社会福祉士レポート課題アーカイブ(老人福祉論-設題1)

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ポイント(学習ガイドより)

家族の変容や少子化、高齢社会の進展といった社会構造の変化の中で現代の我が国の高齢者がどのような生活を送りどのようなニーズを持っているのか、ライフサイクルの変化や健康状態の側面、経済的側面など多角的に考察すること。

科目概要(学習ガイドより)

急速な高齢化の進展に伴い21世紀半ばには3人に1人が65歳以上という超高齢社会が到来することが予想される。このような現状をふまえ、現代社会における老人福祉の概念・意義について理解するとともに高齢者の精神的・身体的特徴や障害、老人福祉の社会的背景について考察する。また、老人福祉のニーズ、方法及びサービスの体系について学習し、高齢者に対する福祉サービスの現状について理解する。

設題1

「現代社会におけるライフサイクルの変化についてまとめ、それを踏まえて今後の老人福祉はどうあるべきかについて述べなさい。」


 まず、日本の現代社会におけるライフサイクルの変化を、社会経済構造の変化・家族・高齢者の視点からまとめる。

1.ライフサイクルの変化
①社会経済構造の変化
 かつての高度経済成長は、国民所得を上昇させてきたが、1990年代のバブル経済の崩壊と共に日本は、低成長・低経済の時代に突入した。日本独自の雇用システムである年功序列賃金制度は、労働力年齢構成の低年齢化の上に成り立っていたが、少子化による労働力の高齢化によって、今や崩壊しつつある。デフレのさらなる進行は企業のリストラを促進し、社員が生涯を通して同じ企業で働き、企業が社員の生活を保障するという神話はすでに過去のものとなっている。
 企業は、長い時間と高いコストをかけて社員教育するよりも、即戦力になる人材を求めるようになる。すると人々は、より長期に渡って学校教育を受けざるを得なくなる。当然、女性の高学歴化も促す。こうして男女共に晩婚化の現象が起きることになる。
②家族
 これまで、女性の献身、または犠牲によって成り立ってきた家族の介護機能は、介護保険制度の施行と共に、介護の一部が社会化されるようになった。もはや長男の嫁だからということで、嫁・舅の介護を強制するという慣習は過去のものとなる。今後は男性が介護のために会社を休業・退職することも珍しくない社会になっていく。また、これまで多くの女性が担ってきた家事労働も夫婦で分担したり、あるいは夫が家事を担って妻が労働するという新しい家族形態も、既に登場している。
③高齢者のライフサイクルの変化
 高齢者にとってのライフサイクルの変化については、介護保険制度の導入を挙げることができる。それまでの福祉サービスは、一方的サービスともいえる措置制度によって低額、または無料で提供されてきたが、介護保険制度以降は、自らの選択による有料の福祉サービス利用制度へと転換した。これは高齢者にとって大きなライフサイクルの変化である。

2.現代の我が国の高齢者
 以上のようなライフサイクルを踏まえて、次に我が国の高齢者は、現在どのような生活を送り、どのようなニーズを持っているのかを複数の調査結果に基づいて考察してみる。
 まず、総務庁長官官房高齢社会対策室が、1999年に実施した「高齢者の日常生活に関する意識調査」からデータを引用する。
 この調査では、60歳以上の高齢者を対象に「不安を感じる理由」という質問をしている(複数回答、総数1452人)。この質問に対しての回答は、1位(68%)が「自分や配偶者の健康や病気のこと」に不安を感じるという回答である。2位(52%)は「自分や配偶者が寝たきりや身体が不自由になり介護が必要な状態になること」に不安を感じるという回答であった。
 同じく、60歳以上の高齢者を対象に「社会として重点をおくべき施策は何か?」という質問をした調査結果は次の通りである(複数回答、総数2284人)。1位(49%)は「収入の保障」に重点をおくべきという回答をしている。2位(43%)は「介護サービス体制の整備」に重点をおくべきという回答をしている。
 以上の調査結果は、高齢者側から見たニーズである。しかし、当然反論も予想される。特に「収入の保証」に関しては反論が考えられるだろう。
 例えば「現在70歳以上の高齢者は年金をもらい過ぎである」という意見である。70歳以上の高齢者が、かつて労働していた時代は、高度経済成長期と期間が重なっており、実質GNP成長率の平均が10%にもなったこの時代は、経済成長の恩恵を多く受けた世代である。そのため、資産保有率は高く、年金の給付額も最低生活費を上回る額であるのが一般的であり、高齢者がこれ以上の収入保障を求めるのはおかしいという意見である。
 こうした意見は、現在の年金受給者と、将来年金を受ける若い世代との間に世代間格差が生じていることから出てくると思われる。
 この意見の根拠として「財団法人生命保険文化センター」が1999年に実施した「老後生活のリスク認識に関する調査」を挙げることができる。この調査は首都圏の35~75歳の男女を対象に行われた調査である。調査によると「老後の不安は、引退後の年金給付額の削減である」と回答した人が92%もいたという調査結果が出ている。ここに世代間格差の意識が現れているといえる。

3.老人福祉はどうあるべきか(結論)
 年金の世代間格差という問題は残りつつも、調査結果から導き出された高齢者のニーズは、概ね経済的問題と、自分や家族の介護に関する問題、さらには健康の問題であるという傾向をみて取ることができた。この結果を踏まえて、老人福祉はどうあるべきかを考えるとき「医療」「福祉」「経済」の観点から問題を捉える必要がある。
 高齢者の健康は、高齢者自身と医療制度が支えるものである。介護については介護保健制度のもとに福祉が支えていくものである。そして、それらの財源となるものが「年金制度」である。高齢者の多くは、医療や介護にかかる費用を年金から拠出することになる。したがって、重要な要件は「年金制度」の改革であると考える。
 現代社会は、良い悪いは別として、経済を中心として動いている社会である。そして高齢者にとっての年金は、欠くことのできない生活の糧となっている。この法則が崩れたら社会は安定化を失う。これは決して大袈裟な話ではない。そこで次に、2003年6月26日、NHKニュース番組「おはよう日本」の中で放映されたニュースの一部を要約し、紹介する。

 ある靴メーカーが、企業の共済年金を解散するというニュースである。株価の低迷によって、年金の運営が悪化し、企業の補填部分が増大した。このままでは企業の存続そのものが危ないという判断からの解散であるという。解散によって、ある社員には、一時金として、いくらかの金額(95万円程度)が支払われるものの、退職してからの企業年金の給付はゼロになった。つまり、公的年金のみの給付ということになった。これに対して、靴メーカーの社員は「この事実を聞いた時は、がっかり・・・(沈黙)でした。この事実を揺るがすことはできない」と落胆した様子でインタビューに答えていた。

 このニュースを知ったとき、自分の耳を疑ったが、変化の激しい現代社会のライフサイクルにおいては、こうしたことが実際に起きてしまう。早急に年金制度改革をしなければならない。
 もちろん、年金制度を改善すれば、それで老人福祉問題の全てが解決する訳ではない。しかし、現在の年金受給者を支える若い世代は、はたして豊かな老後を約束されているのだろうか。思うに、現在の消費の冷え込みや、少子化という現象は、年金に対する不信に根源があると思えてならない。だから国民は、貯蓄に走り、若い世代は、晩婚になり、子供を産まなく(産めなく)なるのである。これらの根本的な問題に着手しなけれ老人福祉の問題は解決されないと考える。老人福祉において年金制度改革は重要な要件である。

【参考文献】

  • 小笠原祐次・橋本泰子・浅野仁『高齢者福祉』有斐閣 2002年
  • 生命保険文化センター『ライフサイクルと生活保障に関する研究』生命保険文化センター 平成12年5月
  • 福祉士養成講座編集委員会『老人福祉論 第2版』中央法規 2003年
  • NHK(日本放送協会)ニュース番組『おはよう日本』2003年6月26日放送分



■■社会福祉士レポート通信課題における「テレビ引用法」について■■

今回掲載したレポートは若干、書き手の意見が先行し過ぎてしまいました。

その割に、テキストの読みと、練り込みが足りなかった。

そうしたときに書きがちなレポートの参考例となります。

まず、設題のメインとなる回答項目としては

老人福祉はどうあるべきか

というものでした。

レポートでは、この問いに答える必要がある訳です。

この問いに対する、自分の最初の意見(ファーストインプレッション)は、

  • 年金制度を何とかしないとだめだ
  • 年金は世代間で格差があり問題である

というものでした。

当時の私は、大学に行きながら、訪問介護の仕事をしていました。

高齢者の年金受給額が、そこらのヘルパーの収入よりもよっぽど高いことを知っていたのです。

もちろんすべて高齢者が高額の年金を貰っていたのではありませんが、ヘルパーの月給が15万くらいですから、それ以上年金をもらっている人は余裕でいたことは歴然とした事実です。

中には、そのうえ家賃収入がある高齢者もいました。

今回のレポートでは、こうした個人的経験から、先入観というものに影響され、書き手の意見が前面に出過ぎてしまいました。

でも失敗から学ぶことは多いです

レポートでは、先入観にひそむ落とし穴を探してフォローし、自らの意見を科学的に主張する文体が求められます。

自分の意見が前面に出過ぎてしまうと、熱く語ってはいるものの、偏った意見になりがちです。

そこで、重要なのが資料集めです

というのも、書き手の主張を裏付けたり、フォローする役割をするのが資料や参考文献だからです。

私は、今回のレポートで、テレビのニュース番組からの引用を試みています。

これは、一般的な手法ではなく、私のアイデアです。

長い間、レポートを書き続けていると、引用元に困ることが、一度や二度経験します。

本来ならば、一つのレポートに対して十分な時間を割いて、参考文献にあたって知識を消化していくべきです。

でも、提出期限が迫っているのに、書籍のみからすべての適切な引用先を用意するのは難しいことがあります。

なので、いろいろな引用先・参照先を持っていることは、レポートをさばいていく上で現実的な打開策でもあります。

そうした考えの中で編み出したのが、テレビ引用法です。

テレビ番組

私が勝手に名付けました

レポートでは、ニュース番組からの引用が駄目ということではないんです。

ただし、引用の仕方を間違うと、説得力を欠くレポートになるので、次の点には注意してください。

それは、


テレビのニュース番組からネタを仕入れて、引用するときは、後から第三者(レポート評価者)が引用先を辿れるネタ元にする

ということです。

日々流れてしまような性質のネタ元は引用元としては不向きです。


レポートを添削する教員が、あとから引用元を調べようがないからです。


今回レポートで引用したニュースは、ニュースで流れた情報でしたし、後からネットで検索することもできなかった点が駄目だったということになります。

その他、


ラジオでこんなことを言っていた


これも追跡調査しにくいので不向きです。

しかしながら、参考にした番組が、あとから特定できるなら、そこから情報を引用するのは可能です

例えば、NHKに「クローズアップ現代」という番組があります。

これは、テレビ番組ですが、放送後に番組内容が記事になってウェブサイトに掲載されています。

結構、昔の番組内容も文字起こししてあり、記事としてまとめてあるのでレポートに使える素材になっています。

試しに

クローズアップ現代 共済年金解散

とネット検索してみると

クローズアップ現代のサイト

年金資金が消えていく ~AIJ巨額損失の衝撃~

上記のタイトルで、以前に放送された番組が記事になってサイトに掲載されています。


これなら、レポートの引用元としては十分に、その要件を満たしています。

これなら例えば、


クローズアップ現代 2012年3月15日(木)放送分の中で、○○についてのインタビューで○○が○○という回答をしていた


といった引用が可能となります。

なので、書籍から引用に困ったら、テレビ番組というネタ元もあるということを覚えておいてください。


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