかっていないことがあるので、


レポートを書く前に、国語辞典で言葉の意味を改めて確認しておくことは、効率的にレポートを書く上で必要なこととなります。


で、


考察していることを分かってもらえるようにするコツを一つお伝えしましょう。


それは、


根拠となる事実や理由を述べたうえで、

  • ~は特にそう感じる
  • ~のように思えてならない
  • ~するのが望ましいといえよう


といった語尾で段落を閉じることです。


そうすると、不思議なことに、


よく考えているようなイメージの文章になります。


当レポートの設題や学習のポイントを読む限り、学生の意見を書くような指示はされていません。


しかし、考えることは要求されているので、その結果、意見的に記述されるのは、ごく自然なことです。


今回は、あえて「結論」という項目を立てず、考察の中に、意見的要素を入れ込んでしまいましたが、こうした書き方もあるという、例として捉えていただければと思います。


社会福祉国際比較評価

社会福祉国際比較添削


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